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運命のカミーリア  作者: 柏木紗月
高校生編
32/136

思いがけない初対面



 翌日結局学校帰りにガーベラの花束を買って家に帰ると母さんは泣いて喜び、一緒に写真を撮らされた。夜ご飯はカリフラワーではなく、覚えてたのは俺だけだったのかと少しイラッとしたが覚えてないわけではなかったみたいだ。その夜家族みんなからメッセージが届いた。総じて親孝行してあげて母さんがすごく喜んでたよという内容で、写真見たわとか、なんでもない日のプレゼントなんてかっこいいねーとかそういうメッセージに俺はさらにイライラした。

 しかし母さんの喜びはここだけではなく父さんの方のおじいちゃんおばあちゃんにも母さんの方のおじいちゃんおばあちゃん、伯父の慶太おじさん、お嫁さんの真奈美さんにも伝えたいほどのものだったらしい。

 6人それぞれからもメッセージが届き、父さんの方のアンナおばあちゃんからは興奮して電話までかかってきた。十代でこっちに来て日本に染まってるのに興奮すると今でも結構な頻度で英語で喋ってくる。いつも通り気付いてないようで早口でまくしたててくるから俺も相づちしたり英語で返事をしていた。だいたいはこんな感じ。


『はあい、隼人久しぶりー!!写真見たわよー。琉依にそっくりで琉依かと思っちゃったわー!!大きくなったわねー!!お母さんに花束のプレゼントなんてとっても素敵!!すばらしいわ!!でももう少しおばあちゃんにも優しくしてちょうだい。若菜は毎日連絡してくれるし昴も最近どう?体調崩してない?とか連絡してくれるのに隼人はまったく連絡してくれないわ!!遊びに来てくれるのも大歓迎よ!!一緒に庭の池の鯉に餌をあげたり羽子板をして顔に落書きしましょう!!』


 等々。まあ前半はみんなと同じ話ではいはいと聞き、連絡しないのは変わりなく元気だろうと思ってるからだけどそれならそうだな、退職してずっと家にいるおじいちゃんと喧嘩してないかと聞くと、毎日ラブラブよ、と返ってきてやっぱり変わりないじゃないかと返し、羽子板は正月にやるもので遊びに行ったとしてもそんなことには付き合わないと言うとケラケラと笑って隼人も変わらないみたいで良かったわ。美香がいるから大丈夫だと思うけど人生は明るく楽しく、一度きりの人生だから楽しむのよ、と会うたびに言われるおばあちゃんの口癖を最後に通話が終了した。


 相変わらずあっという間の忙しない会話に疲れていると1人だけノーマルな人がいて少し心が洗われた。なぜ母さんの兄なのにまともなんだと甚だ疑問だが慶太おじさんから『美香の面倒みるのは大変だけど陰ながら応援してるね。ストレスがたまったらいつでも連絡して』とメッセージが来た。おじさんだけでもこの大家族に混じってくれれば俺の負担も減るのにとは小さい時から何度も思っていたけど花屋を継いでいて遠く離れてるここにはなかなか来られない。仕方ない、せめて愚痴でも聞いてもらおうとそのまま久しぶりに電話で話した。



 そして俺が2人と電話で話している間に昴からさっき返したメッセージに返信がきていた。


『母さんが、なんでもない日に贈り物なんてすてきーって珍しく物思いに耽ってる感じで困ってるんだ。隼人くんのせいだから明日部活のあとにお花屋さんに付き合ってね』


 なんで俺のせいなんだ、と思ったけど問答無用なようでおやすみーというメッセージも続けて届き、俺は仕方なく明日は部活が終わったらそのまま合流してサクッと済ませて帰ろうと簡単な予定を立てるのだった。





 



 そして翌日、部活が終わってから待ち合わせ場所の駅前で昴を見つけた。……見つけたは良いが隣にいる若菜を見てため息をつく。



「なんでおま……若菜までいるの?」

「隼人のせいでママが、羨ましいなーあの隼人があんなに綺麗な花束を買ってきてくれるなんてーって言ってくる!!」

「昴も若菜も俺のせいにするんじゃないよ」


 昴と同じようなことを言う若菜にもう一度ため息をつく。


「抜け駆けだよ。僕たちも母さんに喜んでほしいもん。だから隼人くん選んでね」

「自分で選んだ方が良いんじゃないの、こういうのって」

「花言葉詳しくないから」

「時々怖いけどママが大好きだから新しいヘアアクセサリー買って欲しいの、っていう花言葉はー?」

「なんだそれは。そんな花言葉はないよ。それは手紙にでも書いて渡せば良いでしょ」


 馬鹿な若菜にイラつきながらも落ち着け落ち着けと思いながら答える。


「あーお手紙ー!!」

「それならメッセージカードとか花束に添えても良いかもね!!隼人くんさすが!!」

「昴!!ショッピングセンターにレッツゴー!!」

「そうだね!!」

「へーへー頑張れ」

「なに言ってるの、隼人くんも一緒に行くんだよ?」

「なんだと!?」


 冗談じゃない。なんだってそんな面倒なことに付き合わないといけないんだ。花を買ったら即刻帰ろうと思っていた俺は叫ぶ。

 そんな俺を無視して2人はバス停に向かって歩いていってしまう。家に帰っても良いが花を買うのには付き合うと言った手前仕方なくあとについていった。

 バスに乗って20分、ショッピングセンターに着いた。バスを降りて昴と若菜の後ろを歩く。休みの日でも学校に行く時は制服を着ないといけない決まりがある。だから制服を着て大きいバッグを持っている。面倒だからと横着しないで着替えて身軽な状態でくれば良かったと後悔していると前を歩いていた若菜が声をあげる。


「椿ママだー!!」


 つばきまま……つばきママ……椿ママ!?


 俺は慌てて若菜が手を振る方向に目を向ける。すると少し離れた入り口の自動ドアを通ったばかりの女性がこっちに向かって手を振っていた。

 すぐに椿のお母さんだとわかるほど椿に似ているが目がキリッとしていて彩華さんに雰囲気が似ていた。


「若菜ちゃん、こんにちは」

「椿ママーこんにちはー!!それなあにー?」


 おいおいおい、人様の、しかも椿のお母さんの手荷物を勝手に覗きこむ馬鹿がいるか。教育が悪いと思われてしまう、と俺はすぐに若菜の襟を掴んで引っ張る。


「わー!!なにするの!?椿ママーそれなあにー?」


 そんなに気になるのか。俺は呆れながらも椿のお母さんによく見られようと笑顔でいる。椿のお母さんはそんな俺たちに呆然としていたがすぐに気を取り直して言う。


「ここの1階でやってるイベントのパンフレットとかが入ってるのよ。お父さんが作ったのがあるから若菜ちゃんも見に行ってみてね」

「椿パパー?」

「ふふ、そうよ。椿のお父さん」

「わかったー!!」


 若菜はそう言うと昴の腕を掴む。


「椿ママー昴だよー」

「あら、あなたが昴くんなのね。若菜ちゃんからたくさんお話を聞いてるのよ。よろしくね」

「初めまして。結城昴です」


 子供っぽい若菜に自然に接するとは、椿のお母さんはおおらかで椿に似てる。いや、椿がお母さんに似てるのか。

 そう思っていると椿のお母さんは目線を話し終わった昴から俺へと移す。第一印象は大事だと、俺はにこりと笑う。


「ぼ「隼人は私の従兄なだけだからよろしくしなくていいのー!!」……佐々木隼人と申します。従妹がいつもお世話になっております」

「あらあら、ご丁寧に。椿の母です。……って高校生よね?」

「はい、こう「1つ上だよ!!」」


 俺は邪魔してくる若菜にイラつきながら表情には出さないようにした。


「大人っぽいのね。制服を着てなかったらわからなかった」


 ふふ、と笑う顔が椿にそっくりで俺は感動する。


「もー!!椿ママ!!今隼人に会ったこと椿に話しちゃ駄目だからね!!」

「あら、どうして?」

「椿隼人の話したら止まらなくなっちゃうの!!」

「あら……ふふ、そういうことなのね。わかったわ。秘密にするわね」

「ほんとー?」

「ええ。約束ね」

「約束ー!!バイバーイ!!」


 若菜は椿のお母さんと指切りをすると俺の背中にまわってぐいぐいと押してくる。びくともしない俺にまた騒ぎ出す若菜をつまみ上げて昴に押し付けると俺は言う。


「お騒がせしてしまってすみません。これからも若菜のことをよろしくお願いします」

「こちらこそ椿はちょっと抜けてるところがあるけどよろしくね」

「はい。では失礼します」


 俺は未来のお義母さんに向かってお辞儀をするとすたすたとショッピングセンターに向かった。




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