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運命のカミーリア  作者: 柏木紗月
高校生編
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なんて答えるかで緊張



 寝る前、朝起きたあと、椿の写真を見て幸せな気分に浸りながら学校に行き、最終日のテストを受けた。

 そして再開した部活が始まる前、誠司を捕まえた。


「おま……じゃなかった、相澤にいろいろ余計なこと喋ったみたいだね」

「え?あー駄目だった?」

「駄目に決まってるでしょ」

「俺だって人に話したくなるんだよ。相澤ってあっけらかんってしてて話しやすくて」

「だからってなあ。……知ってたのか?」

「なにが?」

「相澤が俺のことって」

「いやー知らなかったよ。坂下さんの話をしてたら聞いてびっくり」

「なんだ、知らなかったの」

「でも囲まれることももうないだろうし、なんだかんだ堂々と話してる効果はあったね」

「全然気にしてなかった」

「え、そういう意図もあるんだと思ってた」

「椿しか見えてなかったからまったく周りなんて気にしてなかった。あと煩い忠犬はいたけど」

「ふーん……。ま、結果的に良かったじゃない」

「良かったのかなー」


 モヤモヤは残ったままなんだけどな、と思いながら練習が始まった。






 そして翌日木曜日。この日は部活前に椿に会える日。でもどうだろう、間が空いたから忘れてそのまま部活に行ってしまうってことはないだろうか。

 そう考えながら帰りのSHRが終わってすぐに部室で着替えてから中庭に行くと椿がベンチに座っていてほっとした気持ちになった。


「先輩、こんにちは」

「こんにちは」


 少し不安だったのがバレないように普段通りにする。椿のすぐそばに座った。少し触れるところから体温は感じないはずなのにじんわりと温かくて心地よく感じた。


「テストどうでした?」

「うん、んー普通かな」


 正直に話せることでもなくて曖昧なことを言ってしまった。


「ふふ、結城くんに聞いてます。先輩すごく優秀なんですよね。謙遜しなくて良いですよ」

「あ、そういうつもりじゃないんだけど」


 それでも椿はクスリと笑うだけだ。検討違いなこともないし嘘をついてるわけじゃないし、まあ良いか。


「テスト前に話してたDVD観たよ」

「え!?本当ですか?」


 そしてお互い一通りDVDの話をした。


「やっぱり坂下さんは注目するポイントが違うね」

「そうですかねー?でもみんなに変わってるって言われます」

「そっか。でも面白いよ」

「先輩のお勧めはなにかないんですか?」

「んー……」


 どうしよう、困った、なんて答えよう。パッと思い付かない、とか?いや、でも……と考えてると相澤のあんまり背伸びしすぎなくても良いんじゃないという言葉をふと思い出す。


「正直あんまり良いと思える映画がなくて」

「え、そうなんですか?私が勧めたのも本当は面白くなかったですか?」

「いやいや、坂下さんに教えてもらったのはどれも面白かったよ」

「良かったー。気を使わせちゃってたのかと思いました」

「ごめん」

「いえいえ!!でも映画館で観るのは好きなんですよね」

「映画館かDVDかって聞かれたら映画館の方が良いかも」

「映画館で観るのも迫力があって良いですもんね。けどなんででしょうね……先輩にヒットする映画を私が選べてたってことですかね。ふふ、偶然でもラッキーでした。先輩と感想言い合うの楽しいですもん」


 そう言って嬉しそうに笑う椿にほっとしたと同時にこれで正解だったんだ、と思った。なんて答えるかでこんなに緊張するとは……。


「私の中学の時の友達にも先輩みたいな人いますよ。どの映画を観ても特になんとも思わないっていう人」

「そうなの?」

「でもその子は私がこれ良かったよって言っても見もしてくれないんです。先輩はその子と違ってこれをきっかけに面白いと思える映画が見つかるかもしれませんよ」

「そうかな。じゃあ観てみて良かったものがあったら坂下さんにお勧めするね」

「あ、でも無理に探さなくて良いですよ。感じ方なんて人それぞれなんですから」

「うん、坂下さんは?無理やり付き合わせてない?」

「今ですか?全然そんなことないです。それにこの中庭でのんびりしたいって入学した時から思ってたんですよ」

「なんの変哲もない中庭だけど……」

「ふふ、そうですよね。でも私自然があるとことか好きなのでよく公園とか植物園とか日本庭園とか行くんですよ、1人で」

「1人で?それって楽しいの?」

「変わってますよね」

「え、そういうつもりじゃ」

「良いんです、慣れっこです。でも落ち着くんですよね。こういう所でぼーとしてたり本を読んでたりするの。でもさすがに学校内の中庭でしてたらちょっと変な人かなって」

「変わってるって自覚あるのに?」

「そ、それはそうなんですけどね、複雑なんです」

「1人でぼーとしてる時はなにを考えるの?」

「いろいろですよ。空を見てあれはなにに見えるか考えたり地面を見て蟻が歩いているのを観察してたり。それを見てたら蟻の習性が気になってきて調べてみたり。だから馬鹿みたいにぼーとしてるわけではないですよ?なにかと忙しいんです」


 なぜかやけに強い口調で弁解しようとする椿が不思議だけどそんな風に1人でも楽しんでる椿を想像したらすごく温かい気持ちになった。


「そうなんだ。良いと思うよ、ここでもやってみれば?」

「いえ、もう良いんです。もう学校で奇行はしないって決めてるんです」

「え、なに?きこう?」


 きこう……文脈的に奇行ということだよね。


「そうです。夏休みも火曜と木曜日に部活があって学校に来るたびに先輩にお礼をしようと体育館の周りをうろうろしたりして2学期が始まってからも同じようにうろうろしてたら人通りも多くてなにしてるんだって目で見られて。あとボール転がってこないかなって渡り廊下でなにもしないでぼーとしてたら具合悪いのかって見たことない先生に心配されたこともありました」


 喋ってる間に顔が少しずつ赤くなっていく椿をじっと見つめる。なんだなんだ?俺が体育館に軟禁されてる間に外では椿がそんなことを?


「せ、先輩?あ、怪しいものではありません……よ」

「ふふ、うん。探してくれてたの?」

「お、お礼を言いたかっただけです」


 それだけだとしてもそんな椿を見てみたかった。きっと可愛かったんだろうな。


「ボール転がってこないかなってどういうこと?」

「そ、そんなに掘り下げなくても……。前と同じことをしたら同じことが起きないかなって。さすがに段ボールの荷物はないですからただ立ってただけですけどボール拾いにこないかなって。あ、ボール拾いしてる人だとは思ってませんけどね!!」

「あははは」

「そ、そんなに笑わないでください!!」


 なんて可愛いんだろう。しばらく笑いっぱなしでようやく笑いを抑えると椿は頬を膨らませていた。


「そんなに笑わなくても良いじゃないですか」

「可愛くてつい」

「またそんな!!からかわないでください!!」

「わかったわかった。ごめんね。試合近くて練習忙しかったから」

「そうなんですね。いえ、良いんです。私が勝手にやって勝手に怪しまれてただけです」

「ふふ……。ごめん、もう笑わない」


 俺が笑おうとすると椿がもの言いたげな目で見てくるからそれも可愛いなと思いつつ冷静になった。


「どこに話を戻そうか。そうだ、こういうとこが落ち着くっていうのはわかるよ。俺も若菜とか家族みんな騒がしいから静かな所好きだし」

「賑やかなのも楽しいですけどたまには息抜きしたいのかもしれないですね」

「いや、たまにはじゃなくて常に」

「ふふ、そんなこと言って、本当は楽しいですよね。私も若菜といるの楽しいですもん」


 なんでいつもそうなるんだろう?椿が若菜のことが好きだからか?


「若菜ったらおおざっぱなところもあるのに時間にきっちりしてますよね。この前もお昼休みにのんびりしてたらあと2分30秒で授業始まるから急いでってせかされてなんで秒針まで……ってあれ、時間大丈夫ですか!?」

「んーと……大丈夫大丈夫」


 楽しそうに話してると思っていたら急に慌て出す椿にゆっくり口調で言う。


「いや、大丈夫じゃないですね!!話しすぎちゃいました、もう行きますね」


 仕方ないな、こっちもあんまり長いと誠司が煩いから行かないと。


「続きはまた今度ね」

「はい!!」







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