モヤモヤと写真入手
昼ご飯を食べてから2人で俺の部屋に入った。
「昴、俺は今自分が酷い男な気がしてるんだ」
「は?気がするんじゃなくて隼人くんは酷い男だけど?」
「……」
俺はため息をつくとさっきのことを話すことにした。
「今日告白されたんだ」
「それで遅かったんだ。なんか久しぶりだね。どんな人だったの?って覚えてないだろうけど」
「相澤ってわかるだろ。女バスの、中学も同じだった」
「あー相澤さん。……え、相澤さん!?あの、ショートカットのサバサバした感じの人だよね。あれ?あの人ってラブレター本人の代わりに渡してきたり本人の代わりに呼び出してきたりしてた人だよね」
「そう。仲介してたけど本当は自分も中学の時から好きだったんだって」
「うそー全然わからなかった。女の人って隠すの上手いっていうもんね。いやーでもわからなかった」
「俺も驚いた」
「で、それで酷い男だって自覚したの?」
「相澤の話を聞いて本当にすごい好かれてたんだって知って、それに全然気付かなかったから」
「僕でも気付かなかったよ。中学の時はわりとよく隼人くんの教室に遊びにいって相澤さんにも何度も会ったことあるけど」
「んーでもモヤモヤするんだよな。今まで振ってきた子たちも相澤みたいに俺のこと好きで告白してきたのかな」
「ろくに話も聞かずにテンプレのセリフ言うだけだったもんね。反省してるんだ」
「んー」
「告白するのって勇気いるもんね。決死の覚悟で告白してきてくれたのに酷いことしてたよね」
「……そうだね」
「今告白したことないだろって思っただろうけど、僕だって困ってるんだよ」
「そうかそうか」
「でもいくら酷いことしてても相手には誠心誠意返事してくれたって思われてるんだから気にしなくて良いんじゃない?」
「浮気相手ってどういうことかな……」
「え、浮気相手?2番目ってこと?」
「冗談だって言ってたけど」
「あわわわ!!隼人くんなんて言ったの?」
「いや、なんとも。そんなこと言うキャラだっけって、そしたら冗談だって」
「そう。……2番目でも良いってどうなんだろうね。全然考えられない話だね」
「そうだろ。それって楽しいのか?相手には別の好きな人がいるんだろ」
「んー……。わからないけどそれでも良いっていうくらいその人が好きなのかな」
「わからない」
「難しいね。優菜さんに聞いてみる?詳しく話さないでそれだけ」
「いや、良い。でもモヤモヤする。今日のだけでいろんなことにモヤモヤする」
「悩んでるねー。今まで全然悩んだことなかったのに。坂下さんのことだけじゃなくていろんなことを考えるようになったね。人間的に成長してるね」
「馬鹿にしてる?」
「まさか」
「そうだ、相澤に言われたことがあるんだ。忘れたくないから昴のなんちゃらノートに書いておいてくれないか?」
「隼人くんが忘れちゃうから僕が正確に覚えておこうっていう、メモリアルノートだよ」
「気持ち悪いんだよ」
「面白いでしょ。小学生の時からだからもう何十冊もあるよ。隼人くんに脅されて苛められた時の証拠にもなる。僕のお気に入りDVDをくだらないって一蹴された、とか」
「まったく、誰に見せるんだよ」
「将来的に坂下さんに見せてあげようかな」
「絶対やめろよ」
「口調」
「ゴホン。……で、だ」
「うん、なんだって?」
「カミーリアは自分と近いところで並んで歩いていけるって人が好きそうだから変に背伸びしすぎなくても良いんじゃないかって。だから頑張るのは全然良いことだけどそのままの俺でも、良いとこがあるんだからあんまり手の届かない完璧人間になってもカミーリアには遠く感じちゃうんじゃないかって」
「ふーん。確かにそれも一理ある。相澤さんって良いこと言うね。坂下さんファストファッションとかこじんまりした感じのお店とか好きだし。琉依さんの知り合いの懐石料理屋なんて行きそうにないもんね」
「俺もあんな堅苦しい店は嫌だ。父さんの知り合いだからまだ良いけど」
「そういうとこ良かったね」
「確かに。カミーリアがそういう店が好きなら行くけど」
「そもそも高校生が気軽に行ける店じゃないけどね。坂下さん今日はお母さんの代わりにスーパーの安売りに行かないといけないから先に帰るとか言うから」
「……どうしてそんなことまで知ってるのかな?」
「これこれこれ、寒い!!若菜から聞いただけだよ!!」
「……カミーリア可愛い」
昴の椿情報が椿に密着しすぎてムカつくけどそんな姿を想像するだけで幸せな気持ちになる。
「もう。体感5度くらい下がるんだけど。恐怖体験だよ」
と、その時部屋の外がバタバタ騒がしくなった。
「なんだろ?」
昴がドアを開けると声が聞こえた。
「美香さんただいま!!」
「あらあら若菜、早くてお迎え間に合わなかったわーおかえりーってもう行っちゃうのー?」
廊下に出てきた母さんののんびりした声がしたと思ったら階段をかけあがった若菜があっという間に部屋にやって来た。
「ど、どうしたの若菜」
若菜が俺の家に来るなんてみんなで来る以外めったにない。昴が戸惑いを隠さず問いかける。
「リベンジに来た!!」
「リベンジ?」
「隼人!!見て!!」
「どうしたの?」
冷静に問いかける俺だったけど若菜が見せてきた携帯に写っていた写真を見て衝撃が走る。
「……可愛い」
「そうでしょう。良いでしょう。私は休みに椿とお出かけしほうだいなの!!羨ましいでしょ!!ってギャー!!」
俺は若菜から携帯を奪い取ると写真を一覧で表示させて俺の携帯に送信した。
「返せ!!」
「良いよ」
「ギャー!!なにしてるの!?」
「なにって?」
「送信履歴!!」
素直にすぐ返してあげたのに若菜は地団駄を踏んで騒ぎだした。
「隼人くん……」
若菜の手にある携帯のメッセージアプリで写真を送られた画面を見た昴が顔をひきつらせて言う。
俺はすぐさま自分の携帯を確認する。来てる来てる。アプリから写真全てをダウンロードする。
まず最初に見たのはモノクロのボーダーのTシャツとジーパン姿の椿がピースサインをして若菜と写っている写真。そしてなぜか大量に詰め込まれたアイスやクッキーやウエハースなどのお菓子が入ったプラスチックのカップを手に持ってスプーンを口に咥えて笑ってる椿の写真など、いろいろな椿が写った夢のような写真をスライドさせながら順番に見ていく。
「昴ー!!怖いよー!!ニヤニヤしてるー!!」
「うん、ヤバいね……」
よし、これはカミーリアという名前でフォルダを作ってわかりやすく保存しておこう。
「たまには役に立ったね、若菜」
「そんなつもりじゃなーい!!」
「そうだったの?」
「消して!!」
「え、そんなの無理だよ。椿の写真を消すなんて。データじゃなくて現物の椿が写った写真があったら捨てられるの?」
「捨てられない!!」
「でしょ」
床に崩れ落ちる若菜に俺も想像してしまった。ゴミ箱に入れられた可愛い可愛い椿の写真……。
「無理だ」
「無理だよー!!」
俺もベッドに座りながら額を手で押さえて項垂れる。
「……2人とも落ち着いて」
「椿は可愛い」
「椿は可愛いもん」
「私服の椿初めて見た。可愛い」
「椿はモノトーンが好きだからかっこいいの!!スタイル良いからパンツがすごく似合う!!でもパンダみたい!!」
「可愛い。スプーン口に咥えてるのなんなの、破壊力すごい」
「ピースだけじゃつまらないってポーズ考えるの!!クレープを食べようとしてるとこも可愛い!!」
「これだね。口開けてるの小さい、可愛い」
「椿は口が小さいから1口がこんだけなの!!」
「可愛い」
いつの間にか若菜にこの写真はこうでこっちはどこどこに行ってこんなことがあったという話を聞いてひたすら可愛いを連発していた。
ひとしきり話を聞き終わった時若菜が叫ぶ。
「って、ちがーーーう!!退却する!!」
そう言うとさっさと部屋から出ていった。
「ふう、これからは毎日カミーリアが見れる」
「メ、メイン画面に設定しないようにね」
「当たり前でしょ。こっそり楽しむんだ」
「そう……」




