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運命のカミーリア  作者: 柏木紗月
高校生編
24/136

大切な出会い(2)─昴視点─


 翌日若菜ちゃんの家で待ち合わせをして若菜ちゃんの従兄の家に来た。

 優菜さんはインターホンも鳴らさずにドアを開けるとどうぞーと言って僕たちを中に入れてくれた。

 僕たちが玄関でどうしようかと迷っていると黒髪の女の人と優菜さんに似ている男の人が来た。僕はやっぱり人見知りして母さんの後ろから眺める。


「あらあら、いらっしゃーい」


 女の人はのんびりとした口調で言いお母さんは挨拶した。


「こんにちは。結城彩華と申します」

「あー良いの。もっと楽な感じで良いわよー。それよりパイを焼いたのー。ちょうど出来立てだから早く食べましょー」


 お母さんとお父さんは苦笑していた。パタパタと部屋に戻る女の人の後ろ姿を眺める。


「まあ、美香はいつもあんなだから気にしないで良いから。ちゃんとしてる方が馬鹿に見えるよー」

「挨拶くらいはするよ。初めまして。話は聞いてるので普通に寛いで行ってね」

「ふふ、はい。お邪魔します」


 お母さんに続いてお父さんと僕も家に上がった。リビングに入るとソファーに本を読んでる男の子がいた。僕と同い年くらいだけどすごく落ち着いた感じのかっこいい男の子だ。この子が隼人くんっていうんだ、とお母さんの後ろからちらりと見た。


「隼人ー今日はなにして遊んであげようかー」

「遊んであげてるのは俺の方だよ」

「くそ生意気なガキだな」

「くそ面倒なババアだな」

「それやめろって言ってんだろ。まったく、誰に似たんだか」

「ママに似たんだよ……」


 僕の隣にいた浩一さんがそう言って僕たちに苦笑いした。


「ここ僕たちの家でもあるんだ。全然気兼ねしなくて良いから」


 浩一さんがそう言うと紅茶とジュースを全員分入れた女の人が「早くー」と僕たちを呼んだ。

 テーブルにつくといつの間にか隣に若菜ちゃんが座っていた。


「本当に若菜がなついてるね」

「ふふ、本当ね。若菜ー仲良くなって良かったわねー」

「お気の毒に」


 お気の毒にってどういう意味だろう、と疑問に思う。僕に言ってるみたいだ。


「どうぞー食べてみて。自信作なのー」

「いただきます。……ん、美味しい!!」

「本当だ!!手作りなの?」

「そうなのよー良かったー」


 僕もいただきますと言って一口食べた。甘くて美味しくてお店のパイみたいだ。


「昴くんも美味しい?」

「うん」

「えへへ、良かったわー」


 でもやっぱり初めて会う人は緊張してそれしか言えなかった。それでも喜んでくれた。


「昴くんも美香さん、琉依さんって呼んでねー」

「うん。美香さん、琉依さん」


 優しそうな人で良かった。

 僕はちびちびとそのパイを食べて、その間お母さんたちは話をしていた。優菜さんと琉依さんはハーフというもので若菜ちゃんと隼人くんはクォーターというものらしいとか、近くに美味しいカフェがあるとか、そういう話。パイを食べ終わってジュースを飲んでいると隼人くんと目があった。


「お前ゲームする?」

「え?ゲーム?」

「つまんない話聞いてても退屈だろ。母さんたちの話が終わるまでゲームしよう」


 ゲームという言葉に反応してしまう。僕はゲームが好きだったから。だけど上手く出来るわけじゃないし初めて会った人とちゃんと遊べるかな、不安だな、と迷ってしまう。


「あら、そうね。ごめんね、昴くん暇だったよね。隼人もたまには良いこと言うなー」

「優菜さん煩い」

「あ?なんだと」


 どうしようと思っていると隼人くんが椅子から立ち上がってリビングの入り口に行って振り向く。

 僕はどうしたら、とお母さんを見上げる。


「隼人くんに遊んでもらってきたら?昴ゲーム好きでしょ。隼人くん、昴あんまり上手にできないけど遊んでくれる?」

「大丈夫」

「ほら、行ってきたら?」

「うん」


 僕は立ち上がろうとしたが腕をぎゅっと掴まれて隣を見ると若菜ちゃんが僕の腕を掴んで僕をじっと見ていた。頬を膨らませてすごく可愛い。


「わかなとあそぶんだもん!!」


 そう言って浩一さんが持っていた鞄から絵本を取り出すと僕につき出してきた。


「よんで」

「ど、どうしたら良いの……」


 隼人くんと若菜ちゃんを交互に見ると隼人くんがため息をついてこっちに来ると若菜ちゃんが持っていた絵本を取り上げて後ろにポイと投げてしまった。若菜ちゃんが叫び僕が呆然としてる中僕の腕を隼人くんが引く。


「絵本なんかよりゲームの方が良いよな。行こうぜ」

「う、うん」


 放り投げられた絵本に駆け寄る若菜ちゃんが心配だったけど僕はちらりちらりと振り向きながらも隼人くんについていった。

 部屋に入れてもらうとテレビにゲームを繋いだ隼人くんがゲームをいくつか見せてくれた。


「どれが良い?」

「えっと、選んで良いの?」

「ああ」

「じゃあこれ」

「よし」


 僕がバトルゲームを選ぶと隼人くんはすぐにセットしてくれてゲームを始めた。





「昴、お前全然駄目だな」

「う、ごめんなさい」


 だから上手くないって言ったのにと思ったけどはっきり言われて落ち込んでしまう。そんな僕を見てため息を1つついた隼人くんは良いか?と言うとすごく丁寧にアドバイスしてくれた。その通りにやってみると今までで一番出来た。


「隼人くんできたよ!!」

「ああ、すごいな」


 興奮して僕が言うと隼人くんは笑ってすごいと褒めてくれた。くすぐったかったけど嬉しかった。


「次は2人で倒すか」

「うん!!」


 そして隼人くんが動かすキャラクターと協力して相手を倒すと隼人くんの上手さがもっとわかった。


「上手い上手い!!」

「そうか」


 1つしか違わないはずなのに隼人くんは落ち着いてて大人の人みたいだな。すごいなと思っているとドアが開いた。


「わかなとあそぶのー!!」

「来たか台風女め」

「台風……?」


 若菜ちゃんは絵本を両手で握りしめて部屋に入ってきた。隼人くんがまた若菜ちゃんの絵本を取り上げようとするけど若菜ちゃんは両手でぎゅっと握って離さない。


「まけないもん!!」

「強情だな。昴もゲームの方が好きだよな」

「えほんのほうがすきだもん!!」

「お前どうせ読めないだろうが」

「すばるがよんでくれるもん!!」

「誰が読むかよ。昴はゲームが良いよな」

「えほんだよね!!」

「え?えー……」


 正直に言うとゲームの方が好きだ。隼人くんはすごく上手いしもっと一緒にやりたい。でも若菜ちゃんとも遊びたい。困った僕は結局言った。


「ど、どっちも……っていうのは駄目かな……」

「はあ……どうやって両方やるんだよ」

「わ、わからないけど」

「えほん!!」


 結局どうしたら良いのかわからなかった僕は隼人くんに助けを求める。隼人くんはため息をつくと若菜ちゃんに言った。


「わかったよ。でも絵本は駄目だ」

「なんで!?」

「ゲームも絵本もずっと見てないといけないだろう。ままごとにしろ。若菜ままごと好きだろ」

「すき!!」

「よし、そういうことだ」

「え、どういうこと!?」


 話が終わったというように隼人くんはゲームを再開してしまった。


「じゃーわかながおくさんやるからすばるはだんなさんね」

「え、うん」

「はやとはむすこね」

「なんで俺も交ざらなきゃなんないんだよ」

「じゃあはじめー。あなた、おかえりなさい」

「え、ただいま?」

「きょうもはやとがようちえんでおゆうぎをサボってせんせいにおこられたのよ。ちゃんとしかって」

「え……と」

「あんなくだらないことやってられるか。ボイコットだ」

「隼人くん、ボイコットってなに?」

「お前そんなことも知らないのか?拒否して、やらないってことだ」

「そうなんだ。隼人くんは物知りだね」

「おい、それより手を動かせ。お前が両方やるって言ったんだろうが」


 テレビの画面ではもうスタートしていた。僕は慌ててコントローラーを操作する。


「もーあなた!!はやくしかって!!」

「え、ボイコットしないでちゃんとやらないと駄目だよ」

「そんなんじゃだめ!!もっとつよく!!そんなだからはやとがつけあがるのよ!!」

「つけあがるってどういう意味?」

「お前……。つけあがるってのはわがままを言っても許されるから余計にわがままが酷くなっていくってことだ」

「そうなんだ。2人とも難しい言葉を知っていてすごいね。おままごとって難しいんだね」

「ほら、ゲーム」

「あ、ごめん」

「あなた、ごはんできてるわよ。はい、おやこどん」

「わー美味しそうだね」

「たべて」

「うん、美味しいよ」

「たべてない!!」

「え」

「昴、食べる動作がないんだよ」

「そんな、でもコントローラーが」


 どうしようと、コントローラーを動かしながら戸惑っていると若菜ちゃんがスプーンを差し出すような動きをしてくる。


「しかたないわねー。はい、あーん」

「え、あ、あーん」


 僕は戸惑いながら若菜ちゃんに少し顔を向けて口を開けた。


「うん、美味しいよ。若菜ちゃんはお料理が上手だね」

「ちがーう!!」

「え、なんで?」


 上手く言えたと思ったのに若菜ちゃんは僕をぺしぺしと叩いてくる。


「ママってよぶかわかなってよびすてにするのよ」

「そうなの?どっちが良いんだろ」

「もーすばるはだめだめね。わかながきめてあげる。じゃーわかなっていって」

「うん、ありがとう。若菜」

「はい、じゃあやりなおしよ」

「若菜はお料理が上手だね。美味しいよ」

「昴ー」

「わ、忘れてた。ごめんね。でも隼人くんすごいね。ゲームやりながら普通におままごとできるなんて」

「お前な、ここに母さんたちがいたら母さんたちの会話にも強制的に参加しないといけないんだぞ。こんなことで感心してるんじゃねえよ」

「そ、そうなんだ。大変なんだね」


 そんなこんなでゲームをしながらおままごとをしていた。だいぶ時間が経った頃優菜さんが呼びに来てくれてリビングに戻った。


「隼人くん、昴と遊んでくれてありがとね」

「それなりに楽しかったから」


 あっという間でもう帰ってしまうのが嫌だなと思った。


「若菜も楽しかった?」

「うん。パパとママみたいにしたよ。あーんって」

「あらあら、若菜はおませさんねー」

「隼人くん、おませさんはわかるよ。前の幼稚園の女の子たちが使ってたから」

「そうかそうか」

「昴くん、また若菜と隼人と一緒に遊んでくれるかな?」


 琉依さんが僕に目線を合わせて聞いてくれた。


「うん!!」

「それはそうよー。だって昴くんってー」

「ふふ、そうよねー」

「ねえ、ママ。それはまだ早いんじゃ……」

「なんでよ。良いじゃない昴くん。不満なの?」

「いや、昴くんに不満があるわけじゃ……」

「なんだ昴。お前そういうことか。やっとまともなやつに会えたと思ったのに全然まともじゃなかったな」

「え、どういう意味?」


 隼人くんの言葉がまた難しくてわからなくて戸惑う。


「それってもう遊んでくれないってこと?」

「……。そういうことじゃない」

「本当?じゃあ明日も遊んでくれる?」

「明日は幼稚園があるだろうが」

「そっか……。あ、幼稚園が終わった後は駄目かな?」

「仕方ないな。じゃあまたうちに来いよ」

「やった!!あ、お母さん!!明日も隼人くんと遊ぶよ」

「はいはい。仲良くなって良かったわね」

「わかなもー!!」

「若菜は駄目」

「いやー!!」

「まあまあ、若菜ちゃんも一緒に遊ぼうよ」

「わかな!!」

「お、おままごとの時だけじゃなかったんだ。ごめんね。若菜も一緒に遊ぼうね。良いよね、隼人くん」

「煩いぞ」

「楽しいじゃない」

「はあ……。昴が良いなら良い」

「ありがとう隼人くん!!」





 こうして僕は若菜と隼人くんという大切な2人と出会った。僕は2人と幼馴染みだけど家族として育った。僕の両親はもちろん、優菜さんも浩一さんも美香さんも琉依さんも僕の大切な家族になった。





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