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運命のカミーリア  作者: 柏木紗月
高校生編
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昴と電話


 自分の部屋に入って携帯のメッセージアプリを開くとトークの1番上をタップし、続いて電話のボタンをタップする。数秒経つと発信音が途切れた。


『もしもし』

「昴、テストどうだった?俺が教えなくて本当に良かったのか?」

『いきなりそれ?大丈夫だったよ。10位以内に入ったから』

「それなら良いけどいつもみたいに練習問題でも作ってやろうと思ってたのに」

『普段から隼人くんが教えてくれるから全然問題なかったよ。そういう隼人くんはどうだったの?』

「俺は3位」

『また?逆に狙って2位と3位行ったり来たりできるのすごいよ。変な手抜きしないで普通に1位とれば良いのに』

「嫌だよ。俺は2番とかがちょうどいいの」

『隼人くんが良いなら良いけど。部活はどうなったの?部長になっちゃいそう?』

「いや、それは大丈夫そう。顧問に俺よりよっぽど向いてるやつをすごいプッシュしてるから。俺は副だよ」

『そう。上手くいくと良いね。隼人くんなら良い部長になると思うけど』

「偉そうに仕切るなんて俺にはできないよ。それに部長なんかやったらサボれないし」

『サボりたいだけでしょ。ってか副部長でもサボっちゃ駄目……って、そういうんじゃなくてもサボっちゃ駄目っていうのは今さらだよね』

「適度に息抜きは必要なんだよ。天然と気が強いのと得体のしれないのと、トリプル攻撃で精神的苦痛だよ」

『美香さんと優菜さんと琉依さん?そんなこといって楽しいでしょ。学校にいる時より全然楽しそうだよ』

「楽なのは楽だけどもっと静かに穏やかに過ごしたい。ああしろ、こうしろ、ここに連れていけ……」

『若菜も高校に入ってから煩く言わないでしょ』

「そうだ。驚くべきことに若菜に友達第一号ができたらしいな。どんな大人しい従順なやつなんだ?」

『またそんな言い方……。普通の女の子だよ』

「普通の女があの破天荒女に付き合えるわけないだろ」

『付き合えるんだよ。それに若菜がもうべったりなんだ。全然離れなくてね。その子とテスト勉強するから僕も来てって』

「じゃじゃ馬を手懐けるとはどんな強い女なんだよ」

『だから普通の女の子だってば。ってか女の子とかせめて女子って呼んで。優菜さんたちにまた怒られるよ』

「今怒られたばっかりだよ」

『やっぱり。言葉遣いがいけないんだよ。もっと琉依さんを見習って丁寧に喋りなよ』

「はいはい、そのうちね。昴こそ最近言葉遣いが悪くなったって言われてたぞ」

『え、本当?もう、隼人くんの影響だよ。どうしてくれるの?』

「人のせいにするなよ。若菜の影響だろ」

『それこそ違うから。隼人くんのがうつったんだよ』

「それに言おう言おうと思ってたけど最近言葉遣いだけじゃなくて俺に対する当たりがきついんじゃないか?若菜の生意気がうつって本当に困るな」

『それも隼人くんのがうつったんだよ。まったく、好きな人ができた時にそんな口の聞き方してたら嫌われちゃうよ?』

「俺に好きな人?できるわけないだろ。最近じゃ上手い断り方を父さんに聞いて付き合うのだって回避してるんだから」

『もう1年くらいいないんだっけ?まあ、隼人くんに好きな人なんて夢のまた夢か。でもそうじゃなくてもそれは直した方が良いと思うよ』

「はあ……。昴、俺が外でどんなか知ってるだろ。それなりに上手く立ち回ってるよ」

『面倒ごとを避けたいがためにやってる品行方正でしょ。この前もまた隼人くんのクラスも教えてる社会科の先生が隼人くんのこと褒めてたよ。幼馴染みなんだろ、あんなに出来た年上の幼馴染みがいるなんていいな、結城も見習えよって』

「そら見たことか。完璧だ」

『全然だよ。その後に、でも時々物騒なことを言ってる気がするんだけど空耳かな、って言ってたんだ。普段からちゃんとしててよ、こうやってうっかり出ちゃうんだから』

「そうか。まあそのうちな」

『はあ……。でもそういえば昔美香さんが品行方正モードの隼人くん見て心配してたよ。お家では優菜や若菜と元気いっぱいお喋りしてるのに外では無理してるみたいだわーって』

「天然は恐ろしいな。あれを元気いっぱいお喋りしてると表現するなんて。あれで俺のストレスがどれだけ溜まると思ってるんだ」

『まあまあ。でも毎日つまらなそうにしてるんだから当たらずとも遠からずじゃないかな。美香さんのすごいところは少しだけ当たってるとこだね』

「偶然の産物だけどな」

『あ、あと僕が隼人くんの部屋に置いてったDVD観た?』

「おい、お前も最近母さんたちみたいに話が突然だな。たくさんあってどれのことかわかんないんだけど。どんだけ買いこむんだよ。こっちにも置けなくなるぞ」

『それもうつっちゃって。隼人くんの部屋なにもないんだから良いでしょ。ほら、あのサスペンス映画』

「あー、あのつまらないやつ」

『えー?そんなことないよ』

「展開が読め過ぎて面白くなかった」

『そうかなー?でもそれくらいが気軽に観れて良くない?』

「そうか?それにどうせ映画観るなら映画館の方が良いだろ」

『映画館でも良いけどDVDも家でゆっくりしながら観れて良いのに』

「まあ、どっちでも良いけど」

『隼人くんもバスケ以外の趣味でもつくれば良いのに。……ゲームはやるけどすぐクリアしちゃって飽きちゃうもんね。バスケと同じになっちゃうけど別のスポーツとか?……も、大抵なんでもできちゃうもんね。んー……』

「別にそんなこと考えなくて良いって」

『少しは人生にハリが出ると思ったんだけど難しいよねー。仕方ないなー。あ、そういえばもうすぐ夏休みだね。今年はキャンプ行ける?』

「またか……いや、無理だな」

『やっぱりそうだよね、部活あるよね』

「悪いな。母さんたちのこと頼むよ」

『琉依さんたちもいるからそれは良いけど……。もうずいぶん隼人くん行けないね、最後に行ったの中学1年の時だっけ?』

「忙しいからなー。サボりもほどほどにしておかないとレギュラー外れるのは嫌だし」

『サボるくせに好きだよね』

「別にそこまでじゃないって」

『はいはい、他は全然続かないのに今まで続いてるのが証拠だよ。素直じゃないね。それに本当は優しいのにそれもわかりずらいし』

「お、最近じゃ珍しく褒めてくれるのか?」

『もう、隼人くんは本当は優しいよ。ひねくれてるだけで』

「結局貶してくるのか」

『じゃあそろそろ切るよ?良い?』

「ああ。じゃあな」


 電話を切って携帯を机に置く。

 昴との会話の中でなぜか印象に残った話を思い返してみた。

 好きな人ができたら……そんなものができるはずがない。今まで数人付き合ったがどうにも面倒だった。どうしても、と頼まれて付き合ってはみたもののこっちに気持ちがないんだから上手くいくはずもなく、何処に行きたい、あれがしたい、なんで会えないの、毎日会いたい、そんなのばっかりで面倒でストレスになるだけだった。これなら初めて付き合った……よく覚えていないが、優菜さんを母親だと勘違いして母さんを見てがっかりしたと思ったら父さんを見て俺よりイケメンだと言いのけてはっきりと父さんに会いたいから家に呼べと言ってくるようになった女が一番面倒ではなかった。優菜さんたちには酷評だったな。どうして別れたのかは思い出せないけど。

 そんな俺に好きな人なんてできるはずがない。好きな人ができるってどんな感覚なんだろう?俺の周りにはいろんな夫婦がいる。父さんと母さんはお試しみたいな感じで付き合い始めたらしいけど結局すぐに父さんも母さんにベタ惚れして今でもオープンにイチャついてる。優菜さんと浩一さんは8歳も年の差があるのに全然それを感じさせないくらい自然で。美人な見た目のわりに勝ち気で肝が座ってる優菜さんに浩一さんが上手く合わせてる感じ。ちなみに父さんと母さんは5歳差だ。彩華さんのところは彩華さんが1つ年上で天然の一輝さんをしっかり者の彩華さんが引っ張ってる。

 そんな色々な夫婦の形をそばで見ていると自分は将来どうなるんだろう、と思う時はある。好きになることはなさそうだからなぜか顔の広い父さんから誰か勧められるか見合いでもするかして流されるように結婚するのだろうか。駄目だ、全然想像できない。まあ、どうなるにせよ、父さんみたいに恋に溺れるようなことはないだろう、と思う。




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