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運命のカミーリア  作者: 柏木紗月
高校生編
13/136

よろしく



 結局日曜日は昴に勉強を教えているだけで1日が終わり、そして月曜日になった。

 午前中は椿に会えなかった。そうだ、学校で普通にしても探し回っても見つけられたのはあの日だけだったんだと思い出した。ずっとそれで悩んでいたのに土曜日に会えた感動ですっかり忘れていた。椿に会うにはいったいどうすれば良いんだ。

 そう考えながら今は昼休み。弁当を食べながら視聴覚室で部活のチームメイトと土曜日の試合のビデオを見ていた。いや、いつの間にか終わっていた。顧問と誠司が適当なコメントして解散ということになった。


「隼人、ビデオ見てた?話聞いてた?」

「いや、まったく」

「もー……考えながらでも出来るんじゃなかったの?」

「椿のことを考えるので他のことをする余地がない。仕方ないだろ」

「仕方ないでしょ、でしょ?」

「……話さなきゃ良かった」


 今朝の部活の時に昴と話したことを誠司にも話した。そしたらそれは是非協力するよ、と言い出したんだ。厄介だ、言わなきゃ良かった。


「だいたい外で俺にだけ雑な扱いなのがおかしいよ。家族にだけなんでしょ」

「だから言っただ……言ったでしょ。お前……誠司は昴に似てたんだよ、うじうじしてるところが」

「だからうじうじしてないんだけどな。隼人だけだよ。俺のことそう言うの」

「温和そうなところとか」

「そこ?確かに隼人の毒舌を受け流してあげてるけど。あ、そうそう、もうすぐ昼休み終わるから早く行こう。隼人次の授業なに?」

「古典。誠司は?」

「俺は美術。一回教室に戻って荷物置いてから戻ってこないといけないんだ」


 そう言いながら弁当と一切メモしなかったノートにペンを差して持つと視聴覚室から出て教室に向かう。


「どうしたら椿に会えるんだろう」

「んー待ち合わせとかしたら?」

「そうだなー連絡先聞かなきゃ」

「昴くんに聞けば?」

「いや、そこは自分で聞きたい」

「じゃあ……どうしようか」

「おま……誠司の彼女は?」

「学校違うんだよ。だから部活が終わったあとに会うとか、家が近いからすぐ会えるんだ」

「幼馴染みか」

「うん、まあね」

「はー……。昴ももたついてないで付き合うなら付き合えば良いのにな」

「小西さんのことが好きなんだよね。まあなるようになるんじゃない?」

「まだ父さんに及ばないから、まだ父さんみたいにかっこいい大人の男になれてないから、まだまだまだって、じゃあいつなら良いんだよ。別にあいつらが付き合おうと付き合わなかろうとどうでも良いんだけどな。なんであんな中途半端なことずっと続けてるんだか……」

「ふふ、心配してるんだね」

「そういうんじゃない。本人がいるとこで澄ました面してるのにこっちには惚けられて面倒なだけだ」

「面じゃなくて顔ね」

「ん」

「あれ?」

「どうした?」

「坂下さんだよ」


 なんでだ!?いや、嬉しい!!でもなんで今まで会えなかったのに!!なんて偶然なんだ!!

 椿が向こうの1号館から渡り廊下に差し掛かる所にいるのが俺たちが歩いてる廊下の窓から見えた。俺たちがいる2号館で授業があるんだろう。教科書とペンケースを両手で抱き寄せるように持っていた。可愛い。


「どうしよう」

「え、なんで?会えて良かったじゃん」

「心の準備が」

「乙女か……。とりあえず俺は先に行くよ?」

「え、なんで?」

「だから次の授業で戻ってこないといけないんだって。それにどうせ邪魔だって言うでしょ」

「あ、ああ」


 俺たちも進んで渡り廊下まで来た時椿の隣にいた若菜が俺に気付いて嫌悪感をあらわにする。俺もお前は邪魔だ。だが誠司、お前は少し心の準備ができるまでいてくれても良いんだぞ。

 そう思ってると椿と目が合って自然と笑みがこぼれる。可愛い。


「こんにちは」

「あ、えっと、こんにちは」


 もうなるようになるだろう。俺が挨拶すると椿は詰まりながら返事してくれた。


「隼人、先に行ってるな」

「ああ」


 俺の肩を軽く叩いて誠司は前に歩いていってしまった。


「あの、良かったんですか?お友達……」

「大丈夫大丈夫」


 誠司め、面白がってるな。あとで覚えてろよ。


「授業?」

「はい。理科の授業で」

「そうなんだ」

「あの、佐々木先輩は?」

「昼休みに視聴覚室で土曜日の練習試合のビデオを見ててね。教室に戻るところなんだよ」


 ゆっくり丁寧に……。俺はうっかりしないように昴の言う通り話す。


「そ、そうなんですか!!……すみません!!」

「え?なんで謝るの?」

「あ、いえ……。名前知っててすみません。あの、結城くんに聞いてしまって」


 そう言って勢いよく頭を下げる椿に呆気にとらわれる。その慌てた様子に初めて会った時の様子が重なってなぜか面白かった。なぜだか笑いが込み上げてきて声を出して笑ってしまう。さっきまで心の準備が、なんてらしくないことを考えてガチガチに緊張していたせいか一度笑うと緊張感が溶けていた。


「あ、あの……?」

「あー、ごめん」


 なにも緊張することないじゃないか。椿といるだけで穏やかな気持ちになれるんだから。この偶然の出会いを楽しまないと。


「えーと、なんだっけ……。そう、名前だね」

「は、はい」


 俺が突然笑うから驚かせてしまった。ごめんと思いながら俺は改めて椿のその綺麗な瞳を見つめた。


「そんなこと気にしないよ。でも……じゃあ自己紹介しようか」

「あ、はい」

「俺は佐々木隼人」

「あの、坂下椿です。よろしくお願いします」

「うん、よろし……」

「よろしくしないからー!!」


 今まで存在を抹消していたが椿の隣には若菜がいたんだった。今まで大人しくしてたんだからそのまま黙ってろよ。若菜が突然俺の言葉を遮って叫ぶから椿が驚いてしまったじゃないか。

 若菜は俺を睨んで椿の手を握ると俺の横を通って土曜日のように走っていく。

 落ち着け、俺は大人だ。若菜なんかに妨害させられてたまるか。土曜日とは違って手を引かれながらも椿は振り向いてくれた。それが嬉しくて俺は手を振って一言。


「坂下さん、またね」

「は、はい!!」


 あの笑顔は絶対喜んでくれてる。顔を真っ赤に染めて笑う椿を目に焼き付ける。だが若菜、お前は覚えてろよ。






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