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運命のカミーリア  作者: 柏木紗月
社会人編
101/136

大学と竜二さん親子



「わー!!わー!!へー!!あー翔太くん待ってよー」


 俺はついに椿の母校(仮)の大学に潜入じゃなかった、オープンキャンパスに参加する翔太くんの保護者として同伴しにきた。佳代子さんも知っているけどお父さんである竜二さんにも一応保護者として行きますと伝えてある。楽しんできなねと言ってくれた。


「ねー隼人くん、目立つからうろうろしないでよー」

「ごめんごめん。だって見てみなよ。着物が飾ってあるよ。日本文化学だって。着るのかな?椿は着物が似合うだろうなー」

「その学部かもそもそも本当にこの大学かもわからないのによくそこまで考えられるよねー」

「あ、見てみて。これは犬?」

「犬みたいなゆるキャラだね」


 壁に犬みたいなゆるキャラが貼ってあって吹き出しに個別相談はこちらと書かれていた。


「翔太くん、翔太くん、ここだよ」

「わかってるよー」


 翔太くんを前に行かせて個別相談をしている教室に入ると順番待ちをしていて列に並んですぐに順番が来た。

 先にとりあえず翔太くんがちょっと興味あるという商学部の話を聞いた。そして一段落したところで就職先について聞いてみる。


「商学部ですと「いえ、商学部じゃなくても良いんです」……はい?」

「気にしないでください。商学部はどうですか?」


 翔太くんに目で咎められて一旦落ち着く。答えてくれたあとに改めてまだ商学部とは決めかねてるから他の学部も含めてどんなところに就職してるのか知りたいんですと言ってみた。


「そうですね、中小企業のメーカーが多いです」

「県内に就職する人が多いですか?都内とか出たり」

「いますけど県内が多いですね。地方から来た学生も多いですけどそのままこちらで就職してますね。もちろんUターンで就職する学生もいます」

「そうなんですね、ちなみに女子学生はどんなメーカーに就職してるんでしょう」

「え?女子学生ですか?え、男の子……」

「ありがとうございましたー。失礼しまーす」


 翔太くんに腕を引かれて教室を出る。


「もう、遠回しに聞くって言ってたのにー」

「遠回しに聞いたよ」

「全然怪しいから。変な人たちだと思われたよ」

「そんなに気にしてないよ」

「まったくもー。それで次はどうするのー?」

「模擬授業に出てみようよ。翔太くんの進路選択のためでもあるんだから。俺は今のでひとまず満足だよ」

「そうなの?えーとね、それじゃあこれに行こう」

「うん」


 そのあと翔太くんについて体験授業を聞いたあとラウンジに行った。


「広いねー隼人くんの通ってた大学もこんな感じ?」

「そうだね、こんな感じだよ」

「なんでそわそわしてるの?」

「ん?だって見て見て。学食、女子に大人気パスタランチだって。椿も食べたかな?」

「だからこの大学かわから……まあ良いやー。じゃあパスタランチを食べてみる?」

「あ、待って。2番人気のビーフシチューかもしれない」

「じゃあどうするのー?」

「どうしよう……」

「……もう、じゃあ隼人くんパスタランチにしなよ。僕ビーフシチューにするから」

「それは女の子が好きなシェアってやつ?」

「さあねー。僕は洋子が小さい時こうしてたよー」

「さすがお兄ちゃんだね。じゃあそうするよ」


 そういうことで俺はパスタランチ、翔太くんはビーフシチューを頼んでそれを持って席に座る。お互い半分ずつ取り分けて食べることにした。


「ねー隼人くんは大学生の時どんなだったの?」

「んー俺はバスケサークルとバイトばっかりだったよ。翔太くんはバンド続けるの?」

「いやー続けないかな」

「そっか。商学部だよね、竜二さんの跡継ぐの?」

「父さんは継がせようとしてないと思うよ。僕いい加減だしーそんなに頭よくないし。隼人くんは優秀だから余計に嫌気が差してると思うな」

「竜二さんが?そんなことないと思うよ。竜二さん優しいし」

「それはねー隼人くんにだけだよ。たまにしか帰ってこないし帰ってきたと思ったら母さんに怒られてて。雑誌とかテレビでは偉そうにしてるのに」

「翔太くんは竜二さんが嫌いなの?」

「嫌ってるわけじゃないよ。けど父さんは僕のことに興味がないんだ」

「んーそんなことないと思うよ」

「父さんより関さんの方がよっぽど見てくれたよ。誕生日だって父さんには1回も祝ってもらった覚えないけど関さんは毎年届けてくれるよ」

「そうなんだ。んーただ忙しくてできなかったんじゃないかな。どうなんだろう。ちなみに翔太くんの誕生日っていつなの?」

「今日だよ」

「え、今日なの?」

「そうだよ」

「え、おめでとう!!」

「ありがとう。今日も帰ったら関さんからプレゼントが届いてるはずだよ」

「んーでも違うと思うんだよねーなんとなく」

「それより隼人くんは誕生日いつなの?どんなお祝いするの?」

「俺は4月11日。だけどその日に祝ったことはないからあんまり意識したことない。あ、おめでとうぐらいは言われるけどね。近い人でまとめて祝うんだ。横断幕を飾ったりパンパンってクラッカー鳴らしたり」

「へー楽しそうだねー!!」

「毎回騒がしいだけだよ。親父も仕事終わりに帰ってくれば良いのにパーティーの日は特別だって休みとって朝から母さんと飾り付けして夜にはみんなでパーティーするんだ」


 そう言うのと同時に食べ終わってふと考える。親父はいつでも祝い事にはしゃいでるけどそれはなにも親父だけじゃないんじゃないかな。竜二さんだって翔太くんの誕生日をお祝いしたいと思ってるに決まってる。


「ねえ、翔太くんの関さんからのプレゼントっていつもどういうのなの?」

「1ヶ月くらい前に聞かれるんだよ、電話で。誕生日プレゼントなにが良いって」

「今年はなんて言ったの?」

「本だよ本」

「真面目だね。洋子ちゃんはどうしてるか知ってる?」

「洋子は物欲ないから。毎年父さんに帰ってきてほしいって言ってるよ」

「俺多分わかったよ。じゃあ俺用事できたから先に帰るね。あ、今日は誕生日パーティーしよう。またあとでね!!」

「え!?隼人くんが来たいって言うから来たのに!!」


 わかってるよ、と心の中で答えて食器を片付けて椿の母校かもしれない大学を存分に味わいながら急いで校内を出る。

 そして竜二さんに電話をかけてみる。繋がるかわからなかったけど6コール目で出てくれた。


『隼人くんどうしたの?』

「竜二さん今どこにいますか?」

『え、今?今は会社だけど……』

「ちょっと聞きたいことがあるんですけど」

『そうなの?でもすぐ会議が入っちゃって。2時間後会社まで来てくれたら5分だけなら大丈夫かも』

「ありがとうございます!!じゃあまたあとで!!」


 電話を切って今度は関さんに電話をかけてみる。


『もしもし』

「関さん、ちょっと聞きたいことがあるんですけど」

『今?ちょっと待ってね……はい、良いよ』

「仕事ですよね、すみません」

『平気平気。ただのミーティングだから。で、どうしたの?』

「あの、翔太くんに毎年誕生日プレゼントを送ってるって聞いたんですけど」

『あれ?やっぱりそう思ってるんだ翔太くん』

「関さんが聞いて竜二さんが買ってるんですよね?」

『そうそう。さすが隼人くんだね。竜二がなにをあげたら良いのか全然わからないって言うからストレートに聞けばって言ったら翔太くんに嫌われてるから聞けない、お前が代わりに聞いて教えろってね』

「やっぱり。そんな感じだと思いました」

『竜二たちはどっちも頑固で素直になれないから』


 ちなみに翔太くんが欲しがった本はなんて本なのか聞いてみてから電話を切った。

 そして電車で移動して適当に時間を潰してる間に佳代子さんに誕生日パーティーをしてほしいと連絡した。時間になって会社の中に入ってビクビクしながらエレベーターで上に上がり竜二さんの部屋に通される。


「ごめんね、来てもらっちゃって。どうしたの?」


 部屋に入ると竜二さんは電話を置いたところだった。


「いえ、こちらこそ無理を言ってすみま……あれ?それは?」


 竜二さんの机には書類があって見ないようにしながら歩いて竜二さんのそばに行くとそのうちの1枚に翔太という文字が書かれているのが見えた。


「ああ、これは別になんでもないよ」

「それは社長が翔太くんに書いた毎年渡せない手紙です」


 そう言ったのはローテーブルにお茶を置いてくれた秘書。ここまで案内してくれた人とは別の人だ。


「翔太くんにですか?あ、誕生日メッセージですね」

「う、うん。でも今年も渡せないよ」

「そう言って毎年社長室の引き出しに入れてそのままなんです」


 案内してくれた秘書がそう言って部屋の横にある戸棚を開ける。


「あ、おい、勝手に開けるな」

「これが去年書いたものです」

「あ、ありがとうございます」


 秘書から手紙を受け取った俺は竜二さんすみませんと言いながらその手紙を開けてみる。


『翔太へ 誕生日おめでとう。高校生活はどうだ?直接ではないが軽音楽部のライブ見たぞ。始めたばかりなのにギター上手かった。たくさん練習したんだな。ライブも直接見に行けないし家にもなかなか帰れないし駄目な父親だけど翔太にとってこの1年が良い年になるように願っている。 父さんより』


 なんて感動的な手紙なんだ。手紙を丁寧にしまってなんとしてでも遅くなったけど翔太くんに届けなければ、と思った。


「ちなみに先月の翔太くんのライブには私が行ってまいりました。かっこよかったです」


 お茶を持ってきてくれた秘書が教えてくれる。


「忙しいのと行くのが恥ずかしいからとおっしゃるので毎回私たちのどちらかが行って動画を撮って社長にお送りしているのです」

「なんで翔太くんに教えてあげないんですか、竜二さん」

「いや、それは翔太が俺のことを」

「嫌ってないですよ。2人とも素直になって話したらどうですか?」

「社長、今日は早くお帰りになられてはいかがです?」

「今ならちょうど落ち着いてますし」

「そうは言ってもあと1分で出ないと次の予定に間に合わないけどな」

「え!?そうなんですか!?すみません、邪魔しちゃって」

「あー良いの。えっと、とりあえず今日は早めに帰ることにするよ」


 そう言って急いで部屋を出ていく竜二さん。俺も早く帰ろう、とここまで案内してくれた方の秘書にもう一度下まで送ってもらった。そして誕生日プレゼントを買うために寄り道して竜二さんの家に向かった。


 家につくと翔太くんが文句を言ってきた。


「ごめんってば。でもね、今日竜二さん早く帰るって。良かったね」

「えーなんで帰ってくるのさ」

「なんでって翔太の誕生日だからでしょうが。ほら、今年のプレゼント」


 翔太くんは佳代子さんに渡された包みを開ける。すると経営学について書かれたビジネス本、竜二さんが書いたものだ。竜二さんは本も何冊か出版している。そのうちの1冊が今翔太くんの手にある本だ。


「翔太くん本当は経営学を勉強したいんだね」

「別にー商学部でも変わらないよー」

「でもきっちり竜二さんの本を選んでる」

「これは……ただこれが一番わかりやすそうだと思っただけだよ」

「ねーそれお父さん自分で買ったのかな?自分の本だからただ?」

「買ったんじゃない?本人が本人の本買うって本屋の店員さんもビックリするわね」

「そうだねー」

「え、ちょっと待ってよ。これ関さんのプレゼントでしょ?」

「なに言ってるのよ。いつも父さんが買ってきてるでしょ」

「え!?」

「洋子ちゃんは知ってたんだね」

「へへーん。知ってるよ!!お兄ちゃんお母さんが聞いても別になにもいらないって言うのに関さんが聞いたら答えてて私も関さん仲良しだけど関さんから誕生日おめでとうって連絡くるだけだもん。お母さんに今年も誕生日お父さんに帰ってきてほしいって言うとお父さん帰ってきてくれるしお手紙もくれるよ」

「な……いつの間に?知らない」

「拗ねてさっさと2階に上がっちゃうからでしょ」

「そうなの?でも手紙なんて……」

「はい、全部もらってきたよ。いつも用意してたけど渡せなかったんだって」

「……え、ライブ?」


 俺が手紙を渡してあげると翔太くんはそのうちの1枚を読む。


「ライブのことなんて一度も話してないのに」

「お母さんが話してるのよ。秘書さんに見に行ってもらって撮った動画をずっと何回も繰り返し見てるのよ」

「知らなかった」


 と、そこで思ってたより早く竜二さんが帰ってきた。竜二さんは照れながら今年の手紙を翔太くんに渡した。


「誕生日おめでとう」

「……ありがと」


 そしてその手紙を翔太くんが読んだあと俺は買ってきたプレゼントを渡す。


「竜二さんが会社の後継者をどうするつもりなのかわからないけど大学で経営学勉強したいならその前の受験は手伝えると思うよ」


 とりあえず問題集を1冊買ってきた。


「翔太がやりたいなら考えておく。だけど生半可な気持ちじゃ任せられないからな」

「も、もちろんわかってるよ。隼人くん良いの?仕事は?椿ちゃん探しにクラブチームは?」

「仕事も落ち着いてるし椿もとりあえずメーカーに絞ってその会社の周辺探してみるしクラブもそんなに毎週行くって決まってるわけでもないし、教える時間は取れるよ。教えられるかわからないけど」

「隼人くん、ありがとう。翔太のために」

「塾講師に家庭教師もしてたんだから教えることに関してこれ以上ないほど適任じゃない」

「いや、それこそプロの家庭教師雇った方がいい気がしますけど」

「隼人くんが良いなら隼人くんが良いよ。お願いします、隼人くん」

「うん、よろしくね」



 こうして俺は時間ができたら翔太くんに勉強を教えることになった。





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