十七話 真実
「……これが事の顛末です」
「そうか、ハープギーリヒ領は任せるがビネンメーア伯爵は分割とする。アルム嬢はこちらに引き取ろう。嬢は何処にいる?」
「ハルモ二にて、最後の時間を過ごしています」
国王の護衛から戻って来ていたアングリッフに二か月間の報告をしていた。領主不在となっていたビネンメーア領は混乱していたがディアマント領軍が進駐しているおかげである程度は治安も回復していた。
「良くぞと勝ったと言いたいが同じ国の者同士であるからな。中央はこれまで以上に目を付けるだろう」
「そうですね。キュロスは他国との貿易が出来ますし、人口増加のおかげで税収も増加しますからね。無理難題を押し付けてくるかもしれません」
「まぁ、そういうことだ」
その後も編入した町や村への支援や役場の設置で忙しくなりクラウト領であるが何も無く、安定した日々が続くのであった。
――六か月後
「本日は不肖の息子の結婚式に参列して頂き、誠にありがとうございます。私も齢五十を迎えて、まさか孫の顔を見れるとは思ってもおりませんでした。
息子がリーベさんとフォンちゃんを連れてきた時は驚きましたが男が多い私の家族の大切な花でございます」
「孫にデレデレなんだな」
「オッホン。話が長くなりましたが二人の新たな門出を祝って、乾杯!」
アルディートの長男ムーティヒの結婚式がアイントラハトで行われていた。それもクラウト領で初の異種結婚であり、何かと噂になっていた。
二人が出会ったのは役場でリーベの娘フォンが迷子になっていたところをムーティヒが助けたらしい。そこからリーベのアタックもあり、晴れて結婚となった。
「本日は参加して頂きありがとうございます。ヴァ―ル様」
「気にするな、堅物のお前を陥落させた方を見に来ただけだ。時雨が言っていたがお前はけもなー? なのか?」
「決して、モフりたくて結婚したわけではございません!」
時雨はサブカルチャーの知識をクラウト領に広めていた。その為か、最近は執事やメイド喫茶などの飲食店が増えていた。
「それでは執務に戻る。一か月くらいは休んでもいいぞ」
「ありがとうございました。無理ですよ、父上が魔槍を持って新居に来ますよ」
「そうだな」
ヴァ―ルはムーティヒに別れを告げると城に向かい始めた。
「奥の房を開けてくれ」
「ハッ」
ヴァ―ルはその足で城の地下にある牢獄へと足を運んでいた。その中でも警備が厳しい房がある。
「お久しぶりですな。ヴァ―ル様」
「あぁ、そうだな。フルート」
全ての始まりであるフルート・コメートはすぐには殺されずに長期に渡る尋問をされていた。それでも口を割らなかったフルートは隷属の首輪をつけられて、この房に押し込められていた。
「とうとう、処刑されるのですか?」
「いや、聞きたいことがあってな」
「ほぅ」
フルートは意外であった。尋問は得意としているグートなどが行っており、ヴァ―ル自身がここに来たのは初めてあった。しかも、今回は誰もついて来てはいない。
「双子の勇者の伝説についてだ。内容は省こう。双子の兄の血筋は今の王家に、弟の血筋はメーア家となり、王国を治めている。だが、勇者以外の賢者たちは国を作る必要があったのかと俺はずっと疑問に思っていた。
魔物の王に支配されていた地域を奪還した勇者がその地を統治したのは分かるが他の連中は元々あった国を乗っ取るか、滅ぼして国を作っている。しかも、教国は勇者に加護を与えた天使では無く、僧侶を神として崇めている。後、僧侶は何処の宗教の僧侶なんだ、僧侶を崇める聖教会以外の宗教の記録はこの大陸には存在していない。
そして、毎年貢物として、教国に集められている膨大な食料、鉱物資源、人間は何処に消えているのか非常に疑問であった。
だが、答えは見つかった。双子の勇者以外はこの大陸の者では無かったのだな。僧侶、賢者、剣士は一つの陣営で魔法使いと魔物の王がそれまた別の陣営であったとは。非常に面白かったぞ。悪魔の書は」
「なんだと、貴様が悪魔の書を知っている?」
「偶々、グートが拾ってきてな。お前の同僚が間抜けで隠し場所まで教えてくれたらしいぞ」
グートが教国潜入中に手に入れた情報は非情に有益なものばかりであったがその中でも接触してきた真なる司祭に仕えるの者がグートに教えた真実には驚愕した。
この大陸は二つの大陸の間にある島であり、長年に渡り戦争の舞台になっていたのがある時を機に今の王国がある場所を除き、僧侶たちの陣営が支配した。
だが、魔物の王は魔法使い陣営でも最強であり、簡単には倒せるものではなかった。
僧侶は魔法使いを洗脳し、裏切らせた。そして、妻である魔法使いの裏切りに怒り狂った魔物の王は怒涛の勢いで周辺を制圧する。これは僧侶も予想以上の速度であった。
しかし、嬉しい誤算が起きた。勇者の誕生である。勇者は知らずのうちに僧侶陣営に加担し、魔物の王を倒してしまった。
その後、勇者は監視される形で荒れ果ていた魔物の王の領地に押し込まれてしまれ、魔法使いは魔物の王を殺した瞬間、洗脳が解けて、魔物の王を追うように死んだ。
これが双子の勇者の伝説の真相であり、ヴァ―ル達が住む島は僧侶陣営の植民地支配を受けているである。
「教国も所詮は植民地を統括しているだけの役場と同じとはな、恐ろしい話だ」
「そこまで知ってどうするつもりだ?」
「それなら俺は戦うまでだ」
この世界の真実を知り、更なる覚悟を決めたヴァ―ルはそう言って、牢獄を出て行った。
一度、ここで完結としたいと思います。
続きは考えているのですがモチベーションが保つことが出来ず、ある程度書き溜めをしてからまた、投稿しようかと思っております。




