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十六話 しかし、終わりはあっけないものだ

不定期更新ですがよろしくお願いします。もし、良かったら感想評価、ブクマ等もよろしくお願いします。


「ヴァ―ル様の指示は補給線を破壊することだ! 命をおとすんじゃねぞ、拾いにいけねぁからなぁ」

「「おうッ」」


 クラウト領のハープギーリヒ領の侵攻を聞いたビネンメーア伯爵はハープギーリヒ領への救援は出さずにクラウト領へと侵攻を開始した。


 ビネンメーア領と一番に近い町はハルモ二であるがそれでも領境から一か月の距離にある。村も集村化などでハルモ二の近くにしか存在しておらず、略奪など許されていた兵達は落胆の色が隠せていなかった。


 そこに現れたのはクラウト領の騎馬隊である。だが、掲げている紋章はクラウト領軍の紋章では無く、盾と馬の紋章である。それはクラウト領警備隊の紋章であり、盾は住民の盾であるという決意の証であり、馬はクラウト領の象徴である。


 ビネンメーア領軍の補給線をこれでもかというぐらいに引き裂いた警備騎馬隊の存在はビネンメーア領軍の最大の問題となっていた。食料も村が無い為に調達は不可能であり、士気は落ちる一方であった。


「さて、逃げるぞ!」


 現れては消えていく、騎馬隊は悪夢そのものであっただろう。しかし、ビネンメーア領軍指揮官は騎馬隊を止めることは出来ずに軍の足を止めてしまった。


――キュロス陥落後三日


「半分の千五百は敵の援軍に備えて、置いていく」


「大丈夫ですか? キュロスを手に入りてもヴァ―ル様が死んだら私の首を父様が取りに来るのですが?」


「問題ない。奴らは我々が陸からしか来ないと思い、領境にしか兵を配置していない。それどころか、全ての兵を今回の侵攻に使っているから町や村には兵が居ないと方向が来た」


「相手はバカなんですか?」


「さぁな。それだけ、急いでクラウト領を占領しなければならんのだろうよ。まぁ、そんなことはさせんがな。


 じゃあ、少し長い船旅をしてくる。統治は任せたぞ、ファイゲ」


「この地にて、武運をお祈りいたします」


 ヴァ―ルとその手勢千五百は港に停泊している帆船に乗り、史上初の海上からの進撃を開始した。


――二週間後


「どうだ? 兵の体調は?」


「波に慣れた者多いですがまだ、酔いが取れていない者もおります」


「そうか。俺は何回は船に乗っていたが酔ったことは無かったからな、忘れていた。そいうえば、よくラッヘンがゲーゲーと魚に餌をやっていたな、懐かしいな」


 キュロスを離れてすぐにクラウト領軍は壊滅の危機にさらされていた。獣人の殆どが船酔いで体調を崩していたのだ。船長からも一度、岸に付けた方が良いかもしれないと言われたが状況は緊迫していると伝えて、そのまま、航行した。


 時間が経つにつれて、回復する者も多かったが未だに寝込んでいる者もいた。後、一日で航海も終わり、戦闘に入る。もし、それまでに回復していない者が居たら船で送り返しかない。


「明日からはまた、強硬軍となる。兵達にはよく休んでおくように伝えてくれ」


「了解しました。しかし、海からの強襲とは考えもつきませんでした」


「色んな攻撃手段は考えていたがまさか、自国の者に使うことになるとはな。少し、空しい気持ちではある」


 そう言いながらヴァ―ルは窓の外を眺めていた。



――翌朝


「上陸後は制圧せずに町の外に出るぞ。その後は集合し、ヴァルトを目指す!」


 ヴァ―ルが派手な火属性魔法を打ち上げて、住民の気を逸らしたのちにクラウト領軍は町から離脱した。


「異常はないか?」


「全員集合完了しています!」


「では、出発!」


 クラウト領軍に侵入している敵が引き返して来たらクラウト領軍は数で負けるだろう。その為、敵が戻るまでにビネンメーア伯爵が居るヴァルトを攻略しなければならない。


「さて、俺達は勝てるのかね」


 ――その頃、クラウト領内


「投降者が多すぎる。このままだと許容量を超えてしまう」


「まさか、補給線を攻撃しただけで軍隊を行動不能してしまうなんて。我らも気を付けなければならないですな」


「そうですが、あまりにも相手方の逃亡兵や投降する者が多すぎてこの町では収容できなくなります。アイントラハトに搬送しては駄目でしょうか? アルディート様?」


「ある程度は大丈夫でしょうな。しかし、ヴィラ殿も良い代官の顔になりましたな」


 ハルモ二の代官はヴィラである。自分で父親を殺して、家督を継いだ為に多くの家臣が離れていった。だが、ヴァ―ルが教育していた奴隷を送ってくれたおかげで町の運営自体は問題が無かった。


「では、よろしくお願い致します」


「あぁ。しかし、ビネンメーア伯爵令嬢は元気にされておるのかね?」


「私は知りませぬ。そこでの思い出は置いてきました


「そうか」


――二日後


「本当に兵は居らず、門は開いております」


「油断し過ぎではないか。まぁいい、町に入りしだい伯爵をとらえる」


 流石に門番が居たので処理して、町へと侵入した。屋敷にも少しの守衛はいたが簡単に処理できた。


 屋敷に入ったが人気が全く無く、静まり返っていたが生臭い鉄の匂いが漂っていた。ヴァ―ル達は人数が多すぎたので一中隊で屋敷に入ったが廊下や壁には血痕は無く、あまりにも怪しい過ぎた。


「匂いはどこからだ?」


「二階の奥の部屋からですね。そこは人の気配がしました」


「行くか」


 調査に出ていた兵が戻り、二階へと進んだ。食堂や使用人用の部屋にも誰も居なかった。見栄を重要視していたビネンメーア伯爵家には多くの調度品があるがそれには手を付けられていなかった。


 また、自分の娘を豪商の後妻に出して、経済は良好であったはずだ。


「突入!」


 ドアを蹴り破り、突入した。そこには大量の死体と一人の少女が居た。


「あらあらお久しぶりでございますね、ヴァ―ル様」


「久しぶりだな。アルム嬢」


「どうされましたか? この死体は私が殺しましたわ。お父様もお母様も山の中にございますよ」


「なんでだ?」


「私はあの男の後妻として、お父様に売り飛ばされました。貴族学校に居る時にヴィラ様と永遠の愛を誓った私は卒業後に領地に戻りしだいクラウト領に行こうとしていました。


 しかし、父は私が眠っている間に隷属の首輪をつけられました。その後はあの男の下へと送られ、何もかもをうばわれました。私が反抗的ではなくなると隷属の首輪をはずしました。


 その後も媚び続けて、故郷が見たいと言ったらそれを許してくれました。出迎えた両親は笑顔でした。私はあの時の屈辱をヴィラ様と離れ離れにされた恨みを忘れていませんでした。料理を振舞いたいと言い、痺れ薬を仕込みました。


 まぁ、その後は両親の爪や皮を少しずつ剥がしていたら凄い悲鳴をあげるんですよ。その悲鳴がとても心地よくて、使用人たちも巻き込んでしまいました。


 ウフフ、ヴァ―ル様。ありがとうございます。貴方のおかげで兵はクラウト領に行き、簡単に復讐することが出来ましたわ」


 この悲惨な状態を作り上げた少女は死体の中心でケラケラと笑っていた。兵に拘束させて、死なせないように監視した。念入りに計画し、準備してきたが最後はあっけないものであった。


 こうして、クラウト家はクラウト領を始めとした三領を実効支配する大貴族となった。


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