十四話 カウントダウン
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「現在、人口は急増しており、まだ食料は不足してませんが私の見込みでは七ヶ月で食料難が始まると考えられます」
「今が夏の一月。そしたら冬の一月が限界になるのか」
「はい。この試算は計画通りに兵糧を市場に解放した状態での計算ですが軍事行動が起きれば、早まります」
「もう既に宣戦布告はされている。軍を起こさなければ、領地を犯される」
クラウト領は急激な人口増加が起きていた。たった四か月で元の四万人から四倍の十六万人に増えていた。獣人を筆頭に虐げられていた亜人がクラウト領に集まり、ヴァ―ル達が考えていた想定を超える速度で増えていた。
アイントラハトとフライハルト、ハルモ二では新領法施行後三か月で約十二万人が住民登録をした。役所も連日徹夜の業務でギリギリで捌き切った。ヴァ―ルもすぐに開拓団を組織して、新しい村を作るように指示した。
最近は住民登録もやっと落ちつき、入って来た間諜や罪人はシュロスが代理を務めている諜報部隊が排除しており、治安も安定した。
「自分の息子が罪を犯したのにもみ消そうとするのが悪いだろうに」
「ヴァ―ル様。ヴァ―ル様が貴族と平民を平等に裁こうとするほうがこの国で珍しいのですよ」
「そうだったな。俺は変わり者だったな」
クラウト領に隣接してるビネンメーア伯爵家の息子がクラウト領で普人の女性に性的暴行を加えて、逮捕されていた。そして、裁判で鉱山労働刑五年の判決が下された。
しかし、ビネンメーア家が中央貴族に頼み込み、無罪にしようとしたがヴァ―ルが許さず、示談となった。その額は二百万ジルである。
貴族が罪を犯しても問われないことが多い王国で貴族が裁かれた実例となった。そして、領民に対して、領法を守るということを証明した。
「今更、裁判を不服として、三か月後までに示談金の返却と俺の謝罪が無ければ騎士団をクラウト領に侵攻させて領地を接収するとは大きく出たな」
「ビネンメーア家は昔から薬草と牧場が欲して、争いは絶えませんでしたからな。アイゼン様がご領主になられてからは何もしなくなっていましたが我々が不和であることが好機と思い、強く出たのでしょう。
それと中央貴族も躍進を続けているクラウト領に痛手を与えたいと考えいるのでしょう。だからこそ、クラウト領を目指した者達を全て通し、領内の食糧難を狙ったのでしょう」
十六万の人が移動していて、国や通り道の領地の貴族が黙っているわけがない。亜人は貴重な労働源あり、それをみすみす逃すわけがない。その為、裏で誰かが糸を引いているのは確実であった。
「さて、結論だが金もやらないし謝らない。そこで皆に対策を考えたい」
「これが地図になります」
クラウト領を中心して北にはブルカ―ン山脈を挟んで帝国がある。東はビネンメーア領、その腰巾着のハープギーリヒ領が南にあった。
また、クラウト領にはハープギーリヒ領まで流れている川が二つ、ビネンメーア領までの川が一つあった。
「兵糧の限界は?」
「三千で最大で二か月です」
小麦の収穫が始まっていたがそれを含めても五大隊計三千名が二か月分が限界であり、それ以上の戦闘を行えば食糧難が早まってしまう。
「難しいですな。戦闘を避ける為に謝罪と金銭を返してしまったら政治的に敗北して、戦闘になれば長期戦になるほど領地が荒れてしまう」
「なら、速攻でケリをつけちゃばいいんじゃないんですか?」
「それを今、考えているのだろう」
クラーターが軽口を叩くと色んなところから叱咤が飛んでいた。
「そうか、そうだな! 速攻でケリとつければ良いんだな! たまには良いことを言うじゃないか! クラーターの減給は取り消しだ」
「えっ? 俺、何か言いました?」
一人だけ笑うヴァ―ル以外は考えが分からないために呆然とヴァ―ルを見つめていた。




