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第1話

 いわゆる国防色の制服に身を包んだ男女が2人、青色の電車(よこすかせん)に揺られ、青色のロングシートに体をうずめて座っていた。乗り込んだ駅から2個目の踏切を過ぎた所で、唐突に女性の方が口を開く。


「高野小隊長。なんで私達呼ばれたんでしょう?」

「さぁな」


 高野と呼ばれた男は口元だけを動かし短く答える。女性の方はその受け答えが気に入らなかった様で憮然たる面持ちとなる。


「高野小隊長はもう少し愛想よくなりませんか?」

「逆に横山、貴官はもう少し落ち着け」

「ひっどいです! もしかして高野小隊長は、私が五月蝿い小娘とか思ってるんですかぁ?!」


 高野は一連の言葉に一切顔を動かさずに応じる。それが余計、彼女の癪に触ったらしい。横山は恨みがましく睨むが高野は一切応じず、対等に睨めっことは行かなかった。

 そうやっている内に、列車は速度を落とし、プラットホームへと滑り込む。掲げられていた看板には北鎌倉駅と表記されていた。


「ただ、そのササリンドウに恥じぬ振る舞いをしろ」


 高野は自身の胸ポケットを指差し鎌倉市市章にも定められているササリンドウのシンボルを示す。そう言い終わると列車は止まり、ドアが音を立てて開く。

 平日の昼間である。観光客はあまり見当たらず、数人、地元のおばさん達が乗り込んで来た。そこで国防色の2人を認めると軽く会釈をする高野と横山はそれに応じて会釈を返す。そう珍しくなくなった日常の光景であった。

 北鎌倉駅はそんなに大きい駅ではないためすぐに出発ベルが鳴り、ドアが空いた時と同じ様に音を立てて閉まり、ゆっくりと再び動き出す。

 大船-北鎌倉間も北鎌倉-鎌倉間も大した距離はない。直ぐに鎌倉市の本拠地である。そして、彼らの目的地も直ぐそこだ。


————————————————


 鎌倉駅で列車を降りた2人は御成町の市役所方面……西口から出ず東口から出る。やはりこちらは中心街である。平日にもかかわらず人は多い。降り立った横山は少し身を竦ませる。


「なんか、一気に肌寒くなりましたよねー」


 高野はそんな横山の呟きを無視し、大股で、若宮大路の方へ歩いていく。若宮大路に出たならば左へと曲がり鶴岡八幡宮へと目指す。文字通り(・・・・)に。

 観光客や地元住民に溶け込めない深緑色の服をひらひらとさせながら八幡宮の境内へと入る。

 少し困ったことに観光客の視線が冷たい。と横山は感じる。が、自分で置き換えてみても旅行先の市町村に市町村のロゴが入った深緑色の制服が彷徨っているのを見ればそうなってしまうだろう。そう思い直して、横山は若干目線を落とし、帽子を目深めに被って、やり過ごす。

 早歩きでせかせかと参道を歩き、舞殿の手前の横道に入る。メインの観光路でない横道はいつも人が少ないものである。人通りがまばらで大分楽になった所で2人は全く真新しい建物へと入る。

 入った直ぐそこには、受付と駅によくある、改札機みたいなセキュリティーゲートがあった。2人は身分証をかざし、中へと入る。入ったすぐ先はエレベーターホールになっており、無言で高野がボタンを押す。扉が開き、高野は来る前に指示された階層、B3のボタンを押す。


「本当にここすごいですよね。八幡宮の中に地下4階もの施設を作るなんて」


 エレベーターの扉が閉まり降下し始めてから横山が、扉の少し上にある階層表示と各階に何があるかの案内を見ながら呟く。高野はそれには答えず制帽を被り直した。数秒後、降下感が失せ、合成音声が地下3階へとたどり着いたことをおしえる。やや遅れてドアが開けば、2人と同じ様に深緑の制服を着た1人の男が待っていた。


「お待ちしていました。ようこそ鎌倉幕僚府の中枢部へ。総幕僚長がお待ちです」


 如何にも事務的な口調でお出迎えであった。

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