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アーティチョークの茂み

狂人らしい狂人の話

歌うような調子で紡がれる警告の言の葉

マイケル・ポニーに見つかってはいけないよ。

マイケル・ポニーに見つかったら、もう帰れない。君がマイケル・ポニーに会っても会わなくても、君がまた俺に会う事はないだろう。けれど、寝覚めが悪いから君にはちゃんと帰ってもらいたいんだ。

マイケル・ポニーは足が速い。マイケル・ポニーは賢い。けれど、馬鹿だから上手くやれば騙せるだろう。

俺には帰る場所はない。何処にも行く事は出来ないんだ。

マイケル・ポニーは毎日やってくる。やってきて俺に話すんだ。

可哀想なメアリー・アン。一つくらいは忠告を聞いてくれれば良かったのに。

可哀想なジョニー・ジョーズ。走っても勝てないと言われたのに。

可哀想なジェーン・スミス。立ち止まってはいけなかったのに。

可哀想なホークス・ガイズ。自分だけでも助かる道はあったのに。見捨てて逃げれば良かっただろうに。

俺以外にも君へ忠告するものはいるだろう。一つには耳を傾けろ。全てを聞く必要はない。彼らにも知らないことはあるんだ。彼らはマイケル・ポニーに相対してはいないからね。相対したら大変だよ。君たちも、会おうなんてしちゃあいけない。

マイケル・ポニーは人間にどうにかできるものではないんだ。マイケル・ポニーを倒そうなんて考えたらいけないよ。それよりも逃げるんだ。見つからないように隠れてやり過ごせ。

マイケル・ポニーは最初から死んでいるものには興味を示さない。死ぬものから生命を食べるんだ。

あぁあぁ、そうだ俺の所為だ。許してくれ、マイケル・ポニー。俺の所為だ。俺の所為でマイケル・ポニーはああなったんだ。すまない、すまない、俺が安易に考えたから悪かったんだ。

マイケル・ポニーには悪いことをした。ああ、俺と出会わなければ、こんな事にはなっていなかったであろうものを。

罪悪感などない。俺に罪悪感などない。マイケル・ポニーに悪気はないんだ。

君は早く帰るんだ、君のあるべき場所に。そう、あるべき場所だ。此処は、あらざるべき場所。君は此処にいるべきではない。

可哀想なグレー・マーキス。運が悪かったんだ。女神に嫌われたんだろう。

可哀想なベンジャミン・アークス。選ぶ道を間違えたんだ。警告はきちんとされていたのに。

可哀想なメリー・ベル。かける眼鏡を間違えたんだ。謎かけをちゃんと解かなきゃならなかったのに。

可哀想なゴーシュ・バック。しかし同情はしないよ。会ってはいけないと言ったのだから。

マイケル・ポニーは足が速い。見つかれば一瞬で追い付くぞ。

マイケル・ポニーは目はあまりよくないが、耳が良い。些細な気配にも気付くだろう。

マイケル・ポニーを見てはいけない。きっと君には耐えられない。狂ってしまっては逃げられない。隠れる事も出来ないだろう。

マイケル・ポニーは狂ってしまった。俺の所為だ。俺が狂わせてしまった。苦しんでいるのだろう?苦しんでいたのだろうか?けれど、マイケル・ポニーはそれで余計に生命を食べるようになったんだ。

人と怪物は相容れないのか。いや、相容れてしまってはいけなかったんだ。俺はそうするべきではなかったんだ。

マイケル・ポニーはいつまでも続けるばかりだろう。その心が変わらない限り。ああそうだ。マイケル・ポニーにも心が、心が存在してしまったんだ。人のものとは違っても、マイケル・ポニーも心を持ってしまったんだ。ああ、ああ、なんて浅はかな。なんて罪深い。

可哀想なマイケル・ポニー。それでも人とは相容れないのだ。相容れることは出来ないんだ。

君は同情してはいけないよ。碌な事にはなりやしないんだから。

さあ、そろそろ行くんだ。じきにマイケル・ポニーがやってくる。このあるべきでない場所に紛れこんだ人間を探しにやってくる。

マイケル・ポニーがやってくるぞ。

マイケル・ポニーに見つかってはいけないよ。マイケル・ポニーに見つかったらもう帰れない。

マイケル・ポニーが近付いてくる。

マイケル・ポニーが近づいている。君は見つからない内にお帰りなさい。

マイケル・ポニーに見つかってはいけないよ。ああ、なんて惨いことだろう。

マイケル・ポニーに見つかってはいけないよ。マイケル・ポニーはじきにやってくる。

マイケル・ポニーに見つかってはいけないよ。マイケル・ポニーが此処にやってくる。

マイケル・ポニーが君を探しにやってくる。



怪物は元から怪物だが、彼は怪物に心を与えてしまった

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― 新着の感想 ―
[良い点] 御伽噺のような雰囲気と流れるような、語り口でした。読みやすかったです。 [気になる点] ……段落変えが無い?  [一言] マイケルポニーが何かの隠語にしか聞こえない……不気味で夢に出そう…
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