僕の確認
昨日、大婆に道具を見せた。それぞれ一つずつを目安に、使えそうなものを渡した。そんな大きくないから持っていけた。
もう直ぐオークと戦うなら、準備がいる。例えば武器、魔力量、体の調子とかの個人の準備。それから、相手の位置、使う道具、戦略なんかの軍の準備。どちらも細かく言えばやることは多い。
だから、僕が何ができて、何ができないのか。改めて理解していこう。
喋っても何を言っているかわからない。五感は正常で、睡眠と食事はあるとうれしい。食べるとHP回復が早くて、寝るとMP回復が早い。
六時間程日中にいると、日の光によって燃える。
スケルトンの時に骨がバラバラになったら、近くにあれば魔力によって体が直るけど、水中だと意味がない。
大体こんな感じだ。
つまり僕は、疲れをしらず老いることも無い。更に、衣食住のうちいるのは食だけ、それも絶対じゃない。労働にはもってこいな物件と言える。
何が言いたいのかというと、優秀な一兵だということだ。コボルトのような速さは無いけども、多様性を含んだしぶとい奴として戦えるだろう。それに魔法も使える。武器の方はそんなに自信ないけども、魔法には自信がある。
トントン
狭すぎる物置くらいにしか使えない地下ではなく、がっつり居間にいるから、いつもの面子じゃなかったらバレてしまう。
玄関から音がするけど、僕は玄関に行かない。ただ、今いるものを纏めて端によろう。
さて、剣を研ごうかと思ったけど、音がでるからやめようかな。
としたら...水をつけて布で拭けば、錆か血でもとれるかな?
トントン トントン
玄関からまた音がするけどももちろん動かない。その内諦めて帰るだろうし、それまでにできることだけやっておこう。居留守するんだから、バレちゃいけない。
ドンドン!ドンドン!
これは、かなり迷惑だな。いい加減入ってくるかもしれないし、念の為隠れておこうかな。
ローブを羽織って...ああそうだ。顔を隠せるような物はないかな?
...バリアン・ラスキーのツタを使おう、髪の毛をツタに変えて。あとは顔面に巻き付けて、目の部分は開けておけばいい。自分の姿は見えないけど、ただ巻きつけるだけよりも違和感なくできるだろう。
それから、キューブで足場を造って天井に隠れよう。といっても浮いてるだけになるけども。剣、布...他はたぶん無いだろう。一応地下の天井に隠れよう。急いで静かに物置に行こう。
地下には梯子を使って降りなければいけないから、天井はそうそう見ないだろう。更に入り口近くには、落ちないように壁ができてるから後ろと横には壁しかない。
後は、入り口を何か軽いもので隠せばいいだろう。
ガチャ ぎぃ
地下に入る直前、玄関の扉が音を出して来訪者を教えてくれる。
後は地下で過ぎ去るのを待てばいいだろう。それまで退屈なだけだ。
トットット
足音がする。とりあえず、オークのように重い足音ではないのが分かる。まあコボルトだろうな。さて何人なんだろうか。残念なことにわからない。いつかは足音で何人いるか分かるようになろうかな。
トットット
盗まれたらどうしようか。僕が戻ったとき、何を盗まれたのか分からないかもしれないし。何がないか、直ぐに分かるといいけども。
トントントン
少し音がゆっくりになったかな?僕がいないと思ってるのかな?
途中で足音が消えた。そこまで遠くはないと思う。待ち伏せでもしてるんだろうか。もし、今僕が出たら、それを叩く予定なのだろう。
無視でいい。盗まれても特に困らない。趣味で作ってたことの作り方は全部もとから地下に置いてある。
音をたてないように布で拭いてたけど、あんまり綺麗にはならなかった。これ以上やっても仕方ないだろう。
...となると他にやるとしたら、魔法の練習ぐらいか?
右手に水の玉を三つ作り出す。水球、これを頭上で回す。これだけでも制御が上達するだろう。
魔法には、合計20種の大本となる魔法と、その他で25もある。
基本四属性魔法の火、水、風、土。これらは、それら26種の中で、原初に近い四つ。簡単に言えば人族が初めて扱うことができた魔法。
そしてそれぞれの基本四属性魔法の派生として生まれた扱えるようになったのが、基本派生四属性魔法の光、闇、氷、雷。
火は光、水は氷、風は雷、土は闇と派生していった。とはいっても、その性質は全く違い、主目的も何ができるかもまるで違う。
これらを八属性と言ったりもする。
他にも副十ニ属性という、八属性とはまた違う形で使えるようになったとされる。
理、白、聖、音色、思念、無、重力、精神、時空、召喚、古、狂気とある。これらは多種多様であるとしかいえない。
そして六式術と呼ばれる、五つ。魔法の分類と似て違う、魔術というものたち。
強化術、弱化術、幻術、錬金術、死霊術という五つ。五つしか無いのに六式術。五式術じゃない理由は知らない。
魔物という生物がおり、魔獣、魔蟲、魔草、魔物という四種が通常。
魔獣は獣系の魔物。とはいっても、全部が全部というわけでもなく、魚や蜥蜴なんかもここに分類される。
魔蟲は虫系の魔物で、多くは早熟で、早く戦えるようになる。しかし、そういったものたちは、代わりに寿命は短い事の方が多い。
魔草は植物系の魔物で、だいたいどこにでも十数種類ほどはいることの方が多い。日の光、水、養分に魔力といった容易に摂取できるものを主食にしている場合が多い。
その中でも、生物を補食するような魔草は極めて危険。獲物を養分に変え、過剰な養分を溜めて種子の育ちを良くする。
魔物は、物に魔力が宿って悪い方向に進化したものたち。敵性有り無しは分かれるが、興味本位が無いとも言い切れない。触媒が強力な場合、魔物も強力となる。魔物と呼ばずに種別名で呼ぶことの方が多い。
また、種族ごとに、人間、獣人、妖精、魔人という呼び名で魔物扱いされることもある。
ちなみに、これはヤムさんに聞いた話だ。
例えばゴブリンがいて、人間がそれを[ゴブリン兵]と呼んだとする。
だけど、実際にゴブリン兵という種族はなく、魔族の強さを示すためにそう言われてるだけらしい。勿論、ゴブリン兵と呼ぶためには、鎧を着込んでなければいけないだとか、武器がないといけないだとかはない。
[ゴブリン兵]や[ゴブリン騎士]、[ゴブリン王]などはあくまでも強さを示す基準であるらしい。順に、兵級、騎士級、王級なんて言われたりもする。
そして人間に評価基準が広まったのは、昔物好きな魔族が人間に様々な種族の評価基準を教えたかららしい。
この言い方で分かるとおり、全ての魔族の評価基準が同じではない。
ちなみにこの集落の評価基準は、最初に[兵級]か[魔法士級]、[製作士級]からになり、次評価で[騎士級]、[魔法士二級]、[職人級]となって、[将軍]、[魔法士三級]、[工兵級]となるらしい。これより上や細かいものは、集落の属する国に行ってから認められたらなれるらしい。他も大体は同じらしい。
次に...
トットット トットット ドンドン!
家を走り回る音と、床を強く叩く音が聞こえる。
まだいたんだ。しかも、地下に続く隠し扉の近くから聞こえた。並列化は上手くできなくて、ぎこちなく回っていた水魔法は解除しておく。
ごとっ ぎぃ
何かが動いて、何かが開く音がする。それから天井から光が垂れてくる。
隠し扉の上にあったを軽い荷物をどかし、蓋を開けたのだろう。見ただけだと近づかないと分かりにくく感じたのだが。
とっとっと
梯子を降りる音がする。そして足の部分が見えてきた。茶色の毛だ。やがて全貌が見える。なんとも気難しそうだな。さて誰だろう。
とっとっと
そのコボルトが手で合図の様なものをすると、また梯子を降りる音がする。今度は大婆と同じ、白い毛のコボルトだ。割と見慣れたから、このコボルトの容姿が整ってるのは分かる。
「...誰も居ないね」
白いコボルトが言う。誰も居ないように思わせるために、わざわざ天井近くに運んだんだ。
「いや、だが、ここに引っ越してきた筈だが...」
今度は茶色のコボルトが言う。困惑したような声で喋るコボルト。生活の跡はあるから、単純に留守だとは思わないんだろうか。
「どう?誰かいる?」
「...なんとも微妙だ」
あれ?居るか居ないのか大まかに分かるのか。だが、居るが居ないってどういう意味?僕は確かに、まぁ隠れてはいるけどもいるぞ?
「どういう事なの?」
「...位置を把握しずらいな。確かに家屋内に一人はいる」
んん?もっと具体的に教えてくれないかな?そうしたら、それを何とかするためのことを考えられるから。中々大事そうだし。
とりあえず、上を見られても僕の存在がバレないように、隠れよう。このローブは僕を覆い隠すのには充分な大きさだ。ローブが掛けられてる風にすればいけるかな?
元から見えにくい端っこにいたんだ。その上加える手間は少しだけ。隠れきるのに時間はそういらない。
「しょうがないから戻ろっか」
「...ちょっと待て」
なんだ?何かあったか?それともバレたか?
一応ローブがぶら下がってるみたいにはしているけど。
他の物は...剣は僕が持ってるし、間違って落ちないようにお腹あたりにおいたキューブに引っかかってメモも落ちない。
「あの、ローブ...」
ああ、バレたな。これ以外ローブはない。十中八九僕のことを指している。
「ほんとだ、ローブだね。こんな地下に掛けてあるんだから、よほど見たくもないものなのかしら?」
どうするか?流石にいきなり攻撃してはこないだろうけど、敵対してくるのか?
「欲しい」
「え?」
?
少し時間が経ってから多少理解できた。
こいつ、盗人だな
「あれはいいな。久々に新品の物を見たぞ。それに、あれはグルンの皮を使ってあるな。まだ持っていないぞ」
「ちょ、ちょっと待って!ここに誰か居るんでしょ!?なに泥棒しようとしてるの!?」
「前に、グルンの毛皮で何かを作ろうとした事がある。しかし...ダメにしたんだ...」
「それは腕前の問題でしょ!」
...どうやって反撃しようか。殺すのはまずい。追い返せればいい。怖い、と思わせればいい。
けど、まだローブの向こうがどうなってるかわからない。どっちが盗人だ?
「いくらなんでもそれはダメだよ!怒られるよ!」
「もう人様の家に無断で侵入している。今更だ」
「もう、ダメだ...こうなったらドゥさんは止められない...」
盗人はドゥというらしい、どうでもいいことを知った。
ローブにさっきまで無かったシワが走った。手を伸ばしたな?
「ッ!」
すんでのところでドゥが手を引っ込める。まだ、動いてはいない筈だ。何でわかった?
「テオ、気をつけろ。ローブに隠れてる」
「え?」
盗人はドゥとテオ。火事場泥棒の名前は覚えたぞ。
見つかったなら仕方ない。隠れ蓑にしていたローブを羽織って剣を構える。丁度よくフードが頭に覆い被さった。顔はまだ見られてないだろう。
白いコボルトと茶色のコボルト。
コボルトを見慣れたからか、どういう顔つきなのかわかった。
白いコボルトは背が低く、目は細い。本当だったらキツそう性格って言うんだろうけど、生憎と尻餅ついて口をパクパクしてるからそうは見えない。
手には槍。見慣れたレイコピオンの槍だ。
もしかして大婆の親戚かな?集落を覗いた時も、茶色は多かったけど白はいなかった。
恐らく、こっちがテオだろう。
茶色のコボルトは比べて背が高く、やせ細った皮肉気な顔をしている。こっちを強く警戒していて、手に持った鉤付きの杖を強く握り締めている。
となるとこっちがドゥだろうか。
「...君が、この家の、主で合っているだろうか?」
ドゥの言葉に少し考えてから頷く。厳密には違うけど、この場で細かく言わなくてもいいだろうし、伝える必要性も感じない。
「まずは、無断で侵入したことを、謝罪したい。すまなかった」
「えっと、すみませんでした...」
白い方は、最後の方は小さな声だったから聞こえなかったけど、謝罪の言葉であってるだろう。
「では謝罪も終わったので本題に入る。最初から聞いていただろうが、このローブを譲ってくれないだろうか?新品は久々に見てな...」
ちょうど良くドゥの言葉に、区切れが入ったので身振りで黙る事を伝える。
口を塞ぐ動作で黙ってくれるだろうか。
「...何の意味だ?」
僕の身振りの意味を問うドゥ。
まぁ、話は止まったから、目的は果たせた訳だ。それでいいだろう。
水魔法を使って、魔族語で文を書いていく。後は、文字が読めることを期待しよう。それがダメなら此処で睨み合いだ。
「なにこれ?しゃ、べれ、ない...喋れない?えっと...ドゥとやらの話を一度止めたかった。だって」
「はぁ、まあいいだろう。しばし黙ることにする。それで、だ。何の話し合いをするのかね?」
水魔法を使って魔族語を字にしていく。さて、何を話すかな。何も考えてなかった。
...自己紹介でもしてもらったら、そしたら何で来たのかでも聞こうかな。訪ねられもあれだし、先に名前は書いとくかな。
さて、どれほどの嘘か聞いてやる。
「自己紹介。ドゥだ。先程も言ったが、君のローブを気にしている」
「えっと、テオよ。ロウ・カナティス、ね。よろしく」
よろしく、よろしくね。さて、宜しくできるのかね。
「それから、目的だったな。先程も言ってるがローブ...は、冗談なのだが。さて、どう説明しようか」
「知ってるかどうかはわからないけど、集落にオークが攻めてきてるの。だからわかんない事は早めに確認しておきたくて」
ドゥとテオに近づく。
近いなら槍は上手く振るえないだろう。
顔を見られないように顔はあげないようにしよう。顔を見られないようにしているから、見えるのは相手の腰まで。
ドゥ視点
目の前に居るのはツタを巻いて口元を隠し、グルンの毛皮で作られたローブを纏った者、改めロウ。
身長はテオよりも低く、手に持った鉄剣が不釣り合いだ。
姿を見られたくないのか、ロウはかなり近寄ってきたのにも関わらずフードをとらずに、首を曲げて顔を向けてこない。
「あなたは魔法が使えるのですね?」
隣に立つ、集落の長である、大婆の孫のテオがロウに喋り掛ける。
いつもネメと同じくらい元気なのに、それとは違う、装いの真面目な顔と口調に笑いがこみ上げてくる。
...しかし、まぁ、多少は抑えないと。
「...そこで、なのだが、オークとの戦闘に参戦していただきたい」
元々の性格からか、それとも相手の素性が分からないからか。どうも上手い具合にはっきり喋れない。
ロウは少し考えた後に、もう一度水魔法を使って魔族語で書いていく。魔力は大丈夫なのか?
何を考えているのか分からないが『自分で動く』、と書いてあった。
つまり、協調の意志は無いとのことだ。これは黒色が濃いな。
「じゃあ参戦してくれるのね!」
水魔法でまた字を形成するロウ。
なんだ、今度は何を伝える気だ?
というより、集落全員が魔族語の読み書きができる訳ではないのだが、こいつは分かってるのか?
『自分の思うようにやる』
それはそうだろう。初めて会うような奴らと協調できる奴の方がいない。いたとしたら、そいつは何処にいようが引っ張りダコだ。
「で、でも参戦するって...」
水魔法で字を作られるのを見る。
『戦うつもりだし、そちらに喧嘩を売るつもりは無いけども、仲良くできるとは思っていない』
さて、交渉は大の苦手だ。ここはテトのお手並み拝見とさせていただこう。まったく、こんな事に誘われても何もできんというのに。
「じゃ、じゃあ」
ロウは、敵対も辞さないといった様子で鉄剣への握りを強めた。
...まぁ、こちらも無理に敵を増やす必要はない。戦ってくれるのなら、引くべきだろう。
「テオ、一度帰ろう」
「え!?なんで、まだ会ったばかりなのに!」
「話は後だ。戻ってやることもあるだろ」
理解しようとしないテオの肩に手を回して。方向転換させる。
一度引き返して、やることはまだたくさんある。
「離して!私は納得できないわ。今、ここで、何なのか教えてよ」
「...後でな」
にしても奇妙な奴だったな、全身隠しおって。何か体に記されているのか?
「むぅー。あ、そうだ。ローブについて何か聞かなくていいの?」
「ああ...まあ、その内都会で買ってくればいいのではあるしな...」
しかし、出所くらい、聞けば良かったな。
ロウ視点
二人を家から追い出し、少しぼうっとする。
水魔法が消えないように、うねうねと文字に変化させる使い方をしていたら、今日だけで魔力をかなり使っていた。
魔力が無くなるまで動くような気はないけれど、何もしないのは少し違う。
消費が少ない上に魔力制御もできるキューブで練習する。
これから色々あるかもしれない。
相手がどんな種族でも問題ない言い訳を考えておこう。
まずは魔族用。
ゾンビになったといえど、僕の姿は控えめにいっても人間と同じだ。
テオには吸血鬼と間違えられたけど、吸血鬼なら縫い目は必要ないし、レットキャップような剛力もないし彼らが使わない魔法を使ってる時点でアウトだ。
無難にゲルのブレインと言った方がいいかもしれない。
この間知ったのだが、変わり者で腕にゲルを統合したとする。
そしたら足でも首でも腰でもどこだろうと変化できた。
体全体をゲルにすれば受け入れてくれるかもしれない。
次に獣人族用。
今度は魔物のブレインなんてダメだ。
奴隷になるか討伐されるだろうから、オークやコボルトのように化ける必要がある。
ゾンビをベースにグルンを混ぜれば、狼系の獣人としていけるかもしれない。
そして妖精族。
これが特に難問で、肌の色を変えるとこからもうできない。
僕は緑やら水色の肌に自分の肌をかえることができない。
諦める方がいいかも。
最後、人族。
これについては色々と手を尽くせば何とかなるくらいだと思う。
見た目だけなら一番何とかなりそうだけど、姿形で子ども扱いなのは間違いない。
活動するという点では少し難しいかもしれない。
生憎と人じゃなければダメという訳ではないので問題はない。
では検証。
どれほど騙せるのか分からないから。生活魔法のミラーを使って自分を確認しながら変更していく。
まずはゲル。
人間の肌の部分をそのままゲルに置き換えただけだからとても楽だった。
見た目は問題なさそうだった。
問題点があるとしたら、液状の体だから体を支えるのが非常に難しいこと。
この姿で活動するのはおそらく難しい。
次にグルン。
ゾンビをベースにグルンの耳や爪、牙に毛をつけていくだけだからこれも楽だった。
どちらかというと人間を素体にした改造人間にしか見えない。狼系の獣人族とは、何か違和感を感じる。
「お邪魔しまーす!」
ダァンと大きく扉を開ける音と、玄関から大声を張り上げるネメの声が地下からでもハッキリと聞こえた。寧ろうるさいくらいだ。
まぁおそらく、目的は僕な訳で...飛び降りるように梯子を降りてきたわけだ。
「あれ?」
多少は服を脱ぐのは当たり前だ、だって姿形を確認しているのだから。とはいっても、精々が上の服を脱ぐ程度。
そこでネメは、部屋に放置された服を見て、微妙な顔を隠さずに僕に言ってきた。
「ここに置いとかないで、洗わないとダメだよ?」
余計なお世話でしかない。
無論、数日おきに洗ってるとも。しかし換えはないので使い回しであるが、その上、乾いてないまま着てるのも本当ではある。
ひとまず、検証は後回し。今は後始末をしたあとに着替えでもしよう。
ネメを一階に向かわせて、服を着たら僕も一階に戻る。ローブも元に戻しておかないと。
「ネメ?どうしたの?」
来てすぐに聞こえる今日初めて聞いた声。慌ててローブを纏う。すぐにローブで体が隠れる。だが急いでいたからちゃんと着れず、フードだけ被って急いでローブの紐を結ぼうとしている格好だった。
後ろから梯子を降りる音が二人分聞こえる。
「もういいよね?」
もちろん僕は反応できず、むしろ焦って余計に紐を結べていない。
「あ、ロウ此処であったが百年目!気になるローブの中を見せなさい!」
「あ!ちょっと!」
抵抗むなしくテオにローブをはぎ取られた。
「え?」
経験値
オーク 24