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夢見の亡者  作者:
第一章
5/37

僕の新たな課題

最近話が飛びすぎなんだ...。

 僕はゾンビだ。名前はロウ・カナティス。故郷は知らない、覚えてない。どこかも知らない洞窟に住んでいたけど、何故かコボルトのヤムさんにお願いされてコボルト達の集落に住んでいる。仕事は集落の良し悪しを調べて改善策を出すこと。


 コボルトの集落に来てから大分たった。正確に言えば2ヶ月と4日だ。集落での生活にも大分慣れた。元々、村みたいな生活は慣れていたのかもしれない。だがそれは別段気にしてはない。


 この大体2ヶ月間に、集落は結構様変わりした。

 集落を囲むように堀と柵が完成して、物見櫓も完成した。集落を増築するときは、柵は撤去するなり放置するなりして、堀は水を流して池にするのが良いと思う。

 それから、衛生面も良くなった。病気の数も大分減ったらしい。


 それより、全く関係ないけども知り合いは大婆とヤムさんとヴォル爺だけだ。なんで増えないのだろう?ま、気にする事もない。


 それから、ヴォル爺にお願いした仮面はまだできていない。大婆に頼まれた仮面作成に、大分時間を取ってるみたいだから僕の頼みはそっと仕舞っておこう。


 それから、これはあんまり関係無いけども、家の配置を変えた。遊び気分で思考誤差しながら偽装作業をしていた。誰かが居るように見せるための偽装と、地下の入口を隠すための偽装だ。


 で、現在こんなこと考えてるのはやることがないから。ヤムさんは何処にいるか知らないし、大婆は僕の言った改善策をやろうとしてるから無理。ヴォル爺は三百に渡る仮面作成で忙しい。

 みんな忙しいのだ。でも、僕はやることがない。だから暇だ。


 いや、訓練だとかを持ってこれば他にも幾つか出来るのだけれども。ユニークスキルの使い勝手の確認は大分ほったらかしちゃった、というか忘れていたし。特に、まだ一回も使ったことがない角形(キューブ)は気になる。使ってみようか。


「gyuugu」


 もう聞き慣れてしまった不快な声と共に、手のひらから緑色の半透明の粒が少しずつ出てくる。

 一秒ずつ粒が出てるのかな。五十秒位の時間をかけて、半透明の緑色の小さな四角形が現れた。

 MPを1消費している。強度は湿った土を固めたぐらい。大きさは1立方cm程かな。


 試しに、四角形に向かって消えろと念じる。

 すると、緑色の淡い光を漂わせながら、消えていった。

 どうやら、常時魔力消費型ではないみたい。それから、念じれば一瞬で消えるらしい。そして、消えるときに半透明の緑色の粒子がふっと消える。魔力の塊が固まってて、それが元に戻るみたいなかんじかな?


 確認は終わった。あまり使い道が思いつかないスキルだったなぁ。さて、何のためのスキルなのかね?


 ああそうだ。強度の確認はしたのに壊せれるのかどうかは調べてないや。もう一度作成。今度は二つ作ろうかな。

 ...まず、一つ目は握って潰せれるかどうか。次に、火魔法をぶつけてみようかな。


 さあ握ってみよう。...手から零れる淡い緑色の光、手にあった感触も今はない。どうやら消えるらしい。

 では燃やしてみよう。...徐々に溶けて淡い緑色の光をあげて無くなった。


 これは、いよいよ使い道の分からないスキルだな。


 スキルの確認も思いつく限り終わらせた。さあ、次は何をしよう?

 ...そうだ、スケルトンの体にも慣れてておこう。あまり使わないからね。


 スケルトンは骨だけで体を構成してるから、衝撃に弱いんだよね。変わりに動きは速い。骨は余分な肉が付いてないからだと思う。防御が低いのはその余分な肉が身体を守っていたからなのかな?でも太ってる人は自分の重さで骨を痛めつけてるから。あれ?こんなのどこでしったんだ?まあどうせ僕の知らない過去に知ったんだろう。


 さてスケルトンに変身。


 身体の肉が、毛が、骨以外が胸の中心にある核とも言えるだろう人魂に集まり消えていく。

 さてなってもやることは特に思いつかないから、取り敢えず剣を持って素振り。


ブン ブン 


 剣の重さに振り回されるのがわかる。ゾンビでも同じだ。感覚は、大体同じ。段々と風切り音が良く成ってきた。とにかくこれを続ける。 身体を鍛えるとLVが上がってなくとも、ステータスが上昇することも、思い出したことの一つだ。


 かれこれ昼から夕暮れ時まで素振りを続いてみたが、疲れが出ない。こないだは、日の光に当たって死にかけていたけども。本当に疲れがないのか、これも調べないといけないね。


 とにかく今日は、ヴォル爺も居ないことだし、やれる限りスケルトンとゾンビを交代しながら、キューブも使って素振りでもしていよう。




とあるコボルト視点


 ごく普通な、と言ってもこの集落にとっての一般的な家屋で、わたしは母さんに頼み事をしていた。


「母さん、お願い!最近集落に来たらしい人に会わせて!わたし気になるの!」

「そう言ってもねぇ。大婆様の命令だからねぇ」


 母さんは苦笑混じりの笑顔で笑いかける。もう見慣れた笑顔だ。


 わたしが今、わざわざ母さんに許可を取ってまで会いに行ってみたいのには訳がある。

 大体2ヶ月程前、もう誰も住んでない家屋に、引っ越して来た人がいた。でも、集落の長である大婆様が誰も会ってはいけないだなんて、言うものでみんな気になってる。

 しかも、集落で腕ぷっしが一番と言っても良いようなヤムさんを番人に置いておくこともしばしば有ったのも、原因の一つだろう。そんなにしてまで何を隠したいのか、みんなが不思議がってた。


 そんなまま2ヶ月も経てば、自然と爆発するのは時間の問題だと思う。実際に、気になって覗きに向かった子ども達がヤムさんに捕まって説教を受けたらしい。


「お願い!私は外のお話を聴いてみたいの!」


 何度言っても遠まわしにダメと言うだけの母さんに肩を落とす。私の強い思いは、母さんには響かなかったらしい。


「...じゃあ、良い。散歩に行って来ます」

「いってらしゃい」


 自分の分の仕事が終わった後の散歩は好きだ。気分が良くなる。それに、みんなの笑顔を見るのが嬉しい。


 それから、散歩ついでにヤムさんに薫製肉でも貰おうかな。ヤムさんは猟と薫製肉を作って生計を立ててるから、薫製肉は美味しい。人に出すためだから当たり前かもしれないけども。


 ヤムさんは槍の使い手で、集落で1、2を争う強い人。優しくて聡明で格好いい人だから、凄い人気。まだ誰とも番になってないから、ていうのも理由かも。


 ああそうだ、ヤムさんの家の近くが、その空き家だった筈!遠目から覗くだけならきっと大丈夫。後で行ってみよう。


「ん?やあ、ネメじゃないか。そんなにはしゃいで。随分ご機嫌だな」

「あれ、ヤムさん?どうしてここに?」

「たまたま通りかかっただけだ」


 少し気分が良くて、表情や態度にでてたのかな。なんだか恥ずかしい。でも、笑ってわたしを見るヤムさんが何だか子供扱いしているように見えて、少し腹が立った。


「そうだ。今、ヤムさんは薫製肉持ってない?」

「ああ、持ってるぞ。要るか?」

「うん。えっと...」


 欲しいと直ぐに言ったは良いものの、肝心の対価を忘れていた。生憎と今は手ぶらで、交換できそうなものは無い。


「仕方ないな。次会った時に、払ってくれ」

「ありがとう!」


 ヤムさんの腰に提げられていた鞄の中から、薫製肉を手渡される。好意で薫製肉を恵んでくれた。ありがたいありがたい。


「そうだ、ヤムさんって引っ越して来た人について、何か知ってる?」


 話を聞くくらいなら、きっと文句は言われない筈。それくらいなら、誰だって別に良いと言うに決まってる。


「ああ、知ってるぞ」

「本当!で、どんな感じなの?」


 魔族と言っても沢山いる。私達のような純血の魔族もいれば、混血によって生まれた新しい種族も、混ざりまくって血の原型を留めていない魔族だっている。楽しみだな。


「いや、詳細は大婆様に口止めされててな」


 苦笑しながらヤムさんが私の頭を撫でる。いつもなら笑って返せるけども、やっと知れると思ったのにお預けくらっちゃ、機嫌も悪くなる。


「良いでしょ、教えてよ!」


 久し振りに食い下がった私に、ヤムさんが少し驚きながら顔をしかめる。


「と言われててもだなぁ...」

「少しでいいの、お願い!」


 槍を肩に乗せながら、立ち止まるヤムさん。困らせてるのは分かってるけども、食い下がるのも嫌だ。ヤムさん以外だと誰が知ってるか分からない。手当たり次第に聞くのは少し...。


「仕方ないな...」

「ありがとう!」


 私に微笑んみながら、肩に置いた槍を手に戻すヤムさん。笑ったり動く仕草が人気なのは知ってるのかな?


「この間あそこに越してきた来たのは、一名と一匹だ」

「一名一匹...」


 調教師の方かな?連れてるものによっては集落に特色でもできるのかな?


「一匹は活性脳グースのグロント・ディエカルリザードだ」


グロント・ディエカルリザード?なんだろう、その魔物?聞いたことがないや。


「ねえ、グロント・ディエカルリザードって、なに?」

「ディエカルリザードは隠れるのと逃げるのが得意な魔獣で、グロント・ディエカルリザードはその進化種だ。危害は殆どない。低級魔蟲ていきゅうまちゅうを食し、木や石、魔物の皮を使って仮面を作る。その仮面は美しいうえに丈夫なことから人気だ。しかも進化種は滅多にお目にかかれないからな、進化前でも人気なのにどれほどのものなのか...」

「へえ、そうなんだ」


 危害がない魔獣かぁ。みんなそうだったら良いのに。


「もう一名は少年だ。辺境にでも住んでたのかもしれないが、色々なことを知っている。最近みんなが色んな物を作ってるだろ?全て彼の案だ。何時も不気味な子だが、理知的な少年だ」


 少年、男の子か。いくつなのかな?私は17歳だから、何歳年下に成るんだろう?弟が出来た気分になるのかな?私が一番下だから、それはそれで嬉しいかも。


「ねえ、ヤムさん!私、その子に会ってみたい!」

「駄目だ。大婆様から聞いただろう?会ってはならぬと」


 確かに言われた。みんな集めて普段よりも厳格に言ったから表立って破ろうとしてる人はいないと思う。


「だから知りたいの。なんで会っちゃ駄目なの?」

「...大婆様か先程言ったグロント・ディエカルリザードがいなければ話ができんのだよ」


 ...話が出来ない?恥ずかしがり屋なのかな?何だか可愛らしい様に見えてきた。


「大丈夫!恥ずかしがり屋さんでもきちんと喋れるように...」

「違う、そもそも喋れんのだ。恥ずかしがり屋でも何でもないんだ」

「え?」


 喋れない...?恥ずかしがり屋とかじゃなくて?口の構造?いや、ヤムさんの態度から何かの忌み子?


「...すまない。聞かせるような話じゃなかったな。忘れてくれ」

「ううん。ヤムさんは悪くないよ。それじゃ私、行くね」


 ヤムさんが何だか精神的に疲れてる様に見えるのって、始めて見たかも。そんなに手の焼ける子なのかな。


 でも、駄目と言われたらそれをやりたくなるのが私の性というもの。これは見に行くしか無いよね!




 さて、そろそろかな?


 一般的な一軒家、それに赤い旗が一本立ててある。前から合ったから、多分前の住民の趣味か何かだろう。

 あんなにヤムさんが見せたくなかったのに、玄関には誰もいない。むしろ鍵も開いてる。ここまでお膳立てされてるなら、入るしか無いだろう。


「...お邪魔しまぁす」


 小さな声で、一応ちゃんと言った。部屋は三つだけかな。右、真っ直ぐ、左に短い通路が見える。ここは右から順番に行こうかな。


「ここは、台所?」


 小さなスペースに、一回も使われた形跡のない調理器具だとか、まな板とか、沢山積まれた薪とかが所狭しと並べられている。生臭かったりだとかの匂いもしない。

 前の住民さんは、一回も使ってなかったのかな?いや、でも新しく来た方も使ってないのかな?


「おつぎは真っ直ぐぅ。こちらは、居間?なのかな?」


 小さな机が真ん中に合って、端っこには藁の寝床がある。それから、大きめの箱、武器立てが置いてある。それ以外なにも置いてない。


 なんとも置くものが少ない質素な部屋だなぁ、だなんて思いながら部屋を見渡す。多少スペースがあるんだから、棚ぐらい置けばいいと思うけどなぁ。


「...gagye?」

「ひぇ!?」


 部屋を見渡していたら、後ろから何とも聞くに耐えない変な声が聞こえて、私は驚いて上擦った声を出してしまった、


 聞いたこともない言語の前に、嗄れたような掠れた声では意志の疎通もまともにできないのではだなんて思ってしまった。その言葉は、一度だけ聴いたことがある、どこかの国の人語とも違う。もちろん魔族語でもない。


「nazegohomi?」

「!?」


 恐る恐る振り返った私は、目前のその姿を見て息をのんだ。


 血よりも赤いとさえ思えてしまう程真っ赤な髪の毛で、なんと後ろ髪は腰周りまでだだくさに伸びている。しかも前髪が長すぎるせいで、左目が髪の毛で隠れて、残る、黒よりの赤い右目の印象が際だっている。

 そしてその顔は、魔族である私から見ても可愛く、男の子にも女の子にも見える中性的だった。

 まともに外には出ないのか、病弱にすら見える青白い肌は、魚人マーマンにも通じるところがあるかもしれない。

 年齢は、五、六歳だろうか、小さな体である事や、青白い肌も合わさって今にも消えてしまいそうだ。

 服装は、私たちコボルトのような、大事な部分だけ隠す服とは違う。二の腕から手まで以外はボロボロになった服に覆われていて、同じくボロボロの靴。


 その姿は、明らかに人間。次に可能性が有るとすれば、妖精族たちか魔族の吸血鬼あたりだろう。


 私たちは魔族で、人族や獣人族、妖精族とは違う。とはいえど、彼等と価値観はそうあまり変わらないと思う。だから、私がこの子の容姿が可愛らしいと思うのは、何も魔族だろうが何だろうが恥ずべき事でも何でもない。


 私は昔から色んな人達に可愛いと言われてきた。だから、自分が可愛らしい見た目である事を多少は理解している。

 しかし、私に向かって皆が言う可愛さは多分元気な所が絡んでくると思う。でも、この子は儚げな可愛さ、とでもいえそうな可愛さだと思う。


 それでも。それでも私は、決してこの子を可愛いだなんて、例えば私の頭が破裂したって思う事はできないと思う。


 何故か。それは彼の状態が問題だった。


 服に付着している、潰れた果実のように広がる赤黒い模様は、何らかの水分が乾いて残ったようだ。なのに、髪の毛は不自然に綺麗だ。手入れ一つすらされていないのに、髪の毛には気を使っているように見える所の、何ともちぐはぐな部分がある。

 そして、その小さな手には、その小さな体に全く持って不釣り合いな剣が握られている。体格の問題で大きく見えても、片手で持てる程の小ささで、長いナイフと言っても通用しそうだ。この剣にも、赤黒い何かがこびりついていた。


しかし、それらはどうでもいい。それらよりも目を引くのは、無理矢理張り付けたように接合された、継ぎ接ぎの肌。首、手、足等様々な場所に。


 片手に剣をもち、表情の消えた暗い顔で私を見る。構えるでもなく、鞘に手を置いて何時でも抜けるようにしてあるわけでもない。ただ、抜き身のまま重さ引きずられて歩く様は、幽鬼のそれだった。


 怖い。ただただ、そう思った。

 きっと、こいつはこの世のものではないんだ。私は...私はちょっと家に入っただけだから。何に悪いことはしてないから。


 悲鳴を上げて、今すぐ助けを呼びたかったけど、なぜか声が出ない。かわりに掠れた声が喉から漏れた。すぐに、すぐに逃げなきゃ。


「gare...?」


 何か言っているが、生憎意味が分からない。そんなことよりも逃げなきゃ。逃げれそうな場所...居間の小窓は、小さくてあそこからは逃げられないだろう。唯一逃げれるのは、化け物の後ろにある扉だけ。


「bamunoyou...?」


 恐怖を感じると、焦って判断が鈍ってしまうと思っていたけども、却って冷静になるかもしれない。


「gaffe」


 冷静でいながら焦る私に、怪物がまた何か言葉を発した。よくわからない言葉と、それと同時にのばされる手。その仕草が、肉親に手を伸ばす無邪気な子供と重なった。

 一度そう思えてくると、もう私にはそうとしか思えなかった。


「な、なんなの?待ってって、そう言ったの?」


 怪物は無表情に立止まって、片手に持つ剣の重さに引きずられてふらふら揺れながらこっちをじっと見つめてくる。ヤムさんの言った不気味の意味は、きっと無垢だからこその不気味さなんだろう。


「...」

「ねえ、なにか言ってよ」

「...fante?」

「え?」


 相も変わらずよくわからない言葉を発する怪物に、さっきとはまた違った怖さを感じた。しっかり言えば、反応がよくわからないということに。


「...ネメ?何故ここにいるのだ、来ちゃいけないだと言っただろう!」


 ヤムさんの声!

 閉められていた扉が開かれる音がして、馴染み深い男性の声にホッと安堵する。

 それと同時に、咳止められていた緊張感が緩んで、眦から涙が込み上げてくる。


「...う、うぇ...ヤムさぁん」

「ね、ネメ?どうしたのだ?まさかロウ、何かしたのか!?」


 この世の者とは思えない怪物、ロウはこっちをじっと見つめるだけ。首を傾げる動作が加わっただけだ。


「...ああ、そうか。ロウは魔族語がえ分からないんだったか」

「...?」




ロウ視点


 ちょっとまだ何が何だか、だよ。お願いだから少し待ってほしい。

 え、誰?本当に誰なの?一人で素振りしてたら、茶色の毛並みのコボルトが来て、次にヤムさんも来て、コボルトが泣いちゃって、ヤムさんが怒鳴って、一人で理解して。ちょっと追い付かない。


 理解が追いつかない。本格的に言語について学ばなきゃ。


「τπρ」


 意味が分からない。身振り手振りさえも無いから何を伝えたいのか理解もできない。




 それから何時間か経つけど、ヴォル爺と大婆が来るまでこの体制を続けた。お互いに一言も言葉を発しなかった。僕も、この声は何だか嫌いだし、怖がってたから黙ってた。


『入るぞ』


 大婆の声だ。これで何がどうしたのか分かるはず。ついでにこの事にも終わる、はず。


「οξμλ?」

「τλπι」

「...」


 大婆がヤムさんに何か質問して、ヤムさんがそれに答えた。コボルトは黙りのまま、震えてる。

 この状況、きっと僕以外は理解してるんだろうな。


『ふむ、ロウ。この娘を睨んだのは本当か?』


 粗方話を聞き終わったのか、僕に話を振ってくる。

 はてさて睨んだとは一体?見つめこそはしたけど、睨んだつもりは無いけれど。


『はぁ』


 大婆が溜め息を吐いて、今度は魔族語でコボルト達と話をする。きっと後で何を話したのか教えてくれると思う。


『...ふむ、ではロウ。儂が二人の言いたいこと訳するぞ』


 要約すると、コボルトはネメって言う女の子で、引っ越してきた僕に気になって会いに来たとのこと。ついでに、どうして会っちゃいけないのか分からなかったからっていうのも、興味がでた一因らしい。それでみんなの制止を振り切って会いに来たとか。


 何ともまぁ大胆不敵な事で。元気の有り余る事。


『とまあこんな事だが、ロウ。お前はネメに、何か言いたいことはあるか?』


 特には何も無いかな。好奇心が強いことは僕もわかるしね。


「...κδ?」

「Ωπαβ!」

『ほう。ロウ、お前に質問じゃと』


 質問?何とも立ち直りがお早い事で。さっきまでヤムさんの後ろでガタガタ震えてたのに。僕の説明を聞いたからなのか...それだったらもっと怖がってそうだな。聞いた上で尚その態度何だろうから、凄い精神力をしてらっしゃるかもしれない。


『ネメが、集落の外について聞きたいらしい。具体的には、そうだな...人間の村落についてなど』


 集落の外ね。村落ねぇ。そんな説明が要るような物なんて無いだろうけどね。

 ...強いて言うなら、自然の掟、だとかがあったかな。


『自然の掟?』


 自然の掟。何個かの教えについて書かれた、かなり古い自然についての書物だったけかな。当日はもの凄く共感されて、複写も何回もされて売り出されてきたらしい。

 まぁ、そんな複写でもされてたら、魔族にも渡ってそうだけどね。


『儂はそんな書物に関して聞いた覚えは無いがな』


 別に魔族の村落と対して大差は無いと思うけどもね。

 大婆は、それを二人に伝える。念話で分かるのは使ってる本人の言葉だけらしいからね。


『では次の質問だ。ロウはゾンビと聞いたが、何故そんなに綺麗な状態なのだ?』


 知らない。そんなこと知りたくもない。生活魔法のクリーンを使ってるからじゃないかな。


『そうか、そうか知らないか』


 そうだ。大婆にお願いを一つ、良いかな。


『む、お願いとな?』


 そう。言語について。魔族語を教えてほしい。魔族語の文字を覚えれば、意志の疎通が二人を頼らないでもできるから。


『魔族語か...。たしかに覚えたほうがこれからが楽だろうな。だが、この集落では文字をあまり使わないからな』


 使わないかぁ。それじゃあいいや。覚える必要が無い。


『む?何故儂やヴォルに頼まない』


 大婆やヴォル爺は忙しいから。大婆は、何か設計図を作ってるってヴォル爺から聞いたし。ヴォル爺は頑張って仮面作ってるし。それだけだよ?


『そうかそうか。ならついだ。ネメとヤムにも魔族語を覚えさせるか』


 二人が揃って大婆を見る。二人ともする事は特に無い、暇人なのかな?

 でも、二人に教えるのは嬉しいな。何が言いたいか分かるから。


『そうだな...明日から開いた時間に来て、魔族語を教えるとしよう。投げ出すのは許さないぞ?』


 ありがとう、大婆。助かったよ。


「αγκ...」

「μΙΩ」


 その後ろで、二人が微妙な顔をしてた。頑張れ。

集落は基本物々交換です

ネメが言った忌み子の定義は、障害者だとかを指しています


フライハンド 4

ゲル 2

グルン 4

ベグィ・マミー 6

ドレインマーノ 3

フレイムレッグ 3

ゾンビフット 2

ストーンアーム 4

ポイズンブルート 2

フリーズブレス 3

レディラ 3

ジャッカロープ 3

マタンゴ 5

ロェン 6

バリアン・ラスキー 2

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