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菊池展開4

無数の玉が体に当たって、俺の体は穴ぼこ……にはならなかった。

 無傷だった。

「やっぱり、平気なんだ」

 さっき、進藤先輩がわき腹ぶつけても平気そうだったのはこういうことか。無限の回復力。これも異空間内での特徴らしい。

「あーあ、やっちゃった。しらないよーもー」

 桜田先輩はため息をついた。何にだろう。無茶しやがってってことか。

 桜田先輩は突然悩みこむ。

「無理やりタローさんを奪いたいけど、うーん私じゃ無理。あっちゃんパス」

 あっちゃんというのは部長のことだ。

 パスって何のことだ。

「おまたせ」

 いきなりだった。いつの間にかそこにいた。

 俺の右隣に部長がいた。長峰先輩が決めポーズ付きで目をキラキラさせながらやってきた。

「君ごと燃やせば問題ない」

 そういって、拳銃をつき立てられた。ヤバイ。俺はしゃがんだ。

 炎が繰り出された。急いで避けた。壁にへたり込んだ。が、急いで立ち上がって、とりあえず前方へただひたすら無心で走った。

 そりゃそうだ。今度こそ当たったら死ぬだろうから。

 桜田先輩の紙はなんとかなった。でも、アレは無理だ。

 長峰先輩の炎は多分回復しない。なぜなら、俺の制服の端は今も焼けたままだからだ。 

「パワーバランスですか」

 長峰先輩のは威力と影響力が違うんだ。きっと他の誰よりも殺傷力のある能力。

「やっぱり部長は強くないとね。じゃあ、千代田君後は頼んだよ」

 え、千代田どこ行った。

「つっかまえた」

 正面から千代田に抱きしめられた。

 え、前に人なんていたっけ。

 左右の先輩方に気を取られて訳が分からなくなっていた。いや、でも、まさか千代田だけ先回りしていたとは。

「かわいい顔して、すごいことするんだな菊池」

「人の頬をつまみながらいう言葉かよ」

 子供をあやすような目で俺を見るな。吐き気がする。

 というか、俺はこいつに負けたのか。

「柔らかい」

「触るな。ぼけ」

 若干汗臭いんだよ、離れろやろう。

「いや、何やってるの千代田君。早くしないと――」

 そんな時だった。



「――終わりんのーーーーーーーーー」

 腹の辺りからそんな声がした。


「終わっちゃったじゃないの馬鹿がアアアア」

 何がなんだかわからないけれど、長峰先輩がキレた。

 あ、なるほど。終了時間があったのか。

 腕時計を見た。よくは覚えていないがおそらく一時間くらい経っていたらしい。

 試合終了。ということはこれは俺の勝ちか。

「やべえな菊池、皆負けたぞ」

「いや、俺は勝ってるから、ってかちょっともう触るの止めてくんないってんぎゃあああああああ」

 痛い痛い痛い。何え、全身が痛い。特に背中が、腕が、いたああああああああ。


「あ、フィードバック来たんだ」

 長峰先輩がサラッと言った。

「何で言ってくれなかったんですか長峰先輩」

「私はいったよー。菊池くん」

 そういえば言っていたような気もする。

 うげぇえ、桜田先輩の攻撃の痛みがいまさら来たのか。おいおい、こんなことならよければよかった。それくらいの余裕はあった。ああ、もう俺の馬鹿。

「いてええええええ」

 何故か隣で大泣きしてる男子がいた。

「何でお前まで痛がるんだ千代田」

「部室から出てくる時、足の小指ぶつけた……」

「馬鹿だろお前」オープニングで負傷してどうする。

 


 部室に戻ると反省会が始まった。

 今回の負傷者は私と千代田。あと人知れずわき腹を色々やってしまった元クール、進藤先輩だった。

「死ぬかと思った」

 すみませんでした、進藤先輩。出来る限り謝った。

「もうこれだから男共は、フィードバックぐらい覚えときなさいよ」

「いや、長峰先輩教えてくれませんでしたよ」

「言ったよ、夢の中で」

 長峰先輩、それ言ったことに入りません。睨むと先輩はうろたえた。

「と、ともかく、今日のタローさんは終了。今回は君の勝利……だよね多分」

 指差されていわれてもなあ。

「多分ですけど」

 アレを守ったといえるのならだ。最終的には負けたが、羞恥心的にもいろんな面で。

「お前自分のこと『俺』って言ってたよな」

「うるさい黙れ千代田喋るな触るな気持ち悪い」

「それ黙れって二回言ったことにならないか」

「はい、黙りなさい後輩たち」

 長峰先輩は髪をかきあげる。

「で、どうだった二人とも」

 感想を聞かれても、言い返しが思い浮かばない。すると、千代田ははいはーいっと元気よく手を挙げ。

「楽しかったです」軽っ。

 って次は私か。無難無難。

「私も……まあまあですかね」

 そこで、千代田が私に戻ってるっと言ったので。わき腹に拳をクリーンヒットさせた。もだえる千代田。

「でさ、菊池君、ご褒美何にしたのー」

 桜田先輩が笑っていった。何それ。

「タローさんに聞かれなかったかな。タローさんもう帰っちゃったんだけど」

 タローは知らないうちにいなくなっていた。

 

 ちなみに、校舎は私たちが部室に帰ったとたん、いつもどおりに戻った。

 生徒たちの話し声、グラウンドはいつもどおり野球部が占拠していたし、日常が帰ってきた。


「実感とかないの」

 部長にたずねるようにいわれた。

「無いですよ。そんなの」

 走って疲れて、何がしたいんだろうか。知るか。

 でも、まあ。

「明日もするんですか」

「そのつもりよ」

 大真面目に言われた。長峰先輩は子供のように天真爛漫で、なんだか羨ましく思えた。


「――おもしろそうでいいですね」

 長峰先輩に向かって、つい笑ってしまった。


 先輩は何を見てしまったんだろうか、呆然とした感じで……先輩?

「あ、あ、うん。そうね。そうよ。明日も頑張りましょう」

 じゃあ、円陣でも組みましょう。

 長峰先輩の提案に全員がのった。

「じゃあ、行くわよ。明日も頑張りましょう」

 こうして、タロー探し初日が終わった。長くて短い物語のプロローグが。

「えいえい、おーーーー」 


 そして、全員でオーといいながら足を踏み込んだ。

 

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