夏編 「夕暮れ時」
「私は、今宵をもって七曜を引退しようと思う!!」
弱い明かりを灯した月を背にして、私の親友は胸を張り、堂々と宣言した。
私はそれに唖然として何も言えなくなる。
「気でも狂ったのか。…いや、元から、か。」
そんな双子の弟の冷たい言葉が遠く響いていた。
......................................................
「わ、たしに…相談もなしに辞めるなんてぇええええ!! うわああああんっ!!」
私は酒の入ったジョッキ片手に目の前の銀色を掴んだ。
「痛っててててて!? 夏さんそれ俺の頭!! 髪!!」
「シルバーくーん!! 酷いと思わないっ!!」
シルバリオと言う名の銀髪の青年の頭を思いっきり引っ掴みながら訊ねる。
彼は大体皆からシルバーと呼ばれている。
彼は掴まれた髪を抑えている。痛そう。
「酷いって言うか…多分、月宮も何か考えてるんじゃないスか。相談しなかったのは、出来なかったから、とか。」
そこで私はハッとする。
シルバーは意外と鋭い(多分)思考回路をしている…と思う。
だから私は酒で朦朧とする頭でめいいっぱいシルバーを褒めてあげた。
「シルバーしゅごーいねーっ!!」
「頭わしゃわしゃすんな!! ちょっ…マジで酒臭い…ナスタティウム!! 助けろ!! あっ、そっと目を逸らすな!! フロックス!! 苦笑いすんな!!」
照れ臭いのか暴れているシルバーを押さえ付けて頭をわしゃわしゃと撫で続ける。
ぴょんぴょん跳ねている彼の髪は意外とふわふわとした触り心地で気持ちいい。
見た目は硬いイメージなのだが。
「ちょっと…マジで…話せこのっ…保護者!! 春人呼んで来い!!」
シルバーの春人コールに代わりにフロックスが答える。
苦笑いのまま。
「春人なら月宮を叱っていたぞ?」
と。
それを聞いた途端、シルバーは一時停止し。
「なんでこの組織の古参は春人さん以外頭おかしい奴ばっかりなんだああああああああっ!!」
と、叫んだ。
その後、全く動かなくなる。
ナスタティウムがそっと、両手を合わせた。
シルバーが静かになって面白くなくなったので放置し、少し皆から離れて呟く。
「多分、月宮ちゃんは苦労してるはず…親友の私が支えてあげないと。」
月宮 楪
七曜のリーダー(?)・親友
弟を一緒に助けてくれると言ってくれた人。
「月宮ちゃん。私の親友。」




