明るい風
「では、王様とこのお嬢ちゃんの旅の1日目の終了を祝して!カンパ〜イ‼︎」
「「「「カンパ〜イ‼︎」」」」
そう言って始まってしまった宴会は私の1日を終えさせてくれなかった。
あの事件の収拾をペルセさんがつけ、今現在、村の小さな集会所で、宴会が始まった言ったところだ。
「嬢ちゃんどうだった?旅人生活1日目ってのは」
「楽しかったです!とにかく今日は色々あって本当に楽しかったですよ!」
「そういえば、ペルセ様もかっこよかったなぁ〜、俺も若いころはあんな感じにビュビューン!って感じで駆け回って…」
「嘘つけぇ!お前は若いころから、その嘘が絶えないやつで、村中で有名だっただろうがぁ」
「テメェ、やんのか⁉︎俺の拳が轟くぞ⁉︎」
「あぁ、上等だおいテメェこそ、俺の蹴り喰らいたいのか⁉︎おい!」
「ちょっ!喧嘩は駄目ですよ〜‼︎」
「いいんだよ〜ほっとけほっとけ!マイちゃんは気にしなくていいから楽しみな!」
「あ、ありがとうございます?」
こんな感じで皆楽しそうである、それはそうと、みたところペルセさんが見当たらない、どこへ行ったのだろうか、中を見たがいなかった、ふと窓を見るとそこにはペルセさんらしき、いやペルセさんに違いない姿が見えた。
外へ出ると、あたりはほんのりと集会所の光に照らされ、それでいて空には綺麗な星空が雲ひとつとなく広がっていた、様々な星が我こそはと言わんばかりに、ひとつひとつが自分の光を発している、そんな中ペルセさんは一人その星空を眺めていた。
私がいることに気づき、ペルセさんは私に話しかけてきた。
「今日は散々じゃなかったか?あんなやつに出会うなんて、初日としては最悪だなぁ」
「いいえ、そんなこともないですよ、あんなことが最初にあってこそ知れることもありますから
「そうか、まぁそれなら良かったな!俺も、マイくらいの同世代の子と会えて良かったよ!」
「そ、そうですか⁉︎……それなら私も、私も良かった……です」
少し、いや結構照れ気味で私はそう言った。
「そういえば、ペルセさんの武器って、エクスカ……って今思ったけど、ペルセさん!エクスカリバーって、あのエクスカリバーですか⁉︎」
私がここまで驚くのも仕方ないのである。ある有名な話、アーサー王という王が魔物に苦しむ人々を助け、魔王をも倒したという話、その王の剣の名がエクスカリバーである。
「えっ?あっ、うん、そうみたいだ実際本当にそうなのかは微妙なんだがな…」
「そうなんですか?」
「あぁ、なんたって最初に浮かんだのが”諸刃の剣”エクスカリバーだったんだ」
「浮かんだ?……あぁ、思い出しました。自分の武器は自分と共に成長し、そして、時がくればその言葉、武器の名が頭に浮かぶっていうやつですね。でも、おかしいって言われるとおかしいですね」
そうだ、おかしいのだ、『エクスカリバー』ではなく、『”諸刃の剣”エクスカリバー』なのだから
「まぁなぁ、5歳のころかなぁ突然浮かんで、それから親父に毎日訓練受けさせられてさ……」
「って5歳ですか⁉︎」
そうだ、またおかしい、5歳なのだ。通常であれば武器が生まれ始めるのが5歳程度、それからは、その武器が熟すまでに人それぞれ違うことがある。
だが、5歳で武器が目覚めるのは聞いたことがない、すると考え込んでいる私にペルセさんは少し都合が悪そうにしていた
「でもまぁそれはそうとマイ、その感じからすると、まだないんだよな?自分の武器」
「はい、今は練習用に使っていた槍だけです、まぁそれが慣れてるっていうかなんというか、今となっては大事なものなんですよ…」
少し私は、寂しいような、悲しいような、そんな気持ちが頭に浮かんだ。
「どうしてだ?」
「……ふぇっ⁉︎、あっえぇっとですね」
当然の質問に、ぼうっとしていた私は少し動揺してしまった。
「その…父がいつも、槍の使い方、練習に付き合ってくれててそのときに貰った大切なものなんです。ずっと、使っていて…」
「そうか、だから思い出して…悲しそうな顔するな、今んとこ、まだ全然知らないことが多いが俺がいるから…多分大丈夫だ…」
そう言いながら、ペルセさんは私に笑顔を向けてくれていた。
「…んぷっ、ていうか多分ですか?フフッハハハッ多分じゃなくて、もう少し…確信があった方がいいですよ……フフフッ」
「まぁいいだろう!マイが笑ってくれたんだから!けっ、結果オーライだ!」
ペルセさんの言うことは本当ださっきの気持ちはどこへやら、心地のよい言葉と風にさっきの気持ちは飛ばされていったのだった。