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次の日。
今日は元旦、お正月です。
こんな日からゲームかよって思うけど、午前中に徒歩10分のとこにあるおばあちゃん家に行って、親戚集まって挨拶してお昼食べたらもうやることない。お父さん達はまだお酒飲んでるけど、つまらないから帰ってきちゃった。ときたらやることはゲームしかないでしょう。……私もなんだかんだ言ってゲーム漬けの生活が身に染みてきてしまったな。いや、今更か。
ということでログインしたら運営からメールが来ていた。
なんとお年玉アイテムとしてスキルチケット5枚貰った。3日までは1日ログインするごとにお年玉アイテムがもらえるらしい。ラッキー。
「親方!全部揃いました!」
さっそく船組み立ての為親方のところへやってきた。
組み立てってどのくらいかかるのやら……。
「おう、聞いてるぜ。頑張ってたみたいじぇねーか!んじゃ最後だ。組み立てに……そういや一つ忘れてたな。船を作る時の、核となるもんを取ってきてもらいたいんだった。シアにいるルトシアって奴から“風の魔道具”を受け取ってきてくれ。注文してあるから俺からっていえば受け取れるようになってるからよ」
「わかりました!」
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クエスト
『シアへのお使い』
クエストを受けました
報酬:風の魔道具
クエスト出現条件:造船パーツ完成
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ん?魔道具?
……そういえばサティア様から貰った紹介状まだ見てなかった。
とりあえず親方に挨拶してシアへ転移する。紹介状を開けてみるとそこにはルトシアさんへ紹介する旨が書かれていた。
やっぱり!ってか船に魔道具がいるってことはこれは魔道具作れるようにならないとだね。
紹介状には一緒に地図も挟んであったので、ラッキーと思いながらルトシアさんの工房がある職人街へと向かう。地図通りに進み、1軒の工房へとやってきた。
職人街はお店を開いていない工房がたくさんあり、一見どんな物を作っている工房かわからないところがほとんどだ。この中からルトシアさんを探すとなるとかなり大変だったろうな。サティア様ありがとう!
「こんにちは!ポルトの町の造船所の親方のお使いで来たのですが、ルトシアさんですか?」
「あぁ、風の魔道具だね。出来てるよ……はい、お代は頂いてるから親方によろしく伝えてね」
「ありがとうございます!……あと、これなんですけど……」
「ん?紹介状?」
ルトシアさんに紹介状を渡して読んでもらうと、だんだんと驚いた顔になっていった。
「まさかサティア様からの紹介状を持ってくる子がいるなんて……君も魔女なんだね」
「はい、認めて貰ったばかりですが」
特に魔女としてまだ何かしているわけではないから魔女と言っていいかわからないけどね。
「君は魔道具を作りたいんだね?勿論歓迎するよ!サティア様からの紹介を断る人なんていないと思うけどね」
おぅ、サティア様の名前威力凄すぎです。さすが原子の魔女の名は伊達じゃない。
「あ、でも君、えーとハナさん?でいいのかな?」
紹介状に名前が書いてあったようだが、まだ自己紹介もしていなかった。忘れてた。
「あ、すいません。ハナと言います。よろしくお願いします」
「うん、よろしく。それで、魔道具作りなんだけど、今親方からのお使い中でしょ?それが終わって時間が出来たらまた来てくれれば教えるからね」
「あ、そうですよね。わかりました!また来るのでよろしくお願いします!」
そしてルトシアさんの工房を後にして親方の元へと急いだ。
「親方!風の魔道具持ってきました!」
「おぉ!?やけに早かったな。ルトシアの工房わかりづらくなかったか?」
「あ、別件でルトシアさんの工房までの地図を持っていたので」
「ほぅ……お前さん本当面白いな。職人街の工房は偏屈が多いからたどり着くまでに1日はかかると思ってたんだがな」
そう言って意地悪そうに笑う親方。
まぁ、風の魔道具の料金は親方持ちだから何も言いませんけどね。クエストだしそんな簡単にたどり着くものだとも思ってなかったし!
「クックック……そんな顔すんなよ。何はともあれご苦労だったな。そんじゃぁ最後の仕上げやっちまうか!」
「お願いします!」
そして組み立てが始まった。
まずは千年魔樹で作った角材を中心に魔の木で作った角材で船の枠を組み立てる。その後はしなるように柔らかくした板を枠にそって貼り付けていく。次にスクリューやタリスマンを配置していきロープと帆をとりつけた。最後は色を塗って完成!
言葉にすると簡単だが、組み立てから色塗りまで50時間もかかった。いや、50時間で終わった、と言った方がいいのかな。現実とは仕組みや作りが違うからこんなに簡単にできたんだろうけどね。だって動力が魔道具でこの船MPで動くんだもん。びっくりだよ。
と言っても工房で作業出来るのは8時間までだから、ログイン回数で言ったら7回にも渡り船の組み立てを行ったのだ。いやー、大変だった。
「よく1人で頑張ったな!今までやってきた技術はもうお前さんのもんだ。これからも良い船を作ってくれよな!」
「はい!ありがとうございました!」
次の日。
既に三元日は過ぎ去り冬休みもあと少し。
ちなみに2日目のお年玉はレベルチケットで3日目はお金100000ギルだった。
いや、ありがたい。
でもまだまだ足りないんです。
お金。
ということで今日からはお店中心にやりますかね。
大晦日の時の屋台では石シリーズがかなりいい売り上げになったからね。頑張って売ってお金稼ぎだ!
お店は夜開く予定なので、今日売る予定の品物を作ったらちょっとシアのルトシアさんの工房行ってこようかな。
「こんにちは。ルトシアさんいますか?」
「あぁ、ハナさんいらっしゃい。じゃ、早速だけど始めようか?」
「はい!よろしくお願いします」
そしてルトシアさんについて工房の奥へと進む。
「ではハナさん……ん?ちょっと確認なんだけど道具師のスキルはもしかしてまだ免許皆伝に達していない?」
「あ、そういえば……」
レベルは上がりきっていたけどそのままにしてたな。
「もしかして必要ですか?」
「そうだね。じゃないと魔道具は作れないかな?」
それならば。
〈道具師〉
ーーーーーーーーーー
レベル上限に達しました。SPを使い免許皆伝を取得しますか?
→道具師Lv.☆(SP25)
ーーーーーーーーーー
やっぱり高い……でも必要だから仕方ない。
えいやっ。
「ルトシアさん、これで大丈夫ですか?」
「そうだね、問題ないかな。では動かないでね?」
「はい」
「グローイング」
ルトシアさんが私の顔の前に手をかざし呪文を唱える。
すると目の前にウィンドウが開かれた。
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〈魔道具師〉
SP:20
取得しますか? YES/NO
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まじですか?
さっきSP25も使ったばっかなのに……。
いや、選択肢はYESしかないけども!
んー……これは初めから上位スキルってことなのかな?
必要なSP量半端ないし、“師”ってついてるのは基本スキルにはなかったもんね。
「うん、これでハナさんもお仲間だね。それじゃあ作り方なんだけど……」
魔道具の作り方を教えて貰った。
と言っても結構簡単。
魔道具の核となる魔結晶を嵌める事の出来るものを作るという事。その形はアクセサリーでも武器でも良いらしいけど、細工師や鍛冶師が免許皆伝に至っていない為まだそれらは作れない。そういったものはアクセサリー型の魔道具、武器型の魔道具といったような分類になるらしい。
今回はハンマーを作ってみようという事になった。
まずはハンマーのどの部分に魔結晶をはめ込むのかを決めて設計図を作る。免許皆伝にしてから使えるようになった専用のウィンドウを開いて書いていくようだ。今回はハンマーを元にするので、レシピからハンマーを選ぶと基本となるハンマーの図が現れる。そこに魔結晶をはめ込む穴を追加するように書き込む。フリーハンドなのでガタガタになるかなぁと思ったら、書いたそばから補正され綺麗な曲線が描かれた。この補正は外すこともできるそうだが、ありがたいのでそのままいこう。
設計図が出来たら作成にうつる。
そしてハンマーを作っていくのだが、設計図で穴を開けたのと同じところを繰り抜く作業が追加された。今までならレシピから逸脱したフォルムの大幅なアレンジは出来なかったのだが、今回はすんなり終えることが出来た。
そしてここからが魔道具師の仕事。魔結晶を取り付ける為のマジカルインゴットという金属を、アーツ《ユニオン》を使って溶かし、ハンマーに作ったはめ込む穴に流しこむ。そしてそこに魔結晶を取り付け、アーツ《アドーム》を使う。
これで魔道具は完成だ。
〈魔道具師〉には3つのアーツしか無いみたい。
《ユニオン》が魔道具となるモノと魔結晶を繋ぐ媒介を作るアーツ、《アドーム》が魔道具として誰でも使えるようにするアーツ、最後が《リタッチ》という魔結晶を外すアーツだ。魔結晶には使用回数の制限があるのでそれを取り替える時に使う。はめる時は《アドーム》で付け直すらしい。
このスキルは、レベルに応じて魔道具化出来るものが決まるという。また、免許皆伝を取るまでは既存のレシピに基づくものしか魔道具に出来ないらしい。例えば鍛冶師で免許皆伝を取り、レシピにないような刀を作っても〈魔道具師〉を免許皆伝にしないと魔道具化出来ない、ということだ。