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次の日。
今日は経験値3倍デーらしいので、釣り師レベルをまずはレベル30まで上げようと思う。更にさっそくスキルチケットも使ってしまおう。この機に一気にレベルをあげるのです。
スキルチケットは使うとスキルの取得経験値が倍になるとのことなので、3倍の倍経験値を得ることが出来る。1枚で5時間効果が続くらしい。生産は時間がかかるからこれくらいはないと確かにあまり意味はないかも?リバースポーションなんて1回とちょっとしか作業出来ないし。ま、あれは特殊だけど。
今日はリアルで毎年恒例のクリスマスパーティーが午後からあり、外出予定なので午前中に5時間は消化しておきたいところ。本当はパーティーは24日の予定だったんだけど、メンバーがタクとマリアなのでイベントと被ってるからって理由で今年は25日なったのだ。
現在リアル朝の6時。寝起きからのスタートです。
「よし、釣って釣って釣りまくるぞー!」
「きゅぅ~!」
すぐにシアへ移動して湖にボートを浮かべる。スキルチケットを使用して釣りスタート。
新しく作った釣竿だからか魚モンスター達を逃すことなくどんどん釣り上げる。
今日は晴天でちょっと暑いくらいだけど、水辺だからかわずかにひんやりしていて気持ちがいい。
釣った魚モンスターをまっちゃが倒してまた釣って、と続けていくと……。
「お!目標レベル達成!」
「キェー!」
かなりの速さでレベルが30に到達した。
開始から10時間だからリアルで2時間、ちょうど朝ごはんでログアウトしようと思ってたころなのでタイミングバッチリ。スキルチケット2枚ですんだのも嬉しい。スキルチケットの恩恵は船造りにもとっておきたかったからね。
リアルではそろそろ朝ご飯の時間。ご飯を食べたら次は船造りだ。
一度ログアウトしてご飯を食べ、すぐログイン。
さっそく造船所へとやってきた。
扉の所のウーノさんに挨拶をして、すぐ親方のところまで通して貰った。
「おう!ハナやっときたか!」
「よろしくお願いします!」
「うむ、よく集めてきたな。そんじゃぁお前さんに造船技術を伝授してやろう。船ってのはな、一つ一つのパーツが大事なんだよ。そいつらがしっかり造れんと組み立てなんてできねーんだ。だからお前さんにはそれぞれのパーツが人並みに、そうだな、rankCまで出来るようになったら俺が組み立てを教えてやる。それまでは各スキルを持つ奴らのところで修業だ。必要なもんがそろったらまた声かけな!おい、ウーノ!まずはミケのところだ。つれてってやんな!」
「了解でさぁ!」
そう言うと親方は奥へと行ってしまった。
「んじゃ、ハナ行くぞ!」
「あ、はい!」
ウーノさんに連れられてやってきたのはミケさんという女性のところだった。
「じゃ、頑張んな!」
そしてウーノさんは持ち場へと戻って行ってしまった。
「ハナと言います。よろしくお願いします」
「あぁ、親方から聞いてるよ!ウチのとこは帆やロープをつくってんだ。しっかりやんなよ!」
「はいっ!」
それから帆の織り方とロープの作り方を教えて貰った。
レシピはなく、見て聞いて覚えてといった感じで進めるのだ。レシピないなんて初めてでメモしながら覚えていった。
rankCが出来るまではこの工房の道具を使っていいらしいので助かった。
まずは幻夢の綿を糸に紡いで、その後幻華とスライム魔ゼリーを使って糸をコーティングしていく。その糸で帆を織るのだが、これも糸の通し方だったりが特殊で更に複雑。何度も間違えてはやり直しと繰り返し作っていった。
更にこの糸を何本も合わせて捻って太いロープを作っていく。途中風の雫を取り付けることもあった。
結局ログイン時間内ではものに出来なくてログアウト。夜帰ってきてから修業の再開となった。
そんな日々が続き本日大晦日、3度目のログイン。
やっと全てのパーツをrankCで揃えることが出来た。rankCになるとレシピが取得される仕組みになっていたらしい。でもその頃にはレシピ見なくても作れるようになってたけどね。
今日まで毎日限界までログインして、ひたすら船のパーツ造りをしていた。それぞれに必要なスキルのレベルが低かったので大変だったってのはあるけど、作る量も多かったからそれが一番大変だったかも。
ミケさんの次はクックさんという人が教えてくれた。作ったのは色々な長さ・太さの角材や板。その次はスミさんという人。ここでは土を混ぜての金具造りやスクリューっぽい羽根や舵などの細かいパーツを作った。最後はクニミさんという人で、タリスマンっていうのかな?風の雫を使って作っていった。
いや……大変だった。スキルチケットを使った事もあり、おかげで大幅にスキルのレベルはあがったけども。
で、本当なら次は親方のところへ行って組み立てなんだけど今回はちょっとお出かけ。
今日はリアルでは大晦日。
でもってゲーム内でも大晦日?らしい。1年何カ月なんだと思ったけど、そこらへんは現実のイベントに合わせてるんだろうからスルーで。
この世界での大晦日はカウントダウンパーティーが行われるんだって。って言っても街に屋台が出て皆で騒いでお祝いしようってものらしいんだけどね。
屋台はプレイヤーもNPCも事前に申請していれば出せる。申請すると抽選が行われ屋台を出す位置が決められるみたい。
そこで私も申請してみたのだ。
船も作りたい、けどお金が無いと設備が作れない!……という事でお金稼ぎです。
沢山お薬揃えてきたし、いざとなったら時間短縮で作る用に素材もたくさん集めてきた。それに合成もする旨の看板も用意したのでそれなりに稼げる……と思いたい。
このカウントダウンパーティーはリアルでは大晦日の日の21時から24時までだったりする。ゲーム内時間のその1日だけ屋台を出していいらしい。日付が変わる最後にはカウントダウンをやるらしいので、夜になったらヤトやクオと合流してお店を見て回ったりする予定でゲーム内時間の14時に待ち合わせをしている。クオも屋台を出しているらしいのでお互い頑張って稼ごうということだ。
久しぶりのラピスだ。ここ一週間程造船所にこもってたからお店開く時間なかったんだよね。他にもポーション類を売るお店は出ているのでそこまで稼げるとは思っていないが、まだ品揃え的には負けてはいないと思うのでそこそこの金額はいくんじゃないか、とも思っている。
それに今回は目玉の転移石・結界石・守護石も販売予定だ。しかも転移石のrankAも持ってきた。値段は10000ギルにした。ストーンを作るのは難しくないのでサクサクrankAを作ったのでそこそこ量も揃えてある。むしろストーンを作るより刻印に時間がかかった。売れてくれるといいんだけど。
よし、行こう。
「ありがとうございましたー」
ウォルターニアの街は人で溢れかえっていた。
カウントダウンパーティーが行われるのがここだけっていうのもあって人が集まっているのだ。いつもの常連さんからNPCの人までたくさんの人がうちの屋台で買っていってくれる。しかもNPCの人には何故わかるのかは謎だが、新人魔女さん、と言ってくる人が多かった。ウォルターニアには魔女がいないそうなのでお店を開いてくれたら嬉しい、と言っていた人もいた。そして〈まじない〉を売っていなくてがっかりした人もいたので、落ち着いたら本腰いれて魔女になってもいいかもしれない、と思った。
「あ、あの……」
「はい、いらっしゃい……ませ?」
ん?
なぜアイコンがピンク色?
「えっと……あの?」
「あ、ごめんなさい。何が必要でしょう?」
「じゃ、じゃあこれとこれ、あとこれ3つお願いします」
「はい、こちらになります。お代は……はい、丁度いただきます」
「あ、あの……また来ます!」
「は、はい。よろしくお願いします?」
そしてお客様の少年は凄い勢いで人混みに向かって走っていった。
今のはいったい?
頭上のアイコンが青ではないのでプレイヤーではない、はず。でもNPCのアイコンは白。そもそもこういったところにくるその他大勢のNPCはアイコンすら表示されない。
名前持ちのNPCだったのか?
いや、名前持ちのNPCだったとしてもアイコンがピンクなんていままで見たこともない。
本当なんだったのやら……。
「あの~、いいですか?」
「あ、はい、すいません」
その後は特に何事もなく順調に商品はなくなっていき、時間短縮しながらお薬作って、補充して……といった販売は無事終了した。その後はヤトとクオと合流して屋台巡りを楽しんだ。縁日みたいな雰囲気でとっても楽しかった。まっちゃもたくさん色々なものが食べれて満足そうでした。頭の上で座りながら食べだした時はさすがに叱ったけどね。ソースがたれてきて大変だったんだもん。
最後のカウントダウンは皆揃って声を出して盛り上がって、さらに花火まであがってとっても楽しかった。
いやー、花火いいよね。私も自分で作った花火打ち上げたいな。