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ミニ黒サンタ達の襲撃は緩急をつけ日中3度程あったらしい。

最初は応戦する人数も少ないことから城壁を頼りに戦っていたが、後から人数も増え3度目は余裕で戦い抜いたということだった。


しかし日が落ちた瞬間、ヤツは現れた。


深い闇を凝縮したような巨大なナニか。

黒いスライムを巨大化したような。その中心には裂けそうな程横に広がった口があった。その口には巨大な歯が並び、真っ赤な長い舌がだらりと下がる。


とても気持ち悪いモンスターだった。


「正直油断していた。襲撃のモンスター達のレベルが高くなかった、というのもあるし防衛しきった直後という緊張が解れた瞬間でもあったが、な。奴は舌で城壁を崩し食べだしたんだ」


直ぐに警戒態勢に移った精鋭達、タモツくんのパーティー筆頭にヤトやヒメの活躍でその怪物は倒すことは出来たが、その時には城壁は全て食べられてしまった後だった。


「いやーハナのポーションがあって助かったよ!リバースポーションを持ってなかったらかなりの死に戻りが出てたからな」


「その通りだ。本当に助かった。これからもポーション類は生命線となるだろう。補充をお願いしたい」


「わ、わかりました」


タクとタモツくんに言われて視線が集中する。

ここにはクランやパーティー等リーダー格の人達が集まって今後のことを話し合っているのだが、何故か私もニーナさんと一緒に参加していた。


場所がお薬作っていたちょうど前に集まっていたので何となく呼ばれたと思ってたんだけど、こちらに話が振られるなんて思ってなかった。


今回のイベントで死に戻りした場合、復活は出来るがデスペナが通常よりも重い。通常は1時間のステータスダウンだが、このイベントに限り5時間ステータス半減と迷宮への立ち入り禁止だ。

これはかなり厳しいと思う。迷宮の方は入れない、となると出来ることがなくなってしまう。まぁ、その間にいろいろ準備を取ることは出来るがかなりのロスだ。

こちらの防衛戦では戦うことは出来るがステータス半減となると戦力が大幅に削られることになる。


うん、頑張ってリバースポーション作りましょう。


回復魔法系や蘇生魔法系の魔法を取得している人も勿論いる。

が、そういった人達は総じてレベルが高く迷宮攻略へと行ってしまっている。

こちらにも回復系の魔法を使える人はちらほらいるらしいがレベルが低く、やはりポーションがないと戦いが回らない、という感じになって来てしまっている。


魔術俱楽部というクランの人達もこの防衛戦には参加してくれていて薬の供給は今のところ足りているようだ。でもリバースポーションを作れる人はまだいないらしい。世界樹図書館で取得できるレシピだけど、試練の内容が9種類の合成だもんね。話を聞くとその前の合成7種類の試練もまだクリア出来てなかったようなのでまだまだ遠い、という事だった。


私がリバースポーションを作れる事に驚愕していたが、以前一度いろいろ噂になったのである程度は納得してくれた。というかラピスと一緒に錬金術業界では有名だという事だ。


しかし私でもまだ最後の試練に到達していないと告げるとそんなに難しいのかと驚かれた。合成の種類について教えろと突っ掛ってきた人もいたが、秘匿している人がほとんどで対価を払わずタダで教えろと言ったことに周りからそうとう叩かれていた。


別に教えても良かったんだけど、秘匿している人のことを考えると簡単に教えて変な前例を作るのが怖かったので言うのを躊躇ってしまった。


でも錬金術の人にはヒントをあげておいたので、合成の練度も上がるのではないかな、と思っている。情報独り占めにしてるみたいで居心地悪かったので。


出したヒントは“高級肥料”。これは9種類までの合成を可能にするアイテムだ。


「でも農業スキルを持ってなくて高級肥料を扱えるかはわからないけど」


アイテムにはスキルを持ってないと扱えないものがある。

例えば薬草なんかは錬金術スキルがないと料理に使ってもただの草となり効果はつかない。なので一応付け足しておいたのだけど。


後に合成するには農業のスキルを持って更にクエストをこなして高級肥料を作れることが前提にあることが判明したらしい。つまり殆どの錬金術師達は苦労して高級肥料の材料を聞き出したとしても、スキルをとらない限り結局は自分達の力で模索するしかなかったのだ。逆に農作スキルを取る錬金術師達が若干増えたりしたりもした。


この時はまだ誰も知らなかったが。




明日への対策会議も終わってその後は、宴会だ。

何故か迷宮探索に行っていたジーン達やその他防衛戦に参加していたクランのパーティー達も合流して飲めや歌えの宴会だった。こっちにきていいのか、とも思ったが息抜きは必要らしい。

クオを含めた料理スキル持ちが用意していた料理が一斉に並べられ、どこから出てきたのか樽のビールサーバーやらジュースやらが並べられていた。

ヤトはビールに興味深々だったがクオと一緒になんとか阻止した。

まだ未成年だからね。本当にアルコール摂取しているわけではないけど何となくいけない気がして。

楽しく料理やお菓子を食べていろんな人達と話したり、クオがタクに眼鏡を、と迫られてマリアにブリザードされたり、そんなこんなでマリアとクオは仲良くなったり。

最終的にはPvPが始まってヤトが良い笑顔で飛び込んで行ったり。なんと以前あった武闘大会でヤトが惜しくも敗戦した魔法剣士との再戦もあり、かなりもりあがった。結局時間制限で引き分けになり、勝負は明日に持ち越しになったけど。


夜の間にも1度襲撃はあったけど今は前線組もいるので皆でわーって出て行ってあっという間に鎮圧して帰ってきた。みんな酔っぱらってたよね?


一通り騒いだ後、迷宮組はラビリンスに向かって行った。

皆さん元気ですね。



夜は更け各自睡眠をとり次の日。



朝から配られたご飯を食べて今日もぐるぐるとお薬作り中。リバースポーションはまだrankCまでしか作れなかったんだけど、この調子ならイベント終わるまでに1回くらいならrankB作れるようになるかな?

最初は5時間くらいかかっていた作成時間も今では3時間くらいまでに短縮されている。更に装備を生産用に変えることで1時間半までに短縮することが出来た。お店で買えるリバースポーションはほとんど手に入らなかったのでやはり作るしかないのだ。


2日目の防衛戦は日中4回の防衛を成功し、やはり日没後に出てきた闇の怪物に防壁を食べられてしまった。今回は予想していたので即時対応できたこともあり防壁は半分程残った。


それでも半分食べられてしまったことにヤトは悔しがっていたが昨日と違って残っただけ凄いと思う。


迷宮の方は昨日の夜遅く突破したらしくブラックサンタとの決戦が始まっていた。今回は大規模戦闘ということで迷宮最奥へたどり着いた者なら誰でもボス戦に参加できるようだが、ボスのHPがバカ高くて討伐には相当時間がかかるらしい。1度迷宮をクリアしてしまえば、ボス部屋までは入り口から転移出来るので人が代わる代わる対応しているらしい。HPバーは5本もあり、2日目が終わった時点で2本半くらい削れたそうだ。このままの調子でいくとギリギリ時間いっぱいで倒せるかどうかってところか。どうなのだろうか?


防衛戦のモンスター達もレベルが上がってきているのか強敵が現れつつある。

雑魚モンスターの中に、たまに中ボスのような巨大モンスターが混じるようになってきた。ヤトとヒメは嬉々として競うように討伐しているので脅威、とまではいっていないのだが。


それに2日目からはヤトが一緒に神樹解放した羅刹コンビと呼ばれているキバさんとサクラさんが合流した。元々迷宮の方に行っていたのだが、ヤトから沢山の敵がいるということを聞いてこちらの参加に切り替えたらしい。2人とも着物で初の着物仲間に出会えてとっても嬉しかった。といってもキバさんはいろいろはだけている侍のような着流し?っていうのかな、そんな感じ。サクラさんは花魁さんみたいな煌びやかな格好。やっぱり露出が激しかった。

夜はまた宴会だったのだが私も袴に衣装チェンジして一緒にスクショを撮ったり仲良くなった。キバさんは同じ刀を使う様だったので話も盛り上がった。そして作った刀を見せたら今度是非刀を打ってほしいとお願いされた。刀だけを打つ人は珍しいらしい。私が鍛冶とってるのって自分の武器作る為だしね。でもまだレベルがそんなに高くないので、いいのが出来たら連絡することになった。キバさんは色んな刀を集めているらしい。どんな刀がいいのかなんとなく話をしていて想像できたのでそのうち作ってみよう。フレンド登録をして2日目は就寝した。



イベント3日目。最終日だ。


私は朝からやはりお薬作り。

そろそろゲーム内時間5時を過ぎるところ、といった時間。


「闇の怪物が出た!生産職の奴でも戦える人は参加してくれ!」


唐突にもたらされた知らせ。

それはつまり前線が押され危機的状況にあるということ。


「聞いた通りだね~!今タモツくんからも連絡きたんだけど、けっこうヤバイ状況みたい。だから生産は一旦お休みで皆で戦いに行こうか~。じゃないと私達もこの城砦ごと食べられちゃうかも~……」


ニーナさんの言葉に誰もが想像してしまったのか、しーんと広間の時が止まったように静かになった。


「魔法とか後衛寄りの人達は2階のバルコニー?から攻撃してね~!接近戦できる人は1階から出たとこで指示に従って~。あ、なんか闇の怪物4体出たらしいから皆頑張って討伐しよう~!」


「「「「「「「「「え!?」」」」」」」」」


「いくぞ~!」


「「「「「「「「「えーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」」」」」」」」」


広間の全員の心が一つになった瞬間であった。

しかし驚いている時間もない、すぐさまそれぞれ行動に移る。広間にはそれなりに道具を広げ作成している人もいるが、2階の部屋に籠って生産している人もいる。2階には緊急連絡線という電話のようなものがあって、そこで喋ると使用されている部屋全てに伝わる機能があるので、ニーナさんが2階にあがるついでに声を掛けるようだ。ニーナさんは戦闘では魔法を使う後衛なので2階から攻撃になる。


「ハナ」


「クオ!ヤトのとこ合流かな?」


既に装備を戦闘用に切り替えたクオが頷く。やっぱりいつもパーティー組んでる人のとこが一番戦いやすいもんね。

私も即座に装備を戦闘用に切り替え一緒にヤトを目指す。

城砦を出たところでパーティーがいるならそこに参加するように言われたしね。戦闘中だろうと思うけどコールでヤトにつなぐ。すると思った以上にすぐ出てくれた。ヤトによると城砦の裏側にいるらしい。確認だけしてコールを切るとクオと共にかけ出す。途中ミニ黒サンタがわさわさいたがその場で戦っている人達に任せて出来るだけ走ることを優先させた。


闇の怪物が現れ、昨日残っていた2枚目の城壁も食べられてしまったようだ。更に城砦も少しずつ食べられているようだった。


『ハナ!今どこだ!?』


「ヤト!?今丁度城砦の西側!」


『わかった!こっちは片付いたから今から合流する!』


唐突なコールだったが、すぐに切れた。


「ヤトこっちに来るって!……ということは次はこいつだね」


「おけ」


丁度目の前には闇の怪物。ヤトからスクショ見せて貰ってたけど、本物は更に禍々しい気がする。HPバーは2本あり、現在1本目の半分くらいまで削れている。城砦正面は人が多かったがこちらは人が少ないように思える。その分苦戦しているようで怪物の接近を許し今まさに壁を舌でえぐり取られたところだった。


「あ、あっぶなー!」


丁度そこにいた私達は慌てて回避する。

そしてここぞとばかりに舌に攻撃する。昨日までの情報によるとこの舌が弱点らしい。そして効く属性は光。


「大きいの行きます!ライトメテオ!」


ドドドドドドドドドドドドドドン!


怪物めがけて白い光が降りそそぐ。

魔法陣を放つと察知したクオは、攻撃を受け怯んだ瞬間を狙い怪物に向け攻撃していた。それに私も続く。


元々戦っていた人も一応声を掛けたからかどうにか持ち直していた。


「おー!ハナすっげーの打ったな!」


「「ヤト!」」


「私もいましてよ」


「キェー!」


いつの間にか到着したのかヤトにヒメ、まっちゃが参戦していた。

ヒメがこちらに来るとは思ってなかったのでさらに心強く思えた。


そう思ったのは私だけじゃなかったらしく明らかに他の面々も安堵していた。


「おらおらおら!こっちだぞーっと!《誘い》」


怪物はヤトの誘惑に勝てなかったようで、標的を城砦からヤトへと変えた。


「どんどんいくぞー!」


「あ、待ちなさいヤト!」


そして楽しそうに怪物に突っ込んでいくヤトを追ってヒメも突っ込んで行った。

クオと顔を見合わせ何方ともなく頷きそれを追う。まっちゃは既にヤトと突っ込んで行っていた。一応私の使い魔なのに……。




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