150
それから土曜日、日曜日と回数を重ね、現在月曜日の夜。
土曜日は予定通り2回だけだったのだけど、思った以上に時間がかかることがわかったの日曜日は3回フルでログインしてブロックを集めた。
やっぱり1000箇所って多いよね。それに上に行くにつれてモンスターのレベルも上がっていくので進むスピードは必然的に遅くなった。そのせいもあってここまでの時間がかかってしまった、というわけだ。
それでもまっちゃのお陰でかなりの時間短縮がされている。他の塔にも同じような宝箱と台座があって、ブロックを納めるようにできているのだが、ブロックを揃える数が違っていた。
白の塔は100個、緑の塔は560個という数だ。
そう考えると1000個というのは集めさせるのを諦めさせようとしているのでは、とも思える数だ。
まぁ、集めたけど。
他の塔も無事に全部のブロックが揃ったそうだ。
そして私達は今台座の部屋へと来てきた。
私が台座に近づくと自然とブロックが現れ自分の場所へと収まっていく。
パチリ、パチリとブロックがはまる音が響く。
そして全てのブロックがはまった時、ブロックから1枚の設計図が浮かび上がってきた。
『お願い……守って……』
綺麗な女の子の声が響いた。
それと同時にメールが届く。
どうやら運営かららしい。
「今度は建築か?」
「設計図に従って城砦を作り上げろってかいてあるっすね」
「とにかく行ってみますか?行けばわかるってあいてあるし」
「いこ」
そして私達はウォーリアとウォルターニアの間にあるただただ広く視界の開けた草原に来た。
そこにあったのは地面に描かれたブロックと同じ設計図だった。
近づくと建設に必要な材料と必要個数が羅列された透明なウィンドウが開いた。
「さすがにこれ、きつくね?」
「これは全部ミニ黒サンタからドロップするアイテムだな」
「俺たちだけじゃ無理っすよ」
「他の、出来れば大手クランに協力を申し入れないとな……」
「あ、じゃあ私銀の翼と戦乙女と眼鏡同盟だっけ?に知り合いいるから頼んでみるね!」
銀の翼はジーンに頼めば早いし、タクとマリアもクランの中では幹部ポジションにいるらしいので話は通りやすいだろう。
そして順にコールで話を通す。
丁度みんなログインしていたので良かった。
そしてどのクランも快く協力をしてくれた。
なぜかというと必要な資材は生産に使うことができずただ売るだけのアイテムだったからだ。
特に銀の翼は食いついて来た。
ジーンに繋ごうと思ったんだけど、ニーナさんの方がなんとなく頼りになる感じがしてそちらに連絡したら、アイテムかき集めてすぐ向かうと言っていた。タクとマリアも相談してすぐ連絡するといってたけど、本当にすぐ連絡をくれてこちらもすぐ向かうと言っていた。
「……というわけでなんか皆来てくれるみたいです」
「……さすがハナ様っす」
「リーヤさん何か言いました?」
「な、なんでもないっす!」
にっこり笑うとリーヤさんは目に見えてびくりとして顔をひきつらせた。
「それにしてもハナちゃん凄いわね〜。どんな人脈があるのよ。その3つって初期立上げの大手ばかりじゃない!」
「……すまん、騎士団は保留だそうだ。上に話を通すまで時間がかかるだろうし、こっちは期待できないかもな」
リュウさんが申し訳なさそうに言って来た。
「いやいや、それが普通の対応だろ?こっちは……ハナだからな」
「しょうがない」
「え?それってどういう意味?」
「ハナちゃーん!」
「ぐえっ」
そんな会話をしていると首に巻き付くように突進して来たリリーが抱きついて来た。
いや、早すぎない!?
「こらこら、ハナちゃんが困ってるだろ?」
そしてマイクさんに引き剥がされるリリー。
「あ、マイクさんお久しぶりです!」
「久しぶり。なんか面白いことやってるんだってね。うちは全面的に協力をさせてもらうよ。何が起こるか気になるしね」
「ハナちゃん教えてくれてありがとう〜!じゃあさっそく資材投入しちゃうね〜」
「私達もそうしましょうか」
喋ってばかりいてまだ資材を入れてなかった私達。リカさんの言葉で思い出しそれぞれウィンドをいじりだす。
「ハナ〜!きたよ〜!」
「こっちもきたぞ!」
そこにマリアとタクのパーティーが到着した。そして知らないパーティーも一緒だ。
シェリーさん達に挨拶をして、タクのクランのリーダーだという人も紹介してもらった。
開口一番「この眼鏡を……」と眼鏡を渡そうとしてきたので丁重に断った。類は友を呼びすぎだろう。
「ハナ〜こっちでは久しぶりだね。丁度コール来た時に一緒にいた人達話したら協力をしてくれることになったから一緒に連れて来ちゃった」
「ありがとマリア!助かる!」
マリアの後ろには全員使い魔と思われるモンスターを連れた人達がいた。
「は、初めましてハナさm、ゲブンゲフン、ハナさん!使い魔愛し隊というクランのリーダーをしておりますキャサリンと申します!ハナさm、さんがRクエ見つけてくれたお陰でこの子と出会えました!ずっとお礼が言いたかったんです。ありがとうございました!」
「い、いや、役に立てたなら嬉しいです」
キャサリンさんの勢いに圧倒され思わす1歩引いてしまった。
「ハナさんって本当ハナ様っすよね。大手クランの中心パーティーが勢ぞろいっすよ?なかなかこの組み合わせはレイドでも見れないっす」
「あぁ、返答の早さにまさかと思ったが、このメンバーが揃うとは」
「いや〜さすがハナ様ね!」
少し離れたところでリュウさん達がこんな事を話していたのだが、キャサリンさんに握手を求められタジタジの私には聞こえなかった。
そしてキャサリンさん達の協力もあり、なんと資材は全て揃ってしまった。
すると建設しますか?というアイコンがウィンドウに現れた。
「ここはハナに押して貰えばいいだろ!」
呑気にジーンが言ってニヤニヤしているが、他のみんなも異論はないよう。
まぁ、みんな私が呼んだんだからここは私がやるべき?
なんとなくためらいがあり、リュウさん達に助けを求めるも是非にと言ってくる。ヤトはニヤニヤしてクオは人がいっぱいでヤトに隠れていた。
「よし、じゃ押すよ?」
ポチ
するとどこから出てきたのか沢山のブロックや鉄の棒等、ウィンドウへとつぎ込んだ資材が竜巻のように空へ舞い上がり順に設計図にそって組み上がっていく。
それを口をあけ唖然とみあげる私達。
そしてあっという間に城砦、いや、西洋のお城のようなものが出来上がった。
「なんだこりゃ……」
後ろでは皆が口々に驚きの言葉を発している。ヤトとクオが来て一緒に城門へ近づく。5メートルくらいあるのではと思う扉に手をふれると、ギギ……と重い音を響かせ人が通れる程開いた。
そして私達はお城の探検を始めた。
1階は大広間になっており4カ所ある階段から上階へと上れる。2階は小部屋が沢山あり、3階の最上階には部屋が1つだけあった。
2階の小部屋は自分だけの部屋へ行けるようだった。同じ扉から入っても、扉を潜ると1人用の小部屋の中へ入る、という状態だった。さらにどの扉から入っても自分だけの同じ小部屋へ行けるようだった。
最上階の部屋には大きな卵が浮かんでいた。
そこへどうやら一番乗りした私達。
ヤトとクオ、リュウさん達も一緒だ。
『卵を守って……聖なる夜……生ま……から……』
部屋に入った時に聞こえた声だ。
どうやらこの卵を聖なる夜、クリスマスまで守ればいいのかな?
「何だか面白くなってきたわね~」
そこへニーナさん達パーティーがやってきた。
「ハナちゃん、これっておそらく防衛戦になると思うのよね~。さっき確認した時外に設計図が増えてて、それを見るとこの城砦の外に砦が2重にひかれるみたいなの~。で、入った時の声から考えると、この卵を狙ってくる敵からこの卵を守らなければいけない、それを考えるとやっぱり防衛戦よね~」
増えていた設計図は白と緑だということから、他の塔の設計図が解放されたのだと推測された。
「今回のイベント本番は24日21時からだからな。おそらくそれまでにこの城砦がすべて完成していえば防衛戦が発生する、ってとこだろうな」
ジーンもやってきて会話に加わった。
「それでね、もし防衛戦になるなら準備がいると思うの~。だからこのこと拡散してもいいかな~?」
「え?やってもらっちゃっていいんですか?」
「勿論~!なんだか楽しそうだし、なにより生産職が輝きそうだしね~」
なるほど。
もし本当に防衛戦になったら、お薬も必要だし、装備の整備なんかも必要だもんね。後方のバックアップがかなり重要になるってことか。
「是非お願いします!」
「おっけ~!じゃ皆に呼び掛けておくね。一応、防衛戦予想って言っておく~」
「よろしくお願いします」
「よっし!じゃ、決起会だー!飲むぞー!」
そしてなぜだか分からないが、急に始まった決起会と言うなの飲み会。ジーンはただ飲みたかっただけなんだと思う。
戦乙女や使い魔愛し隊、眼鏡同盟の人達もノリがよく手分けしてあっという間に1階ぶち抜きの大広間には立食パーティー形式の宴会場が出来上がった。自分達が持っているテーブルを適当に広げ、その上にこれまた適当に持っていた料理達が並べられた。クオはキッチンを取り出して料理を初めてるし、既にその前には長蛇の列が出来ていた。
ヤトは広間の中心でPvPを始めて出し物のようになっている。何やら賭けも行われているよう。ヤトにかけてみようか、なんて思ったらキャサリンさんに捕まってしまった。他の使い魔ちゃん達と触れ合えたのは楽しかったけどね。まっちゃが嫉妬した目で見てきたが、自分も他の人に構われて満更じゃなかった癖に。ふん、だ。
後からそれぞれのクランの人達も合流して宴は私がログアウトする時も続いていた。いつまで飲んでいたのやら……。
イベントまであと3日、そして明日は終業式。
つまり時間が出来るって事ですよ。
明日こそ釣り竿ゲットするぞー!
次の日。
本日のログイン。既に夜なので今日は1回しか出来なさそう。終業式の後は友達とご飯食べてカラオケ行ったので時間が無かったのだ。
取り敢えず今回はルバイヤート討伐だ。
あの後色々調べてみたらルバイヤート攻略情報を発見した。
やはり縄張り意識が高く、エリア内で見つかると群れから総攻撃がくるようだ。そうならない為には縄張りギリギリのところで1匹だけ攻撃する必要がある。そしてそのタイミングは1時間に1回あるポイントを通るのでおすすめ、と書かれていた。
しかしそのポイントは既に張ってる人達が居たので少し離れた場所で見学。その人達は雷属性で攻撃しているので調べてみると弱点らしかった。知らなかった。戦闘に持ち込む方法しか頭になかった。
暫くすると無事終わったらしく、こちらに軽く手を振り何処かへ歩いていった。次どうぞ、といったところか。
ありがたく彼らが居た大岩に登り次のルバイヤートを待つ。
それからまっちゃとご飯を食べながらその時を待つ。前回失敗しているので不安で緊張していた。
「きた……」
「キェー!」
遠くの方から黒い点のようなものが近づき、だんだん大きくなってゆく。
やるぞ。
「サンダーアロー!まっちゃ来るよ!」
「キェーーー!」
既に空へ舞い上がり臨戦体制だったまっちゃがルバイヤートに突っ込む。ちなみに私はまっちゃに騎乗中。私もまっちゃの動きに合わせて刀を振るう。
「サンダーボム!」
そして離れた瞬間魔法陣を叩きこむ。
そんなことを何回か重ねるうち、どうにかルバイヤートの片翼を落とすことに成功。
Gyaaaaaaaaa!?
バランスを崩したルバイヤートを更にチクチク追い詰める。そして残った翼をも落とすことが出来た。
ドォォォォン……
ここまでの攻撃でルバイヤートのHPはまだ半分も残っている。しかもダメージの殆どが翼を落とした時のものだ。空中を素早く動きまわるルバイヤートに魔法陣を当てるのは結構難しかった。いや、私の戦闘センスのなさを再認識させられた、と言ったところか。
しかし翼が無ければ機動力はほぼ皆無と言っていい。
「まっちゃ、一気に行くよ!」
そして地に足をつけた私はルバイヤートに魔法陣を放ちながら突っ込んだのだった。