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この部屋へ来るまでに、壁の中の宝箱を回収するのに壁を壊せるスキルは採掘に限らない、ということが分かった。宝箱のある空間には様々なスキルを現す図形が描かれていたのだ。しかし何故か生産スキルに限られていた。

つまり生産スキルをもっていないと壁は壊せないのだ。

まぁ、まっちゃみたいに例外はあるかもしれないけど。


料理スキルの時は包丁で削ったり、採取の時は採取用ナイフで壁が削れた。図がビーカーの時は錬金術スキルで、そのままビーカーで殴ったら壁が削れた。


いや、ビーカーで壁削るってシュールでしょ。

時間もかなりかかりそうだし。


そんな状態で1000個って無理があるような気もする。


「これって本当にイベントに必要なことなのかな?」


浮かんだ疑問が口から思わずこぼれた。


「ハナのいうこともわかるけどなー。なんかあからさますぎるし」


確かにわかりやすい台座、手段がわかればあとは作業の宝箱集め。


「裏クエ?」


「裏??」


「あぁ……その可能性もあるかもな!パンプキンの時ハナ達が見つけた心理の書みたいなやつな!」


「あ!お助けアイテムが出てくる的な?」


「ま、そんな感じ」


なるほど。それなら納得。

無くてもイベントは進行していくけどあれば楽にクリア出来るってことだよね。


「さすがハナさ、いやハナちゃんね!この瞬間をこの目で見れるなんて」


「リーカーさーん!?今間違えそうになりましたよねー?」


「ほほほ、何の事かしら~?」


待てーと追いかけるが掴まらない。

さすがトッププレイヤー、悔しい。

クオを中心にしてくるくる追いかけっこをするがひらりひらりと交わされる。


背の小さなクオはそんな私達を見上げてくるくる視線で追ってくる。


「この部屋を見て回ったが他は特に変わったことはなかったな」


私達が遊んでいるうちに、またしてもリュウさんとリーヤさんが確認してきてくれたよう。なんかすいません。


「じゃぁ、また違う道探しにいくか?」


「そうだな。ここにはまたある程度集めてから来ればいいだろう」


この部屋は正方形で、各壁に1カ所通路につながっている空間が空いている。

どの通路に行くか少し離れたところでヤト、リュウさんリーヤさんが話し合っていた。


「……穴」


「「ん?」」


クオが突然天井をみつめたまま口を開く。

リカさんと私はさすがに追いかけっこは終えていたがクオの視線は上を向いたまま。


リカさんと2人でその視線の先を追うと確かに天井に穴が開いていた。

丁度台座の真上。何故か天井からスポットライトのように台座に光が降りそそいでいるので見えにくいが、言われてみれば穴のようなものが見える。


ここにも宝箱があるのかな?

天井に張り付いてるの?


「まっちゃー、ちょっと大きくなって乗せて」


「キェ」


天井の高さは5mくらいなので、勢いをつけないようにゆっくりと天井に近づく。


「もっと右―、あ、ちょい戻って!そうそう、ストップ!」


丁度穴を覗けるところでホバリングしてもらい中をのぞく。

すると中に宝箱はなく、かわりにスイッチのようなものが見えた。

それを囲むように6つのマークが。


採掘・採取・鍛冶・裁縫・錬金術・料理


何故このチョイス??


「あ、それ今人気の生産系スキルね」


下にいる2人に伝えるとリカさんが教えてくれた。

錬金術ってついに人気出たのか!


「ん?錬金術?あぁ、合成が出来るってわかってから特に人気出たわね。ポーション系もプレイヤーが作ったものの方が効果が高いってわかってからじわじわと人気伸ばしていたからね~」


そうだったんだ。

知らなかった……。確かにお薬売ってる人増えたな、とは思ったけど。


一度下に降りるとヤト達も集まっていた。


「なんかスイッチあったよ?押してみる?」


「まじか!?もち!いいよな?」


ヤトが確認すると皆異論はなさそうだった。


「まっちゃ、よろしくね!」


「きゅ!」


まっちゃは飛んで行き、穴の直前で小さくなり中に入っていった。

ここからじゃ光の具合もあって中は全く見えない。


まっちゃが入って暫くすると、どこからともなくカチッという音と、その後にズズズ……という音がして地面が揺れ出した。


そして台座の下に地下へと降りる階段が現れた。


「なんか、出た……」


「すっげー!さすがハナ!」


ばしっと背中をヤトに叩かれる。

いや、痛いから!加減して!


「すごいっすね!まっちゃお手柄っす!」


「きゅぅ~!」


降りてきたまっちゃにクッキーを食べさせながらなでなでするリーヤさん。

完全に餌付けされている。そのままリーヤさんの腕の中に納まってしまった。


現実では猫アレルギーで好きなのに触れないというリーヤさんはここぞとばかりに可愛がっている。いや、猫ではないんだけどね。


「まさかこんなギミックが……さっそく行ってみるか?」


「勿論!さー突入ー!」


「あ、ヤトさん!」


ヤトが我先にと階段を下りそれをリュウさんが追いかける。

その後に私、クオ、リカさんと続きリーヤさんはまっちゃを抱っこしながら最後尾についた。




「長いな……」


どれくらい降りたろうか、途中ミニ黒サンタが襲ってきたが、難なく倒して下へと進んでいる。しかし降りるたびに段々手強くなっていて、出来る時は後ろから魔法で援護している。

とはいえ狭い階段の戦闘ということもあり、大体は前にいる2人に任せきりである。狭いからか出てくる敵も1匹か2匹なので対応出来ているようだ。


そしてついに階段が終わり円形の広場に出た。


「これ絶対ボス出るよね」


ビクビクしながら聞くとヤトが良い笑顔で首肯してくれた。


「この人数でも入れるのかしら?」


「あ、ここ何か書いてあるっすよ」


階段の終わりの壁に文字が書いてあるのをリーヤさんが見つけたようだ。


「『光の数だけ招かれる。しかし汝らが真に欲しているものは得られず。真に欲する者は再度赤の光で立ち向かえ。光の瞬きで乗り越えた者だけにそれを手にする資格がある』って書いてあるな。光というのはこの部屋を照らす松明の光、か?」


部屋の中には等間隔に青い炎が5つと赤い炎が1つある。


「6人で挑めってことっすか?で、その後に1人で挑めば何かもらえるんすかね」


「そうだな。ここで変な謎かけがないとすればそう取れるだろう。どうする?」


「はいはいはーい!1人で戦うのやらせてくれ!」


ヤト、まだそこまで話いってない気がするけど。

ほら、リュウさんも苦笑いだよ。


「この中で一番戦闘力高いのはヤトさんだからな。お願い出来るか?」


「もち!」


「ということで挑むことは決定として、メンバーだが……」


「まっちゃは私がいないとパーティー組めないので、まっちゃお休みでその他のメンバー丁度6人でいいと思います」


一番レベル低いの私だしね。


「そうだな。ハナさんとまっちゃには申し訳ないがそれでいこう。何が出てくるかわからないからその場で俺が指示をするのでいいか?」


リュウさんがリーダーになるのを拒否する人もいなく、数パターンの予測とその時の対処法を話し合ってパーティーを組みなおす。

まっちゃはお休みなので送還する。ごめんね。


「いくぞ」


リュウさんに続き広場に踏み込む。

一瞬の浮遊感と共に体の自由が利かなくなる。


リンゴーン、リンゴーン


どこからともなく鐘の音が広間に響き、続いてシャンシャンシャンと鈴の音が鳴り響いてきた。


『ほーほっほっほー!』


どこからともなく沢山の黒いトナカイに引かれた橇に乗った黒サンタが現れた。

ふわりと地面に降り立つとトナカイ達が解き放たれた。


Hooooooooooooooooooooooooo!


戦闘開始だ。


「ヤトさんは黒サンタ、で後はトナカイだ!ハナさん達は左側で!」


「よっしゃぁー!」


「わかりました!クオ行こう!」


「おけ」


「じゃぁ私達は右かしら?」


「了解っす!」


先にもし取り巻きが出たらそれぞれのパーティーに分かれて殲滅、と決めていたので、すんなりとリュウさんの指示で分かれる。

ヤトは単騎ボスへ向かった。取り巻きを倒している間放っておくわけにもいかなかったので、一番戦闘力が高いヤトが向かうことになっていたのだ。


「うわっ、結構大きい!?」


「……可愛い」


「え?」


ちょっと悪そうな表情の真っ黒トナカイ。

私達の担当は2体。とりあえずヘイトを稼ぐ為それぞれを攻撃していく。

因みにリュウさん達は4体も引っ張っていってくれた。


「うわっと!クオ、突進注意して!」


「おけ」


クオの背中に向かい1体のトナカイが突っ込んで行ったが、間一髪でそれを避ける。これはバラバラに戦ってたら危険な気がする。

クオに駆け寄り背中合わせになる。


「ファイアーボム!」


うん、火系の攻撃がよく効くようだ。

本当は1体ずつ確実に倒した方がいいのだろうが、こいつら敵味方関係なく突っ込んでくるからやっかいだ。それに味方同士は攻撃無効なのか同士討ちを狙って突進させてもHPは減らなかった。


こりゃ大変だ。


その後も苦労しながらトナカイを倒しきった。

途中不意をつかれて突進で吹き飛ばされ危なかった場面もあったがクオがトップポーションを使ってくれたので助かった。


こちらがトナカイを倒したのと同時、いや、既に黒サンタに向かっていたので私達より早くリュウさん達は取り巻きのトナカイを倒していた。

さすが戦闘専門職、違いますね。


私達も加勢に向かう。

しかしあまり近づいても邪魔になりかねないのでリカさんの隣で魔法陣を連発する。


「ハナちゃんのそれ、やっぱり反則よね~」


隣でリカさんがボヤいていたが、リカさんが放つ大規模魔法に比べれば威力はかなり劣る。魔法陣のことは突っ込まれたけど、自分で紙を作ってると言うと難しい顔をしていた。売る予定はないかと聞かれたけど、今のとこ自分のだけで手一杯だと伝えると、その答えを予想してたのか「だよね~」といってがっかりしていた。


私達がついた時には黒サンタは既に虫の息だった。

経緯は全く分からないが、ヤトだしね。

そこにリュウさん達に加え私達も合流したことにより程なく黒サンタは倒された。


Hohhoooooooooooooooooooooooooooooooo!


「おつかれぃ!」


「お疲れさま」


「お疲れ~」


「お疲れ様です」


「おつ」


「おつかれっす!」


ほとんど黒サンタは相手にしなかったけど、無事倒せてよかった。


「よっし!じゃ、次あたし1人で戦ってくるな!」


「お願いします」


「じゃ私達はそこの通路で応援してるね~」


「ヤト頑張って!はい、これで回復してね」


トップリカバリーハイポーションを渡してHPMPを回復させる。


「おー!サンキュ!」


「がんば」


「よろしくっす」


そしてヤトと黒サンタの一騎打ちが始まった。

1人で挑むときは取り巻きはいないようだ。


そして勝負はあっという間についた。

いや、ヤトさん強すぎでしょ。

さっきの戦闘で黒サンタの攻撃パターンは覚えたらしいけど、それにしても早い。


壁に書いてあった“光の瞬きの間に”っていうのは戦闘が始まった瞬間から点滅しだした松明の赤い光のことだと思うんだけど、まだ点滅は続いている。


「うーん、やっぱ1人だと弱っちくなってるから歯ごたえねー」


「いや、ヤトくらいだと思うよ」


「ヒメも」


「……確かに」


ヒメもヤトと同類だからな。同じこと言いそう。

それを言ったらまた怒られそうだけど。


戦闘を終え帰ってきたヤトの手には1枚の紙が握られていた。


「それが真に欲する物とやらか?」


「何だろうな?地図みたいだけど」


「本当っすね。ん?……これって壁の宝箱の位置じゃないっすか?ほら、ここって最初に会ったとこっすよね?それでこっちが俺たちが取ろうとしてた穴があったとこっす。丁度重なるっすよ?それに×印がついているっす。これは取得済みってことだと思うっす」


「おお~!いつも思うけどリー君って本当記憶力良いよね。凄い!」


「いやいや、そんなことないっすよ~」


えへへと照れているリーヤさん。

それをヤトとリュウさんがニヤニヤして見ている。

ん?もしや?

確かにリーヤさんって一番リカさんを守りやすい位置に陣取るし、戦闘のとき何かあればすぐに飛んできていた。

これはそう思われても仕方ないよね。私も知らないうちににやけてしまいそうになる。


「でもこれが本当に地図だったとしたら凄いことだぞ?この地図とまっちゃがいれば1000個集めるのもそれほど時間がかからないんじゃないか?」


「……リーヤの言った通りだとすると、うちら以外にまだあの宝箱取れたヤツいないんじゃないか?それならリュウが言う通りうちらで集めるのが効率的だな」


「よし、それじゃあこのままあのブロックを集めよう。道中、作業中の護衛で俺たちも協力しようと思うが、それでいいかな?」


リュウさんは全員に確認をとる。

勿論全員OKだ。ここまできたら何が出てくるのか気になるもんね。


リュウさんはこの事を掲示板のイベント板に書き込んで、もしブロックを手に入れた人がいたら台座に設置するよう協力を呼び掛けた。


それから時間いっぱいブロックを集めた。

地図があったので迷うこともなく近場のブロックを3つ集め、今日は時間も遅いので解散となった。

どのくらい時間がかかるかわからなかったので明日は午前中、夜と集まる予定を組み解散となった。


明日も頑張るぞ。






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