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本日2回目。


「お待たせ!」


「きゅっきゅ~!」


ちょっと遅刻してしまったけど、ヤトとクオに合流。

事前に遅れることは伝えてたので2人も何も言わないでくれた。


「よっし!行ってみるか!」


「おー!」


「おー」


「きゅ~!」


赤の塔はシアとギリアートの間にある砂漠にある。

昨日わかったことらしいが、赤の塔に入るにはミニ黒サンタを1人100体倒さなければならないらしい。


昨日のレベル上げで問題なく100体倒していたので塔に入ることは出来る。


「よし、行くぞ?」


ヤトに頷いて了解を示す。

クオも横で頷いていた。


塔は赤茶のレンガのようなブロックで出来ていた。

大きな扉の前に立ち見上げると先端が見えないくらいに高い。


まだそれほどこのレベル帯の人数が多くない為か、それとも既に中に入ってしまっているからか、並んでいる人はいなかった。

……私だって本当はこのレベル帯にくるのは当分先の予定だったんだけどな。


塔の扉には淡く光る丸い水晶が埋め込まれている。

そこにヤトが手を触れると、一度大きく光りゆっくりと扉は開いていった。


「じゃ、行くか!」


「よろしくね」


「よろ」


「キェー!」


既に全員タブレットで強化してある。

扉の向こうは真っ暗で何も見えない。

そこへ向かい1歩、また1歩と踏み出した。




「おおー!」


「な、なんかすごいね……」


「すご」


「キェー!」


塔の中はクリスマスの飾りをおどろおどろしくしたオブジェが至る所にころがっていた。……可愛くない。かなり不気味な様相だ。

プレゼントには裂けそうな口とつりあがった目が描かれ、星はどす黒く怪しく輝く。道は遺跡のような外と同じ赤茶のブロックで作られた石造りの通路だった。そこに転がる不気味なオブジェ達。

こんなクリスマスは嫌だなぁ。もうお化け屋敷だよ。


「きたきたー!」


「まっちゃ、お願い!」


「キェー!」


「いく」


どこからともなくミニ黒サンタが現れ飛びかかってきた。

それをヤトがガードしてカウンターで拳を繰り出す。

もう1匹きたのをまっちゃが引きつける。

それぞれに私とクオが魔法(陣)を放つ。


何度かそんなやり取りがあり、無事ミニ黒サンタを撃破。


「んー?敵のレベルちょっと高いな」


「そうだね。迷いの森より上かも」


「気を付ける」


とりあえず近くに敵がいなくなったのを確認してほっと息をつく。


「さて、どっちいくかだな」


扉を開いた瞬間私たちは塔の1階のどこかに飛ばされたらしい。

この塔は各パーティーで別空間のダンジョンに飛ばされるのではなく、全員同じ空間に飛ばされるらしい。

これは昨日早速ダンジョンに潜ったらしい人達が掲示板にあげていたので知れたことだ。

そして同じダンジョンをクリアしなければならないので宝箱やモンスターの争奪戦が起こっているらしい。


そしてもう1つ情報があがってたのが……。


「穴、見つけた」


「お!これかぁ……よっと」


ちょうど掌が入るくらいの小さな穴があり、それを見るや否やヤトはそこへ手を突っ込んだ。


「うー!やっぱり届かない!」


二の腕あたりまでは入るが、それ以降は進まない様子。

今度は二の腕に嵌ってるアクセサリーのバングルを外して手を入れると、今度は肩までは入ったが目当ての物には手が届かなかったようだ。


「やっぱ道具を外せば通るけど、距離が遠くて届かないな」


またアクセサリーを装備しながらヤトが言う。


穴から中を覗き込むと、そこには宝箱がちょこんと置いてあるのが見える。


「うーん、届きそうなのにね」


これがもう1つの情報。

取れない宝箱。


通路に置いてある争奪戦の種となっている通常の宝箱の他に、こういった宝箱がたくさんあるようなのだ。

ヤトが先ほど試した通り、道具や装備の類は通過できないので自力でどうにかしなければならない、というのが今現在の予想。

おそらく取り方は法則があるのだろうが、まだ昨日の今日では見つかっていない。


ちょっと先の通路でも違うパーティーがどうやって取るのか言い合っているのが見える。


「きゅ?」


「ん?」


その時頭の上で眺めていたまっちゃが、ぱたぱたと目の前までおりてきた。そして背中を見せてこちらを振り向く。


「何?え、これ?」


「きゅっ!」


しきりに背中、いや首にあるリボンを見せてくるまっちゃに請われるままにアクセサリーをはずした。


「きゅぅぅぅ……」


するとどんどん小さくなって、最小サイズまで小さくなっていった。


「え?まさか……」


呆然と見ていると小さくなったまっちゃは易々と穴に入っていく。


「マジか!?」


「まっちゃ天才!」


「おー」


ぱちぱちと拍手するクオ。

3人して穴に顔を寄せまっちゃを見守る。


穴に入ってしまえば、そこはある程度、まっちゃが縮小前の大きさになるくらい、には広さがある。

とことこと宝箱まで歩いていき宝箱を押して穴のところまで持ってきた。

穴に手を入れるとすぐそこには掌に収まる大きさの宝箱。

しっかり握って穴から出し掌にのせなおす。


「と、とれちゃった……」


「きゅっきゅぅ~!」


穴から出てきたまっちゃがどんなもんだと1度旋回して胸をはる。


「まっちゃすげー!」


「すご」


「偉いね!まっちゃお菓子たくさん作るね!」


「私も」


「きゅきゅぅぅぅ!」


暫くみんなでまっちゃを良い子良い子していたが、宝箱の中が気になるので早速開けようとまっちゃはいつもの定位置、頭の上へ。


実はこの間にもミニ黒サンタが現れてたんだけど、ヤトの怒涛の攻撃で倒していた。ま、単独だったのがミニ黒サンタの運の尽きでしたね。


「開けるよ……ん?なにこれ」


パカリと開けると中からは光る正方形のブロックが出てきた。

くるくると回してみるも淡く光るだけで何も模様も図もない赤いブロック。


「えーと……3?何だこれ?これがアイテム名か?」


ヤトは鑑定を使ったようで名前を確認する。

私も使ってみるが、名前の他詳細は不明、と出ていた。


「イベントアイテム?」


「何だろうね?でもクオの言う通りイベントで使うんだろうね。それ以外考えられないし」


3人でうーん……と唸っているとまっちゃがくいくい、と裾をひっぱってきた。


「ん?」


「きゅっきゅきゅ!」


「んー?」


まっちゃに誘われるまま穴を覗き込み中をよくよく見まわす。


「あれ?これって?」


宝箱がなくなった空洞の底をみるとなんとなくピッケルのような形が浮かんでいた。壁や天井なんかもうっすらシミのような模様があるので、もしかしたら見間違えかもしれないけど。


「ね、なんかこれピッケルの形に見えない?」


「どれどれ?……確かにな。うまく隠してあるけど、確かにそう見える……かも?」


「ピッケル……採掘?」


え?ここ掘れってこと?


「でも武器でも壁壊せないんだぞ?ほら」


ギィィィィィンと嫌な音が響き渡る。


「でももしかしたらピッケルだったら壊せたりして……よっと!」


ヤトが剣で切りつけた壁にピッケルを突き立ててみる。


ピシ


「「「え!?」」」


そして3人で顔を見合わせ次の瞬間ヤトもピッケルを構え一心不乱に壁を壊す。壊す……こわ……す……。




2人で15分程掘ってついに壁がガラリと壊れた。


「やったー!」



「「「「おぉー!」」」」


まっちゃとクオが敵の警戒をしてミニ黒サンタがやってきたら迎撃してくれた。

こちらが何かやっている、というのに気付いた近くのグループもいつの間にか集まって一緒に迎撃してくれたので私たちは一心不乱に壁を壊すことが出来たのだ。


「この壁って壊せるんだな」


ぼそりと呟いたのは一緒に迎撃してくれたパーティーのリュウさんという男の人。ヤトは最前線で何回か会ったことがあるようで顔見知りだった。つまりトップクラスの人ですね。


「まぁ、壊したのは実験だけどな。壊さなくても宝箱は取れたし」


「え?ヤトさんそれってどうゆうことだ?確かに壊したとき何もなかったが……」


別に秘密にしておかなくてもいいと思ったので最初から説明。

だってもしこれがイベントアイテムで全部集めるのが進行に関係あったら私達だけじゃどうにもならないかもしれないし。


「なるほど……確かにイベントに関係あるかもしれないな。これ掲示板で拡散したほうがいいな」


「じゃ、適当にあげとくわ」


「よろしく頼むよ……それにしてもハナさm、いやハナさんの使い魔は凄いな!ぜひ積極的に宝箱を集めてほしいくらいだよ」


「確かになー。この壁壊すのって結構大変だったし」


「え?あ、うん、そうだね。まっちゃだったらすぐだもんね。というかリュウさん、今なんか言い間違えなかったですか?」


「よし!じゃ、俺たちもフォローするから全部の壁中の宝箱集めてみないか!?」


「あの」


「いいねー!それ楽しそうじゃん!ハナ、どうする?」


「だから……むー。宝箱集めるのはいいけどね!」


絶対ヤトわざとやってるでしょ!

私だって昔の無知すぎる私じゃないんですー。

最近は話題になかったけど変な宗教っぽくなってるのもう知ってるんだからね!


ぽん、ってクオも暖かい目で見ないで!


リュウさんのパーティーはリカさんという女性とリーヤさんという男性3人のパーティーだった。この3人でクランも組んでるらしい。うちと同じ少人数クランですね。


大勢でわいわいも楽しいな。

クオは人見知りが発動して私の背中からそっと辺りを伺っているけども、リカさんの猛アタックにちょっとずつ話が出来るようになってきた。

リカさんは元々クオのファンらしく始終感激していた。

恥ずかしがるクオを引っ張ってリカさんの前に出したり、そこにリカさんが抱き付いて奇声をあげたり。あ、ちゃんとクオが慣れてきて嫌じゃないのを確認してからやってるから大丈夫ですよ?

そんなこんなで3人できゃっきゃしながら楽しくお喋り。

ここからわかるように私達3人は完全に戦闘を放棄していた。

戦闘はヤトを筆頭にリュウさんとリーヤさんで十分まわっている。さすがトップクラス。ミニ黒サンタの10匹や20匹訳ないね。


いや、凄すぎるでしょ。


後ろはまっちゃが警戒していて時たま現れるミニ黒サンタを笑顔でリカさんが吹き飛ばしている。その間にさっとリュウさんかリーヤさんがやってきて片づける。その間もクオに、にこにこアタックを続けるリカさん。


何だろう。トップってこんな人ばっかりなのかな?


そんな楽しい時間を過ごしながらも壁の宝箱を回収していく。

いくつか回収するも、中から出てきたのは同じ四角のブロック。見た目は全く同じだけど名前が違った。5とか8とか16とか。それぞれやっぱり数字という共通点はあるが同じ数字はなかった。


歩いていくと急に広い部屋に出た。


「何だここは?」


「んー何もいないな」


「あ!ヤトさん、そんな簡単に入っちゃ……」


「大丈夫そうだぞ?」


「……みたいっすね」


リーヤさんの心配をよそにヤトはずんずん部屋へ入っていく。

続いて全員部屋へ入るも特に変わったこともなく。

あるのは部屋の中央にある四角いテーブルのようなもの。

全員なんとなくそこに近づいてみる。


と、近くへきたとたん、ふわりと光ってインベントリに入っているはずの集めたブロックが現れ、ふわふわとひとりでに飛んでそれぞれ違う場所に落ち着いた。

テーブル、いやブロックをはめる為の台座に自ら収まったブロックには先ほどはなかった図が現れていた。


「これって……」


「この台座を埋めれば何か起こるってことなのかな?ハナちゃんの持ってたブロック全部勝手に収まっちゃったからこの場所にはめるのは間違いなさそうだけどね」


「この升目からすると、このブロックは全部で1000個あるってことになるな」


地道に縦横の升目を数えたリュウさんとリーヤさんが戻ってきた。


ご丁寧に台座には薄く線が引いてあり、正方形の形をしていた。

どうやら縦20升横50升あったようだ。


「今見つけたのが12個だから……」


「あと988個」


「さっすがクオちゃん!」


リカさんがクオをなでなでしている。

うん、微笑ましい。


「こりゃ大変っすね。むしろ全部ハナさんにお願いしてバックアップしないと無理じゃないっすか?」


「確かにな。生産職でレベル31いってる人って多くないだろうし……」


考え込むリュウさん。

その通りです。私だってこんな高いレベルにいるの自分でも不思議ですから。




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