表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
154/176

140

船の材料も少しずつ揃ってきた。

スライム魔ゼリーはそこら中にいる魔スライムからドロップする。

1匹倒すと1個ドロップするようなので300体か……ヒメには後で素材を買い取らせてもらう交渉をさせて貰う約束になっている。

幻華は至る所の採取ポイントで採れる。ただ、1カ所で採れる量が少ないので何カ所も採取ポイントを巡らなくてはならないようだ。

ヒメも採取スキルを持っているらしく一緒に採取をした。モンスターに襲われたら2人とも手を止め倒してからまた採取、といった感じ。まっちゃが警戒してくれているけれど手早く採取。

次に魔の木。チャームウッドという木のモンスターがたまに落とす。

そう、たまに、なのだ。

今のところ5体に1本落ちるかどうかってところ。

これを100本とかちょっと気が遠くなる。

風の雫というのはフウーマという風の精霊みたいなモンスターからドロップする。しかし遭遇率がかなり低いらしくまだ1体としか出会っていない。

そしてまだ手に入らないのが千年魔樹と幻夢の綿。これの取得方法がわかっていない。ドロップでもないし採取でも見つかっていない。


そんなこんなで蝶々に続き奥へ奥へと進んで行く。


どれくらい歩いただろうか?

途中セーフティーエリアでお昼を食べたりしながら進み既に夜になる時間だ。

ゲーム内時間で朝一から始めたのですでに10時間近く迷いの森にいることになる。ヒメもまだ時間が大丈夫とのことでもう少し続けることにした。今リアルでは火曜の夜11時くらい。明日も学校なのであまり遅くまで出来ない。12時過ぎには寝たいけど、ここまできたらサティア様のところまでは行きたい。ヒメにお願いしてせっかくここまで来れたしね。


私一人だったら絶対ここまで来られなかったし。


夜になり出てくるモンスターが少しだけ変わった。

そしてフウーマの遭遇率が上がった。夜の方が出会いやすいらしい。

が、夜は暗くて戦闘しずらい。フウーマの体が若干透けているからかよく目を凝らさないと見えずらく戦闘も長引く。

それに幻夢の綿も見つけた。夜にだけ採取出来る植物らしい。


あとは千年魔樹か。こちらはまだお目にかかれない。

うーん、採取かドロップだけでもわかればいいんだけどね。


「結構来たけれどまだ先が長いのかしら?」


「私も初めてだから何とも……」


既に夜も明けゲーム内の時間は朝になっていた。

現実では深夜12時を過ぎた頃。そろそろ見つかってくれないときつい。


「そうよね。……それにしても、その光は一体何かしら?」


「うーん。害はなさそうだけど」


森に入ってお昼食べた後くらいから私の周りを3つの光の球がふよふよと纏わりついていた。その頃から森の中に同じような光が漂い始めたので同じようなものと思って放置しておいた。モンスターを現すアイコンも出ないし邪魔をするでもなし。そして一番はどうしたらいいかわからないので、結果そのままにするということになったのだ。


そしてここへきてその光がチカチカ瞬きだした。

ヒメも気にしないようにしていたようだが、この変化に気にならずにはいられないらしい。


そんな話をしながら歩くと少し先に開けた場所があるのが見えた。

そこに遠目からでも家があることが分かる。


ヒメと顔を合わせて駆け足で向かう。

すると程なくしてはっきりと煙突からもくもく煙を出す1軒の家が見えてきた。

森と敷地を区切るように築かれた可愛らしい柵の扉を開け入る。

どうやらセーフティーエリアや町中と同じようなエリアになっているらしい。

HPやMPが少しずつ回復している。


「ここ、かしら?」


「多分。蝶々もあの家の扉の前で止まってるし」


「きゅっ!」


安全だと分かったからかまっちゃは小さくなって頭の上でぐでーっと伸びている。疲れたよね、お疲れ様。


それをじーっと見るヒメにまっちゃを差し出す。


「疲れちゃったみたいだから抱っこしてもらってもいい?」


「し、しょうがないわね!ハナもお疲れでしょうし、ここはまだ余裕のある私がお運びしますわ!」


つん、とそっぽを向いて嬉しそうな顔を隠してまっちゃをそっと受け取るヒメ。

私が前を向いたとたんまっちゃをぎゅっと抱きしめてほうずりしながら嬉しそうに後ろをついてくる。そっと様子を伺うも夢中でこちらには気づかない様子。とろけきっている顔は普段のきりっとした顔とは全くの別物でとっても可愛らしい。


これが萌えっていうものなのでしょうか?


私が人知れず悶えながらも着実に足を進め目の前にはドアが。

蝶々は私がこの場へ着いたら消えてしまった。

役目が終わると効力が切れるのだろう。


気づくと私の周りに浮かんでいた光も消えている。

柵を超えるまでには確かに漂ってたんだけど……。

本当なんだったんだ?


ヒメの方を向くと、満足したのか既にいつものきりっとした顔に戻り、こくりと頷いてくれた。


コンコン、とノッカーを叩き声を掛ける。


「ごめんください!」


「はーい」


暫くして1人のとっても美人なエルフの女性が出てきた。


「どちら様かしら?」


「あ、えっと、朝早くにすいません。私ハナと言いましてシアのルートさんからサティア様という方に会いに行くように言われて来たのですが……サティア様ですか?」


「あら!いらっしゃい!そうよ、私がサティア。ルートから話は聞いているわ。さぁ、入って頂戴。後ろの方もどうぞ」


そしてサティア様に続き家へと入ると、リビングに案内される。

とても可愛らしいカントリーな内装だ。


テーブルに座りお茶を出してもらう。

まっちゃはテーブルでクッキーをヒメの手で与えられパクパク食べていた。


サティア様もテーブルに着き改めて自己紹介。

ヒメとまっちゃのことも話して本題です。


「さて、ハナちゃんはルートの試練をクリアしたのよね」


「試練?お店のお手伝いをしただけですが……」


「そうね、それで間違ってないわ。……魔女って言葉聞いたことある?」


「え!?」


いや、サティア様はプレイヤーじゃないし商人としてのラピスを知っているわけではない筈。ということはこのゲーム内でってことだけど、そうすると……。


「……称号の魔女の弟子、くらいしか」


「そう。そしたらそこからお話ししましょうか。魔女とはね……」


魔女とは魔法陣と錬金術を極めた者、その者が名乗れる称号のようなもの、らしい。魔女にならなくては使えない呪いという術式があり、錬金術師達はこぞってこの称号を目指す。

そして魔女となるにはある程度魔女の元で修業をし錬金術と魔法陣を修め、最後に元始の魔女と言われる人に認めて貰って、魔女としてこの世界に認められるらしい。

つまりルーマさんやルートさんが魔女という称号をもつ錬金術師でその課題をクリアした私は修業をしたことになっている、らしい。そして何を隠そう元始の魔女というのがサティア様であり全ての魔女の頂点に立つお方だそうだ。

というかルーマさんも魔法陣使えるってことなのかな?使えなそうな雰囲気だったけど、どういうこと?サティア様に言うと、苦笑いで「今あの子には魔法陣禁止してるの」と言っていた。何があった!?


そうか、私は魔女になる為にここにいるのか。

……名実ともに魔女になるわけですね。


その他にも魔女になると弟子がとれるだとか、新たな術式を覚えられるだとか、住民からの尊敬を集めるだとか……いろいろ特典があるらしい。


へー弟子なんて取れるのか。

弟子なら修業をつける為にある程度のことはお願いできるらしい。

お薬作りの補助とか、お店の店番とか。


ここ大事。


試しに聞いたら出来るんだって。

住み込みで修業つけるかわりに店番お願いするのは良くあることらしい。

確かにルーマさんもルートさんもお店持ってたもんね。

これはお店開店に一歩近づいたのではないでしょうか?


「さて、長々話してしまったけど簡単に言うとこんなところかしら?」


「なるほど、説明ありがとうございます。じゃあ、サティア様の試練をクリア出来れば私は魔女として認められる、ということですね」


「そういうことになるわ。……それと、そのサティア様っていうのはルートが言ったの?様なんてつけなくていいのに」


「あ、ルートさんがそう呼んでたのでなんとなく。それで定着してるというか」


「なんだか恥ずかしいけど、呼びやすいならそれでいいわ」


サティア様が恥ずかしそうにふふっと笑う。

綺麗なお姉さんは好きですか?


大好きです!


いや、こんなこと考えている場合じゃない。


「それじゃ、最後の試練、というかテストね。これが作れるようになれば魔女として認められるわ。……でも残念、最低条件はそろっているけどまだハナちゃんの技術と能力が追い付いていないようね。リバースという魔法陣が作れるようになったらまたいらっしゃい。もしこの辺で修業するなら2階の部屋が余っているから使ってちょうだい。ヒメリアさんも気兼ねなく使ってね」


「ありがとうございます。お言葉に甘えて使わせて頂きますわ」


「わかりました。レベルあげてきます!」


ここまで来るのにレベルが上がって魔導陣は現在Lv.48。魔法陣を極めるってことはLv.50で今までの感じからいくと世界樹図書館の試練をクリアしなきゃ作れないアイテムなんだろう。


現在魔導陣は世界樹図書館の9層まで取得している。

10層は時間が無くて行かなかったのでどんな魔法陣が覚えられるかはわからない。Lv.50ないと10層の試練は受けられないので先にレベル上げをしないとね。


しかし能力が足りていないっていうのはどういうことか?簡単に連想できるのはステータスってとこだが、足りていないということなのか。


「サティアさん、でよろしいかしら?確認したいのですけれど、この森は専用のアイテムがないと迷って出口に出てしまうのかしら?」


「えぇ、サティアでいいわよ。そうね、この森は迷いの呪がかかっているから何かしら抵抗出来るものがないと歩けないわね。あなた達はここまで導きの陣で来たのでしょう?そうねー……森で鍛練するなら魔法陣がないと進めないわね。ならハナちゃんとヒメリアさんに2つ依頼をしようかしら。1つクリア出来たらハナちゃんに“迷わずの陣”というものの作り方を教えるわ。これはこの森のような場所で効力を発揮する魔法陣なのだけど、これがあればこの森で迷うことはないの。2つ目がクリアできたらその迷わずの陣をヒメリアさんも使えるようになる方法を教えてあげる。どうかしら?」


ヒメと顔を見合わせ同時にこたえる。


「やります!」


「受けさせて頂きますわ!」


サティア様はにっこりとほほ笑むと1つ目の依頼を提示してきた。


「ではまず1つ目の依頼ね。ちょっと必要なものがあって、ある物を集めてきてほしいの。全部で3種類あって、1つ目は月夜の灯、2つ目が木漏れ日の雫、最後が祠の玉。全部森で手に入るわ。」


「あ、でも魔法陣がないから外歩けないかも……」


「そうね、じゃぁ私が作った魔法陣を売ってあげるわ。もしハナちゃんが作れるようになって使った枚数戻してくれればお金は返す、どうかしら?」


チラリとヒメの方を確認するとコクンと頷き大丈夫だと知らせてくれる。


「それなら大丈夫そうです」


「わかったわ。1枚1万ギルだから欲しかったら言ってね」


「あ、ありがとうございます。じゃぁ念の為2枚お願いします」


魔法陣高くないですか?


----------


クエスト

『サティアのおつかい』

クエストを受けました


報酬:魔法陣《迷わずの陣》


クエスト出現条件:称号:魔女の弟子取得


----------


クエストを受け、サティア様から迷わずの陣を買い取る。その後簡単な説明を聞きヒメとそのまま2階へと向かう。2階にはベッド、机、テーブルセット、タンスというような簡単な家具がある同じような部屋が4部屋あった。


そこの1つに入りメニューを開く。

そして死に戻り地点の変更をする。いつもはホームに設定しているのだが、今回はこの“サティアの家”という地点だ。問題なく登録出来たのでほっと安心する。


しかし地点として認識できるという事は転移地点にも登録されているかも……やっぱりある!これは朗報ですね。これならヒメも私に合わせてここにとどまらなくても良くなるかも。


……でも私のリストでいうとここって16カ所目なんだよね。

今売り出している転移石は基本rankCで、NPCから買えるものもrankC。そうすると転移地点って15ヶ所までしか表示されないんだよね。しかも順序は決まっているから自分で行きたい15ヶ所を選べないっていう。


もしヒメがホームを買っていなければ15ヶ所でギリ使えるんだけど、どうかな?


とりあえずヒメがいる部屋へと行きノックして了承を得てから部屋へと入る。

まずは確認。


「私そろそろログアウトしなちゃなんだけど、ヒメはどうする?」


「私もそろそろ落ちようと思ってたから大丈夫よ。寝ないと明日に響きそうだものね」


既にリアルでは深夜1時を過ぎようとしている。

さすがに寝ないと寝坊しそうだ。


「それで明日の予定なんだけど、私ログインは夜しか出来ないんだよね。ヒメは?」


「私も明日は少し予定があるので早くても20時からしかログインできないわ」


「そのくらいなら私も大丈夫かも。じゃあ、20時にログインして森に行こうか」


「そうね、そうしましょう」


でもログアウトする前に確認だけはしておかないと。


「ヒメは転移石って持ってる?」


「ええ。いくつか買ってあるわ。……もしかしてここって転移地点なの?」


「そうみたい。ちょっと確認してみて。どう?ここの場所ってリストにある?」


「……ええ、あるわね。でもこれで15ヶ所目だから次の地点が出てきたらもう使えないわね」


良かった、ホーム持ってなかったみたい。

でもこれで転移石を使ってこの場所に来られるとわかった。


「ヒメには手伝ってもらうし、私平日は夜しかログイン出来ないから、もし昼間インするならこれ使って」


そして私は10個ヒメに転移石のrankCを渡す。

もっとあるけど渡しすぎは怪しまれるし良くないよね。


ヒメは困った顔をしたけど受け取ってくれた。


「ではこれは対価ね。このクエストは私にも利のあることなのだから。でもこの申し出は助かるからありがたく貰うわね」


そう言って1万ギル渡された。

確かに転移石は1個1000ギルなので丁度のお代だ。


「それじゃあまた明日、暫くよろしくお願いね」


「こちらこそ!」


そしてヒメにおやすみなさい、と挨拶をして自分の部屋に戻った。

明日から頑張るぞー。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ