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よろしくお願いします。
本日1回目のログイン。
宿題をやらなきゃいけないのでちょこっとだけ。
最近は造船所へ入る為にスキル上げに没頭していたので忘れていたが山人のスキルを育てようと思います。
まずはウォルターニアの建築屋さんへ行ってホーム施設の増設です。
そう、私、山を買います。
畑が買えるんだから山も買えるでしょ……多分。
さっそく転移陣で飛び建築屋さんへ向かう。
「いらっしゃいませ」
「こんにちは。ホームの増設をお願いしたいのですが」
「かしこまりました。こちらへどうぞ」
アイラさんに連れられいつもの部屋へと入る。
そして本を開き山を探す。
どうかありますように……あった!
よかった、これでどうにか進めそう。
しかし高い。
一番基本の山で鉱石の種を育てる部屋が1つしかない。最高20個までしか育てられないようだ。
ここから拡張していくと育てられる部屋が増えていくようだ。
ま、最初は20個でもいいけどさ。
鉱石は育てるのにかなりの時間がかかる。
だから将来的には最大まで部屋を拡張出来ればいいな、と思う。
しかしお金がない。
ベースの山は1つ100万ギル。
この前ちょこっと稼いだけど全然足りない。
山人のスキルを試すのはもう少し先になりそうだな……。
今回増設するのは諦めたが、せっかくきたので他にも何か良さそうなものがないかざっとリストを眺める。
するとリスト外のオプション項目の中に“設備ランクアップ”という文字が光っていた。
ポチッと押すと新たな画面が開いた。
そこにはホームに置いてある工房設備のランクアップが可能なものが書かれている。
あ、そういえばこの前ヤトと一緒にクランのクエスト受けた時、設備の更なるランクアップが可能だ、というようなことを言っていた気もする。これのことか。
生産に使う設備が軒並みランクアップ可能になっている。
更にベッドやお風呂なんかも出来るみたい。
お 金 が な い
ランクアップは安いものでも10万ギルからだ。
いや、それくらいは今も出来るけどさ。
どんどん山が遠くなる……。
さらに造船室も作る予定なので更に出費が。
造船室も最初から更にランクが上の設備を購入可能になっている。
その分金額もどーんと跳ね上がってるけどね!
優先順位がつけがたい。
あれもこれも欲しい、欲しくてたまらない。
とりあえず親方のクエストクリアしたら暫くお金を稼ごうかな。
うーん、ここはやっぱり建物だけ買ったお店を開くべきか。
NPC雇ってこっそり初めてみようかな。1日に売る量を決めてそれが終わればその日は閉店。買取は怖いのでやめて、あんまり売れなかったらまた屋台に戻せばいいし。
ま、クエストクリアしてからだけどね。
無期限とはいえ、放置しておくのは気持ちが悪い。
よし、そうと決まればホームへ戻ろう。
そして迷いの森に行く為の準備をしましょう。
さて、行ってみましょう。
目の前に鬱蒼と茂る森を見てちょっと腰が引けるが、私には魔法陣があるんだから大丈夫、ともう一度気合を入れる。
本日2回目のログイン。
1回目のログインでウォルターニアからホームへ戻り、魔法陣やらお薬やらを補充したので準備はばっちりです。
今回ログインしてすぐに迷いの森の入り口へとやって来た。
フェアリーの里へとんで少し南に歩けばすぐ森だ。
まだ1度も来たことが無かったので、まずは魔法陣なしで行ってみようかな?
どのくらいのレベルかもわからないし。
ここの推奨レベルは20くらいらしいんだけど、それはあくまでパーティーの話。まっちゃと2人で来たのはちょっと無謀かなとも思いつつ挑んでみる。
ヤトとクオは学校の用事でリアルが忙しいらしく今日明日ってログインできないらしい。明後日まで待てば良かったんだけど気になったので来てしまいました。少しは戦闘のレベルも上がってるし、なんとかなるかなーって。
「まっちゃ、お願いね!」
「キェー!」
よし、ともう一度気合いをいれる。
森に入り小道を歩いて行くとモンスターが現れた。顔が葉っぱの形をしたリーフンという半人型モンスター。
「ファイアーボム!」
すかさずまっちゃが襲いかかる。
それを追い、私も斬りこんだ。
何度かそんなやり取りがあり、辛くも勝利。
思った以上に戦闘に時間掛かってしまった。それに1回の受けるダメージ量が多くて危ない場面もあった。
今は1体だから良かったものの複数出てきたら無理かも。
とにかく進んでみよう。
と、思って足を進めると目の前が開けて森を出てしまった。少し先にはフェアリーの里が見える。
え?
もう?
もう出されちゃった!?
迷ってすらいなかった気がする。
森にいられる時間はまちまちとは聞いていたけれど、こんなに早く終わってしまうとは……。
よし、魔法陣を使おう。
せっかく来たのだから少しは様子みないとね。
失敗してもルートさんのとこへ行けば売ってもらえるらしいし。
試さないと何もわからないもんね。
えーと。
森に入ってから魔法陣を使えってルートさんは言ってたよね。
少しだけ森に入り、入り口が見えなくなるくらいまで歩いて魔法陣を取り出した。
「導きの陣」
そう唱えると魔法陣が光を放ち綺麗な蝶々になった。そして私とまっちゃにキラキラ光る粉をふりかける。
するとガラリと景色が変わった。
今までは1本道しか無かったのに目の前には何本もの道が延び、更に複雑に交わっていた。
「こりゃ迷うわ」
思わずそうつぶやく。見えていても迷いそうだし。
さて、道が認識できたは良いがどこへ進めば良いのか?
さっきの蝶々が案内してくれるのか。
「サティア様の家ってわかる?」
ルートさんが様付けだったので、何となく私もそのまま呼んでしまう。
蝶々はくるりと回ってから、1本の道へと進んでいく。
あ、通じた。……通じたんだよね?
とりあえず行ってみますか。
そして足を1歩踏み出した時、後ろから急に腕を捕まれその場でたたらを踏む。
「きゃっ」
バランスを崩して転ぶということは無かったが、びっくりした。
何だと思って振り向くと、見たことある人がいた。
「大丈夫!?貴女正気!?……あら?」
あちらも気づいたようで、お互いじっと見つめ合う。
「貴女確か武闘大会の時の……」
「はい。あの時は助けて頂きありがとうございました」
そう、今私の腕を掴んで止めたのは武闘大会の時、絡まれたクランゴーストから助けてくれたお姉様だった。装備はグレードアップしているが、全体的な雰囲気は変わらないのですぐそうだとわかった。
「やっぱりあの時の。あれ以降嫌がらせはない?」
「はい。友達とクラン作って入ったので今は大丈夫です。あ、私ハナって言います。まだ名乗って無かったですよね」
「ハナさん?私はヒメリアよ、よろしく」
ヒメリア?
ヒメリア……。
ヒメ……。
「え?姫様?」
あの、ヤトといつも張り合ってるヒメリアさんだよね?
「その呼称はあまり頂けないわ。せめてヒメって呼んで頂戴」
眉をしかめてちょっと不機嫌そうにそう言う。
そんな顔なのに綺麗だな、と思ってしまった。
「あ、ごめんなさい。私も呼び捨てで構いませんから」
「そう?そう言えばハナは何をしていたの?様子が変だったから思わず止めたのだけど」
「え?どんな風でした?」
普通にしていたつもりだったけど、何かおかしかったかな?
「蝶に話しかけたと思ったら、フラフラとそこにある木に向かって進むから、モンスターに操られたのかと思ったのだけど……正気よね」
ヒメは不思議そうに首をかしげる。
あ、私って他からはそんな風に見えてたんだ。
ふらふら木に突っ込む女……そりゃひくわ。
「実はあるアイテムを使って目的地に導いて貰ってたんです」
「アイテム……?じゃぁ惑わされてたわけでは無いのね?」
「はい」
「ごめんなさい。私の早とちりね」
「いえ!心配してくれてありがとうございます。ヒメは1人なんですか?」
周りには私達以外にプレイヤーはいないし、ヤト達からヒメもソロって聞いてたからそうだと思ったんだけど、一応問いかける。
「あぁ、敬語もいいわよ。気楽に話して。そうね、私は基本ソロなの。迷いの森で一狩りするつもりよ。ここはソロで行けばまぁまぁレベル高いし人も少ないから良い狩場なの」
あー……やっぱりここレベル高いんだ。さっき戦った感じで私達には早いなと思っていたけど、ヤトレベルのヒメが言うなら間違いないよね。いや、どう考えても進める気がしない。
せっかく導きの陣使ったのになぁ。
「ハナはさっき目的地があるって言っていたけど、この森で迷わず進めるの?」
「実はこの蝶々がアイテムみたいなもので、目的地にいけるの」
「凄いじゃない!」
ええ、凄いのです。
ま、そこまで辿り着けたら、ですが。
……いや、無理か。
せっかく魔法陣使ったけど無駄になっちゃったかも。
やっぱりヤト達と予定合わせてから来ればよかったかな。
……と、そう思えば目の前にヤトと同レベル帯だと思われる方が。
じーっと見つめたからか、ヒメは首を傾げて不思議な顔をしている
「あのー……もし、本当にもしヒメの時間があるなら私と一緒にパーティー組んで目的地まで一緒に行ってもらえませんか?ちょっとレベル的に不安で……ヒメもいつもいけないようなエリアで戦い放題、私は目的地に行ける、といいことづくめ、なんちゃって……」
よく考えたら自分からあまり面識がない人とパーティーを組もうとしたことがないかもしれない。なんて言っていいかわからなくてしどろもどろになってしまう。
するとヒメは可笑しそうに、しかし上品にクスクスと笑う。
「ええ、そうね。お互い利のある関係というわけね。ま、そんなに緊張しなくてもパーティーくらい組むわよ?未知のエリアなんてお釣りが出ちゃうんじゃないかしら?」
そしてパチリとウィンクしてくるヒメはとても可憐で。
やっぱり姫様と呼びたい!と思うがそれは自重しよう。
「ありがとう!そう言ってもらえると助かる。まぁ、既に入ったことある人もいるかもしれないけどね」
「情報としてはあがってないのだからいいのよ」
「そっか。あ、あとこのことは出来れば……」
「わかってるわ。このことが広まればまたハナ大変なことになってしまうものね。心配しなくても言いふらさないわよ」
「ありがとう!」
まっちゃを紹介してさっそくヒメとフレンド登録をしてパーティーを組む。
「……凄いわね」
パーティーを組んだら蝶々が飛んできてヒメにも光る粉を振りかけた。
ヒメも道が見えるようになったようで呆然とつぶやいた。
「この蝶々が案内してくれるの」
「そう、では行きましょう」
ヒメとどんな戦い方をするか話しながら進む。
ヒメがチラチラとまっちゃを気にしてたので、後でモフっていいよと言うと顔を真っ赤にしてモフるの否定してたけど最後には小さく後でね、と言葉をこぼした。
なにこれ、めっちゃ可愛い。
凛としたお姉さんが照れてる姿、ギャップ半端ない。
ヒメは聖騎士みたいなことがやりたかったらしく、盾と剣を持ち、光魔法が使えるらしい。回復は今後に期待、と言ったレベルみたい。
そして戦闘ではやはりヒメの独壇場。
私とまっちゃは基本フォロー。
何だか最初に戦った迷いの森のモンスターよりレベルが高い気がする。
ヒメもそう感じたようで、生き生きとモンスターを狩っていった。
はい、ヤトの同類ですね、わかります。
ヒメがヤトの事を目の敵にするのは同族嫌悪ってとこなのかな?ヤトは逆にヒメと本当は仲良くしたそうだったけど。ヤトからしたら友は類を呼ぶってとこか。
そのことをヒメに聞いたら嫌ってはいない、ライバルだと言っていた。
クランメンバーとまでは言わなかったけど友達だと言うと驚いていた。確かにあまり接点なさそうだよね。
あとどうやら話を聞くとクオと仲良くしたくて、一番仲が良いヤトに嫉妬しているようなことがうかがえた。ヒメはどうやら可愛い人やものが大好きらしい。
そんな話をしながらどんどん進む。
奥に進むにつれて更に戦闘はきつくなったけど、ヒメの戦闘力が高いおかげでなんとか進める。まっちゃが回復出来るのも大きい。お薬ではやっぱり戦闘中は回復が追いつかない時もある。
でもお薬もかなり役に立っている。
もう出し惜しみは無しだ。今回はリバースポーションも作ってきてあるので何かあっても大丈夫だ。最初にヒメにも渡してあるのでもしもがあれば使ってくれるだろう。