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次の日。
クオと合流しまずはリルマのギルドへ。
そこで報告をして報酬を貰い、お互いそれぞれ目的のところへと別れた。
私は勿論道具屋のグリムさんのとこですよ。
「こんにちは」
「いらっしゃい、ハナさん」
「依頼の素材集めてきました!」
「ありがとう。うん、じゃレシピは君のものだ」
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クエスト
『素材の補充をお願い』
クリアしました
報酬:『塗料』レシピ
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「ありがとうございます!」
よーし、これで準備はできた。
まずはマイホームでルアーと釣り竿を作ってみる。といってもせっかく色々貰ったのでrankCだけど、貰ったもので最初はやってみよう。
ダメなら自分で作りましょう。
ルアーを削りだしルーマさんのところで買った塗料を塗っていく。そして紫鉱石からアメジストを作成し瞳部にはめ貰った針を付ける。
よし。
あとは竿に糸を通し、リールをセット。
そして作ったルアーを着ければ出来上がりです。
あれ?
これだけだったら塗料のレシピ探す前でも出来たんじゃない?
ま、まぁ気にしない。
今日はよく晴れた日だし、絶好の主釣り日。
絶対釣ってやるからねー!
「まっちゃ、お願いね!」
「キェー!」
やってきました湖の中心。
ではでは、一応タブレットでドーピングして釣りますか!
えいっ。
……。
ぐっ
きた!
「くぅー!」
きたきたきた!
この手ごたえ、絶対普通の魚じゃないよ!
「お、も、いー!」
「《倍力》」
やばい、ウォーリア湖の主より全然重いよー!
結構な時間左右に竿を振り主と格闘していたが、ついに釣り上げる時が来た。
「《一本釣り》!よいっしょ!」
ざっぱぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!
「きたぁ!」
釣り上げたのは先日見た主と同じ、魚。
黄色い鱗で覆われ、尾びれと胸ビレが手足のようになっている、魚。
……絶対歩けないよね。
ってか、魚、だよね?
顔は魚だもんね!
どぉぉん!
今回も船のへりに落ちぐらぐらと大きく揺れる。
「ぅわぁぁぁぁ!」
揺れると分かっていても竿を持つ私は他につかまることもできず尻もちつきそうになる。そこをまっちゃがしっかりと支えてくれたので助かった。そしてある程度ぐらぐらしたのがおさまった頃、いつもの浮遊感が襲い身体の自由が奪われた。
ぐらぐら揺れる船から主は一度飛び跳ね湖面へダイブ。
がしかしすぐに顔を出し、釣り針から逃れようと左右に顔を出しながら泳ぎ回る。
そうはさせまいと必死で釣り上げようとする私。
ここまで行動は一緒だな。
Gyogyogyogyogyo!
よし、こっからだ。
「まっちゃ、お願いね!」
「キェー!」
まっちゃは主に向かって攻撃を繰り出した。
私もそのサポートをするために釣竿を左手で持ち右手で魔法陣を放とうと構える。
が。
「え?」
油断はしていなかった。
しかし片手では力が足りなかったようだ。
主にぐっと引かれて気づいた時には空中にいた。
「は?」
そして次の瞬間には水中にいた。
「がぼがぼがぼ!?」
あ、生産するので〈水泳〉外したんだった。
装備も水着じゃないから動きにくいし。
視界の隅でまっちゃが必死に主に攻撃しているがあまりきいていない。
水中では主の強さがアップするらしい。
さっきまではちゃんと効いてたのに。
そんなことを思っていると視界が暗転した。
あぁ、久しぶりの死に戻りだ。
そして気づいたらマイホームの転移陣前にいた。
「強かった……」
私の力だけじゃ無理そうだな。
私はしっかり竿を持っていないと話にならない。
水中だと絶対敵わないもん。
まさに水を得た魚、って感じ。
「まっちゃは召還できないか……」
はぁ、1時間は何も出来ないしバザーでも行ってこようかな。
あ、お金!
……前回の銀の翼からのお金がパーですよ。
建築屋さんよってホームで貯金出来ないか確認してこよう。
アイラさんのところで木工設備とガラス工設備の値段を確認する。宝石の細工セットは別だったのでそれも。それから一覧を見ていると豚さん貯金箱というものが目に留まる。
これでホームでも預けたり引き出したりといったことが出来るらしい。
見た目の可愛さに反し値はするがこれは必須ですね。
全部で50万Gですか。
またお店で稼がなくては……。
ちょっとバザーを巡りホームへ帰る。
そしてお店用の商品を作る。
しかしまだ死に戻りのせいで満足な生産は出来ない。が、《時間短縮》なら関係ないのです。
秘薬を使ってrankAの薬草や高級薬草を使いお薬を作りましょう。これでrankCの高級薬草を使って出来るrankAと同等の物が出来るのです。秘薬で説明文をいじってしまえばあら不思議。これがrankCだとは誰もわかりません。
ちょっとずるだけど時間をかけずに出来るのは魅力なのです。
そしてベッドでMPを回復しお薬類を作った。
最近はミーアとキララが頑張ってくれてrankAのキノコ類や雫草も収穫できている。
1か月くらい引きこもったおかげもあり蓄えは結構あるのです。
ベッドの回復だけでは足りなくてMPポーションを数個使ったが無事作り終えた。
そしてやっと1時間経ちまっちゃを再召喚出来る時間になった。
「召還」
「きゅう!」
「ごめんね、まっちゃ」
そしてぎゅっと抱きしめる。
「きゅっきゅ~!」
次はもっとちゃんと対策取らなきゃ。
「次こそ主やっつけようね!」
「きゅっ!」
しかし先ほど確認したのだが、竿もルアーも船も大破したらしく、全て作り直さなくてはならないようだ。再戦はもう少し先かも。
とにもかくにもアクティブウッドがないと話にならない。
どうせなら船もアクティブウッドで作ってしまおうではないか!
「よし、まっちゃ。アクティブツリー狩りだよ!」
「きゅっ!」
そして風の丘に向かった。
それから2日間ひたすらアクティブツリーを狩りまくった。
丁度土日だったのでマックスまでログインしてひたすら狩りまくりました。
さらに稼いだお金でバザーでアクティブウッドを買い集めた。
そして月曜。
私は気づいた。
テスト週間に入りました。
もともと帰宅部なのでテスト週間に入ったと言っても何も変わらないのだけど、さすがにゲーム三昧はまずい。下手に赤点取ってゲーム没収とかなったら嫌だし。
でもこの中途半端なところで放置も落ち着かない。
ということで。
帰宅後1時間ちょっとゲームで遊んで、夜がっつり勉強することにしました。
土日はテスト前だから流石にゲームしないけどね。
そして辛いテスト週間が開始されました。
帰ってきてゲームログインして船をひたすら作って勉強して。
うん、勉強するにも我慢してストレスためちゃ出来るものも出来なくなっちゃうよね。
……よね?
そんなこんなでテスト最終日を迎え。
「解禁だー!」
「きゅっきゅ~!」
「ららら~!」
「らららー!」
よし、今日からがっつりやるぞー!
テスト最終日は半日で平日だけど時間あるしたくさんできるね。
そしてアクティブツリーを狩り、船をひたすら作り、息抜きに他の道具を作成し、気づいたら更に3日経っていた。
結局主に敗れた日から2週間も経ってしまいました。
そういえばお店も開いて目標金額貯まったので設備も増設しましたよ。勿論豚さん貯金箱もね!最近はこまめに入金しています。
手元に置いとくのは怖いです……。
まぁ、足りないアイテムをバザーでいろいろ買ったりしてたのでそんなに残って無いですが。
そうそう、木工設備を投入したおかげで船の加工は更に良くなった気がします。まだ他のレシピは作って無いけど、船造りで一緒にレベル上がったし、一石二鳥です。
そしてついに待ちに待った再戦の日です。
今日は土曜で予定もないのでガッツリやりますよ!
しかも晴天、釣り日和です。
「よっ!ハナきたぞー」
「おつ」
「いらっしゃい!来てくれてありがとう!」
そうです。
わたし1人じゃ敵わないとわかったので応援を呼びました。
丁度ヤトとクオ、2人とも予定ないようなのでよかったです。
「まさかハナが主釣りやってるなんてな」
「最近主がいるって知ってね。でも少ないけど他にも主釣ってる人いるよね?」
「いる」
掲示板で調べてみたらウォーリア湖で主を釣ったって人もいた。
ウォーリア湖の主出現条件は雨の日一番深い場所で釣りをすることと、〈釣り〉がレベル25以上だということ。レベルが低いからか私とまっちゃでも倒せたみたいです。
「あぁ、でもここターニア湖の主はまだ誰も釣ってないだろ?」
そう、何故かこの主を釣り上げた人は誰もいない。
もしかしたら掲示板とかに書き込んでないだけかもしれないが。
失敗している人の殆どは船の問題が大きいみたい。
小さなボートは道具屋さんで売ってるんだけど、それ以上のものは見当たらないらしい。
小さなボートだと主が釣り上がった時の揺れに耐えられずこわれてしまうらしい。
そしてボスフィールドへ移行することもなく終了。
もし運よく戦闘へとなっても水中へ引き込まれ即終了、ということだった。
やっぱり水中戦闘は無謀らしい。
そしてルアーも作れる人を探すのに苦労しているとのこと。
ほとんどの人が生餌で挑戦しているみたい。
生餌は、釣りのアーツにモンスターを餌化するものがあるのでそれを使う。
戦って弱ったところを捕まえるのだ。
しかし生餌でのヒット率が少なく、餌の調達が難しいみたい。
好き嫌いもあるらしくて好物を現在調査中らしい。
ま、私は絶対生餌使いませんけどね。
「よし!ここの主釣り上げて1人目になってやろうぜ!」
「そだね。1回負けてるから今度こそ釣り上げてやる!」
「おー」
「きゅー!」
そして船に乗り込み、まっちゃが引いて釣りポイントまで行く。
船は人が乗ることを想定して今までよりちょっと大きめに作ってある。
双頭船になっているので1つの船の先端に1人立つ感じかな?
すぐにポイントに着き、先に渡しておいたタブレットを皆飲んで準備万端。
ポーション系のお薬も渡してあるので何かあれば使ってもらおう。
……私は手が離せなく役立たずだろうから。
「じゃ、いくよ?」
2人とも獲物を構え既に臨戦態勢だ。
まっちゃも大きくなって空中で様子を伺っている。
「《魚影探知》《倍力》」
アーツを発動しありえない大きさの魚影にルアーをなげこむ。
すると直ぐに食いついてきた。
「きた!くぅー……」
お・も・いー!
でも今日はこの前の私と同じだと思わないことです。
船制作の気分転換もかねてアクセサリーを作ったのです。
アクセサリーの装備枠は全部で6個。
使い魔の指輪は外すことが出来ないので残りは5個。
ネックレス(STR+10)、ブレスレット(DEX+15)×2、サークレット(STR+12)、アンクレット(DEX +11)
これで少しは足しになったのではないでしょうか?
『主に挑む者』の称号を貰った時上がったのがSTRとDEXだったからこの2つを上げてみました。
それにアクティブウッドで作った釣竿はrankA、STR+25となっている。
そのかいあってか前よりもちょっと早く釣り上げる段階まできた。
「みんな、いくよ!」
「いつでもいいぞ!」
「おけ」
「キェ!」
「《一本釣り》そぉれっ!」
ざっぱぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!
「よし!」
どぉぉん!
今回も船のへりに主が落ちぐらぐらと大きく揺れる。
今回は揺れると分かっているので体を括り付ける場所を用意した。
現在そこに括り付けられています。なので本当に動けません。腰くらいまでしかない高さなので上半身は自由だけど……。
はやまったかな?
でも前回みたいになるのだけは避けなければ。そしてある程度ぐらぐらしたのがおさまった頃、いつもの浮遊感が襲い身体の自由が奪われた。
ぐらぐら揺れる船から主は一度飛び跳ね湖面へダイブ。
がしかしすぐに顔を出し、釣り針から逃れようと左右に顔を出しながら泳ぎ回る。
そうはさせまいと必死で釣り上げようとする私。
よぉし!気合い入れて引くぞ!
Gyogyogyogyogyo!
「くっ!」
かなりの力で引かれている。
これは確かに片手じゃ無理かも。
「おらおらおら!」
「キェー!」
「サンダーストーム」
皆が前で頑張ってくれてるから私も釣り上げる勢いで頑張らなきゃ!
今日のヤトの獲物は大剣だ。
ばっさばっさと切りつけている。
ヤトの高種族レベルは27だったはず。
クオもレベル20になったっていってたから、私も少しは頑張らなきゃな。
クオは雷魔法と昆をうまく使い戦っている。
後ろから頑張れと念を送るしかない私は、必死に竿を握る。
主は鱗を飛ばしてくる攻撃してきたりやっぱり体当たりをしてきたりと序盤は魚らしく戦っていた。鱗を飛ばす攻撃からは動けない為、もろに当たってしまった。まっちゃが隙をみて回復魔法をかけてくれるが危ないときもあった。
やっぱり私のレベルではまだ早い敵だったのかも。
そして敵のHPが1/3を切ると、なんと手足のようなヒレで格闘戦のように主が戦いだしたのだ。
「《拳返し》!」
ヤトは相手が格闘戦を挑んできた時点で大剣を捨て拳を突き出していた。
主は湖面に立って拳を構えていた。
おかしいな?
魚、だよね?
しかし格闘戦になったとたんヤトの独壇場でした。
クオとまっちゃも左右から攻撃をするんだけど、ヤトの攻撃が凄すぎて凄すぎて。
Gyogyoooooo……
皆のおかげでどうやら主を倒す、いや、釣り上げることが出来たようです。
「釣ったぞー!」