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マリアとタクの試合も付き合ってもらって行ってみた。
マリアは残念だけど予選落ち。1R目のバトルロイヤルでは勝ち残れたんだけど、2R目で敗退してしまった。
タクはちょっと危なかったけど無事明日の予選トーナメントには進出決定。
「タク!マリア!」
ちょっとヤトとクオに時間貰って2人に会いに来ました。
2人も同じパーティーやクランの人がいるからちょっとだけ祝勝お茶会です。
「マリア惜しかったね。あと1人倒せれば予選トーナメント進出だったのにね」
「ま~私は前衛っていってもいつもの役割は遊撃だからね~。乱戦ならなんとか立ち回れるけど、純粋な戦闘力はそうでもないのよ~」
「いや、遊撃でそれだけ戦えれば十分だろ。いや、むしろ戦えすぎ」
そうゆうものか?
私はパーティー戦闘とかってあまり良く分かっていないのでマリア凄いとしかわからない。
「そういえばハナ勧誘大丈夫だった~?」
「うん。みんなイベントでそれどころじゃないのかまだ声かけられてないよ。クオも一緒にいるし大丈夫だよ。ありがと」
「お、クオさんってあの黒猫だろ?ちょっと話してみたいけどなー」
ん?
クオもヤトみたいに二つ名持ち?
「黒猫って?」
「あ、ハナは知らなかったか~。クオさんってヤトさんと一緒にいること多いから嫌でも目立っちゃうんだよね。それでいつもヤトさんに隠れてちらりと警戒しながら相手を見る様が猫っぽいって話になって~。しかもクオさんってすっごく可愛いじゃない?庇護欲をそそうというか、それで耳やしっぽが黒っていうのもあって黒猫って呼ばれてるの」
「見守る会もあるとかないとか?いや、でも本当可愛いよなー!眼鏡……」
「「かけない!」」
「……だよな」
まったく。
タクは可愛い子見つけるとすぐ眼鏡かけさせたがるんだから。
「ヤトさんも美人だもんなぁ……ぜったいあの眼鏡似合うと思うんだが」
「ま、本人が良いって言えばいいんじゃない?」
「でも無理強いはしないよ~に!」
「ほ、本当か!?わかってるって!」
「あ、私は仲介しないから、自分で何とかしてね?」
「……それじゃ無理だろ」
うーん、ヤトはまだ可能性もあるけどクオは無理かな?
ま、タクには己の力で頑張って貰おう。
そして1時間くらい話してお互いの連れのところに帰って行った。
私もヤトとクオのところに戻り、夜はちょっとお洒落なお店でヤトの祝勝会をした。
街中は街から出られない以外は変わりがないのでお店も同じものがある。ヤトのお勧めでデザートのラインナップが豊富なお店でした。ここはクオと私のおごりでヤトには沢山デザートを食べて貰った。
夜は宿屋に泊まって1日目は終了。
因みに宿はタダでした。
イベント2日目。
今日は予選トーナメントが行われる。
昨日の10時にはトーナメント表が発表され、対戦相手や時間がメニューのイベントページにUPされていた。
ヤトは5試合目で2時半からだ。そこで勝ち上がれればもう1試合ある。
絶対勝つと思うので次の試合時間もチェックした。
勝ち上がれば9時半から2試合目が始まりそれに勝てば最終日の決勝トーナメントに進むのだ。
今回はきちんと1試合ずつやるらしく1試合30分らしい。
試合のルール説明は0時15分からで選手は2試合前には待合室に集合しなければならないようだ。それに遅れると自動的に失格らしい。
今日はヤトと一緒にルール説明を聞き、そのまま試合観戦。
そしてヤトは1時過ぎには待合室行くことになっている。
この時にクオと一緒にまた屋台巡りをする予定だ。
今日はお好み焼きが食べたい気分。
昨日からソースの匂いが忘れられないのだ。
「はいは~い!皆さん昨夜はよく眠れたかな~!?今日も盛り上がっていきまっしょ~!」
わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
「でわっルール説明でっす!今日は予選トーナメント!昨日のうちに、皆さんのメニューにあるイベントページにトーナメント表がUPされているはずですが、確認して貰えたかな?基本1試合25分で、それまでに決着がつかない場合はHPを何割削れたかで判定しまっす!なのでみんなじゃんじゃん攻撃しちゃってねー!もし早く終わってしまっても次の試合の開始時間は早まりません!なので選手の集合時間が早まったりもないので安心してね?」
確かに。
それまで違うコロッセオにいたり、屋台にいってたりしたらどのくらい早まったかとかわからないもんね。
「戦闘のルールは昨日と同じで回復アイテムの使用は禁止!スキルでの回復はOKでっす!あとは使い魔、テイムモンスターの共闘も禁止されているので気を付けてね?あとはどんな武器を使おうがどんな魔法を使おうが無問題!持てる全ての力を以て相手にぶつけちゃえ!」
使い魔禁止っていうのは知っていたけど、テイムもダメなんだね。
まぁ2対1とか、テイムモンスターだったら下手したら6対1もありえるもんね。
でも確かにいつも一緒に戦っている子達と駄目っていうのはちょっと辛いよね。
まぁ、相手からしたら多人数対1っていうのは卑怯って感じると思うからどっちもどっちなのかも。
まぁ、これだけ多くの人がいっぺんに同じ土俵で戦うっていうのは無理があるのかな?
これは今後のコロッセオ大会に期待ですね。
私もまっちゃとだったら一緒に出てみたいもん。
「さーて!良い時間になってきましたー!ではそろそろ1試合目に移りたいと思いまっす!では選手の入場でっす!」
わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
頑張れ、負けるな、お前に賭けてる、なんて声がそこかしこから聞こえてくる。
って賭けてる?
「もしかして賭けもやってるの?」
「あれ?ハナ知らなかったのか?運営公認のトトカルチョってやつ」
「ヤトに1000G」
「え!?クオ賭けてるの!?」
まさかのクオが既に賭けてることに驚き。
「昨日賭けた」
「昨日のトーナメント表がUPされた時点で受付開始してたからな。その試合が始まるまでは受付してるから興味があればハナもやってみれば?」
「そうだね。屋台行く前にヤトに賭けてく」
現実では賭け事とかってちょっとやる気にならないけど、ゲームなら別。
楽しまなきゃ損だよね?
「おー!こりゃ負けられなくなっちゃったな!」
「ヤト負けない」
「負ける気もないでしょ?」
そして3人で笑い合う。
まっちゃはよく理解していないのか首を傾げていた。
そして1試合観戦してヤトは待合室へ行くため席を立つ。
1時半までに行ってればいいので一緒にトトカルチョの受付まで行ってくれた。
そこでヤトにしっかり1000G賭け、ヤトを見送る。
どうやら1人につき1000Gが限度らしい。
1口100Gからなので10口買った。
そしてクオとまっちゃと買い出しへ出かける。
この屋台が出ているエリアも空間が拡張してあるらしく、とても広くなっている。
屋台は途中参加も可能らしい。確かに昨日より数が増えている気もする。
「迷う」
「うーん。こっちも美味しそうだけど、あっちの麺入りも捨てがたいんだよね」
「きゅきゅきゅぅ~」
既にまっちゃはベビーカステラのようなものをひょいぱくと食べている。
……なんだかもうなくなりそうなんだけど。
「決めた」
「あ、やっぱりあのオオダコ入りのタコ焼きにするの?」
クオはこくんと頷き列に並ぶ。
「クオ、私やっぱり麺入りのにするからあっちの屋台並んでくるね?」
「おけ」
「じゃ、終わったらコールするね!」
そして一旦別行動でそれぞれ目当ての屋台に並ぶ。
「結構かかりそうだなぁ……」
目当ての屋台は人気らしくて列が他よりも長かった。
お好み焼きって焼く時間もあるから、進み具合にむらができるんだよね。
見ると丁度焼き始めたところなので、まぁ、ちょっと待つかと列の最後尾へ向かう。
「あの、すいません、ハナさんですよね?」
「え?」
まさか声をかけられると思っていなかったので、驚いて止まってしまう。
そこにはツインテールの可愛らしい女の子がいた。
「えっと……」
が、今まで会ったことはない、と思う。
「すいません、いきなり。実は今ハナさんをある場所に呼んでくる、というクエスト受けていて、本当に申し訳ないんですけど一緒にきて貰えませんか?ちょっとだけでいいんです!」
目をうるうるされて縋りつかれてしまう。
「え!?ちょ、ちょっと落ち着いて!」
ほら、周り皆みてるじゃない!
私が泣かせてるみたいじゃない!
「クエスト破棄すると評価落ちるし、相手からも最低評価つけられるって言われて、でもこのクエスト成功させないとランク上げ間に合わないんです!」
凄い勢いでまくし立てられあわあわする。
そんなの知らないよー!
ってかクエスト評価とかあったんだっけ!?
よくわからない!
「お願いです!私を助けると思って!」
やめてー!
泣かないでー!
「わ、わかった。行けばいいのね?依頼がすんだら私もすぐもどるから!それでもいいなら……」
「本当ですか!?ありがとうございます!こっちです!」
最後はかぶせ気味に言葉を遮られ、腕を引っ張られ走り出す。
『コール、クオ』
………
『ハナ?』
『あ、クオ?なんかちょっと面倒に巻き込まれたみたいで連行され中。すぐ終わると思うから先に観覧席戻っててってうわ!』
と、いきなり路地を曲がられ転びそうになる。
が、なんとか態勢を立て直しついていく。
思わずまっちゃを落としそうになったけど、なんとか力を入れて抱え込んだ。
「きゅっきゅー!?」
ごめんね、まっちゃ。
さっきのでクオとのコールが切れてしまったけど、大丈夫だろうか?
そしてクオに連絡することに精いっぱいでどうやってここまで来たかわからなくなってしまった。
帰り道は地図を見ながら帰ろう。
「つきました!」
そんなことを考えているといつの間にか人気のないエリアにいた。
家が密集している場所で細い路地しかない。
しかし、いきなり開けた広場に出た。
そこには十数名もの人が待っていた。
あれ、この人達って。
「ようこそ、ハナさん。よく来てくれたね。ご苦労、アン」
「ちょろいっすよリーダー。うるうるしたらすんなーり付いてきてくれました!」
いやいや、結構強引だったよね?
というか依頼とかの話は嘘だったのかな?
「……確かクラン“ゴースト”」
「お?我々の名前をご存知とは、嬉しい限りだね」
「いや、以前自分で言ってたよね?」
「きゅー!」
確か、前リルマでこの人に勧誘を受けた。その時自分で名乗ってたのに。
あ、まっちゃも覚えてる?
「っく、そんなことはどうでもいいんだ!ハナさん、そろそろ我々の仲間になってくれませんかね?今日は良い返事を貰いたいものだ」
「だから、私はクランには入りません。特にあなた達みたいな強引な手を使うような人達とは絶対に合わないので断固拒否します」
するとリーダーらしきこの男は考えるように口を開いた。
「……そうそう。今日一緒にいたクオって子と仲いいのかな?」
「は?何言って……」
「その子が楽しくこのままこのゲームを続けられるといいんだけどなぁ」
ちょっと待て。
それ、どうゆうこと?
「わからないって顔してるね。PKもできないこのゲームでもちょっと怖がらせることくらいできるんだよ?」
「ちょっ……」
それってクオを標的に何か良くないことをするってこと。
「クオは関係ないじゃない」
「でも、我々は是非ともハナさんと一緒に仲良くしたいんだよ」
バカじゃないの?
「じゃあ、私はこのゲームをやめる」
「きゅっ!?」
そんなことでクオに迷惑をかけるくらいならやめた方がましだ。
ごめんね、まっちゃ。
「そうか、それは残念だ。ちょっとストレスがたまってそのはけ口を探してしまうかもな?まぁ、それならそれでいいんだが」
「きゅー!」
まっちゃは腕から抜け出し男を威嚇する。
でも男はそんなこと構わずニヤニヤ笑ってこっちを見ている。
気持ち悪い。
つまり私がやめたらやめたらで、クオに嫌がらせをするってことでしょ?
それでもいいなら止めろ、と。
やめられるわけないじゃん。
「きゅきゅぅ〜……」
ごめんね、まっちゃ。
これから更に迷惑かけるかも。
心配そうに見つめてくるまっちゃに申し訳なくなる。
でも。
「……わかった、あなた達の仲間に」
「ちょっとお待ちなさい!」
「だ、誰だ!?」
良い考えなんて思いつかなくて、でもクオが酷いことになるなんて嫌で、悔しいけどこいつらの仲間になるしかないって、思った時。
何故か上から声がふってきた。