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「レディースアンドジェントルメーン!ようこそ『武のコロッセオ』へ!この日が来るのをずっっっぅと待っていたぞー!今日は自分の力を思う存分発揮しその力を思い知らせてやれー!」
わぁぁぁぁぁぁ!
いきなり声が響いたと思ったら舞台の上に一人の男がいた。
コロッセオは円形の闘技場で、中心に50m四方の戦いの舞台が在る。そしてその舞台をぐるりと囲むように観覧席が設けられ、その席は段々と上に繋がっていた。
私達がいるのは舞台と観覧席最上階の丁度真ん中くらい。
周りの熱気が凄く、つられて段々テンションが上がってきた。隣のクオと目が合う。クオも興奮してるらしく薄っすら頬が赤い。
「さーて!ここから説明に入るぞ。っとその前に俺はこのコロッセオを担当する司会のエースだ。皆よろしくな!皆もう分かってると思うが、ここにいるのがイベント参加者全員ではない。今回に限りコロッセオは4つ設置されている。あぁ、受付に行けば他のコロッセオにも移動出来るから安心してくれ。そしてこれから2日間予選を行い、3日目最終日が決勝トーナメントだ!皆盛り上がってるかー!?」
わぁぁぁぁぁぁ!
「今回のエントリーは3万5千人を超える。4つのコロッセオに振り分けられた選手達は、まず1日目のバトルロイヤルで32人に絞られる。2日目で予選トーナメントを行い、勝ち上がった上位4人が3日目の決勝トーナメントへ進むことが出来る。3日目は各コロッセオで勝ち上がった総勢16名の決勝トーナメントが行われ頂点が決まる!対戦表なんかはメニューのイベントページから見られるので確認してみてくれ。それと今回参加を諦めてしまった人達も、最後まで応援してくれよ?最後までいると全員に参加賞が貰えるぞ!ま、優勝者や上位陣は賞金やアイテムが貰えるから参加賞は無しだがな。よーし!話が長くなってすまなかった!これより武闘会を開催する!皆盛り上がっていこうぜー!」
うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
おおー……なんかイベントって感じだな。
あの司会の人は運営の人なのかな?
今回のイベントも3日間行われるんだ。知らなかった。
「ハナ、移動する?」
クオはヤトの出る時間や場所を確認しているようで、メニューを見ている。
「そうだね、ヤトの試合って直ぐかな?」
現在はゲーム内時間で0時10分くらい。
「コロッセオBの2試合目。1時半から」
私もメニューを開いてみると現在地はコロッセオDになっていた。
ということは移動が必要だ。
タイムスケジュールには0時25分からルール説明、30分から1試合目が始まると書いてある。
1時半ということは2試合目か。
「どうしよっか?観戦用に何か屋台で食べ物買ってくる?」
するとクオはちょっと目を見開きコクコクと首を縦に降る。可愛い。
「じゃ、行こうか?」
「きゅっ!」
まっちゃも食べる気満々ですね。
それからクオとまっちゃとコロッセオの周りにある出店を回った。プレイヤーの人達が出してるみたいで凄い賑わいだった。
司会の人も言っていたが、今回屋台の出店も許可されている。事前の申請をしておけば自動的に場所を確保出来るらしい。
色々見て私はクレープ、クオはチョコバナナ、まっちゃは串焼きを買った。あと観戦用にポップコーンと飲み物も買い込んだので準備はオッケー!なんだかお祭りみたいで楽しかった。
それに今まで声をかけてきた人もいない。チラリと見られたことなんかはあるけど、やっぱりイベント中だからかな?それとももう諦めたのか。後者だったら嬉しいけど。
ともかく久しぶりに買い物を堪能した。
「そろそろ会場いこっか?」
「おけ」
「きゅ〜」
そしてコロッセオの中へ。受付の奥には5つの扉があり、それぞれローマ字がふられている。そのBの扉を潜る。
一瞬の浮遊感の後無事にコロッセオに到着した。
前のは既に終わっているらしく、舞台には誰もいなかった。
試合開始時間まであと10分。
席はちらほらと空いているようだったので中段辺りに並んで座る。
さすがに一番前はあいていなかった。
さっそく買ってきたポップコーンを出して時間までおしゃべりをする。
すると時間はあっという間に立ってしまい試合開始になった。
「みなさーん!お待たせしました!それでは第2回戦を開始しまっす!あ、私はこのコロッセオ担当のユーリでっす。よろしく!」
わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!
やはり熱気が凄い。
思わず私も拍手して盛り上がっています。
「それでは早速―……転移開始!」
すると舞台上空に丸いテレビのようなものが現れた。
そこは草原と森が組み合わさったようなフィールドで、次々とプレイヤーが召還されている様が映っていた。
そして目の前には長方形の画面が現れ、こちらにも同じ映像が映っている。
「それでは準備はいいかなー!?いっくよー!カウントダウン開始!」
5
4
3
2
1
START!
映像の上空に大きく数字がカウントされ、同時に電子音でもカウントがなされる。
そしてスタートと同時にぶつかり合うプレイヤー達。
中にはその場を一旦離れて様子をみるプレイヤーもいる。
「はーい、始まりました2回戦!今回から観戦する人もいると思うので、まずは簡単にルールの説明しまっす!」
お、ありがたい。
正直意味がわからないまま始まってしまったので焦った。
1回戦前のルール説明ちゃんと聞いておけばよかった。
「今回のバトルロイヤルですが、まずは別フィールドで戦ってもらいます。それがこの画面に映っているものですねー。現在この別フィールドは一気に20ヶ所も展開されています。1つのフィールド内にいる選手はだいたい50名ちょいくらいですかね。そこで30分間互いに戦い合ってもらうのです。そして勝者1名がこの舞台へと召還され、勝ち残った者たちで戦います。その上位4名が2日目のトーナメントへと進めるという訳です」
20ヶ所!?
まぁ今回の参加者3万5千人って言ってたもんね。
たしかにちまちまやってたんじゃいつまでたっても終わらなそう。
「別フィールドでのバトルロイヤルは時間がきても1人に絞られない場合はその人のポイントによって勝者を決めます。ポイントは1人倒すごとに5点、倒すまではいかなくても戦闘することで1点、5分間戦闘をしていないと-3点となってまっす。それでも同点数の人が残った場合は倒したプレイヤーの総レベル数が高い方が勝利です!それでもきまらなかった場合はAI判定となりまーっす!どうかな?わかったかな?」
ということはずっと隠れていてやり過ごすのはあまりいい手ではないのかな?
まぁ、それで最後1人残れればいいけれどタイムアップした場合は確実に負けるもんね。
あ、でも同じようにずっと隠れている人が勝ち残ったらどうなるんだろう?
AI判定なのかな?どっちがよりうまく隠れれたとか?
「それと画面の説明ですね!舞台上にある球体の画面はこちらがランダムで戦闘箇所を映していきます。それぞれの目の前にある画面はお好きな場面に切り替えられるのでじゃんじゃん右上の検索で好きな選手を検索してね!」
これ、かな?
“ヤト”と入力して検索ボタンを押す。
するとヤトが戦闘している映像が映し出された。
「「おぉー……」」
ちょうどクオも検索したところで驚きの声がハモってしまった。
顔を見合わせ同時に噴き出す。
「タイミング一緒だったね」
「相性抜群」
「ぷっ……」
その感想はどうなのよ?
「きゅっきゅ!」
まっちゃの声につられて見ると丁度ヤトが相手を殴り倒しているところだった。
さすがですヤトさん。
「ヤト、楽勝」
「だね。他に強い人いるのかな?」
「……知ってる名前なさそう」
検索の隣にあるアイコンをクリックすると今見ているフィールドの参加者名が表示されるようだ。クオが開いているのを見て私もやってみる。
名前が灰色になっている人がちらほらいる。
どうやら倒されると名前の色が変わってしまうらしい。
「ヤト、囲まれた」
「え?」
リストに集中するあまり映像の方をよく見ていなかった。
どうやら脅威と思った者が結託してヤトを倒そう、ということのようだ。
「おぉーっとヤト選手これはピンチだぁー!」
どうやらメインの方でもこの場面がクローズアップされているらしい。
ヤトが囲まれている様が大きく映っていた。
「これは絶体絶命かぁ!?1、2、3人もいるぞ!?ヤト選手どう切り抜ける!?」
その言葉通り3人の男の人に囲まれているヤト。
でも表情は絶体絶命とは言い難いとっても素敵な笑顔です。
ん?何故だろう?
囲んでいる方が絶望的な表情なんだけど……。
うん。さすがヤトです。
「早い早い!ヤト選手の拳がとぶぅ!キリヤ選手脱落!マサル選手脱落!最後のムム選手は耐えられるか!?」
ヤトさーん。
早すぎるでしょ。
一瞬で相手へ間合いを詰めパンチ、キックの連続。
後ろから切りかかったはずのマサルさんは後ろ蹴りで吹き飛ばされていた。
そして後ろにある木に打ち付けられたと思ったら、そこにはキリヤさんを倒したヤトが。
いや、怖すぎでしょ。
最後のムムさんもヤトと同じく格闘系なのか拳の打ち合いが続いている。
……でもヤト絶対手抜いてるでしょ?
顔のニヤケが隠しきれてないよ!
「と、ここでなんと乱入者だ!もしや木の上で機会を伺っていたな!?」
打ち合っているヤトの背後にすたっと飛び降り切りかかる女性。
が、しかし。
「なんとヤト選手飛び上がったぁー!?」
それを予期していたようにヤトはムム選手の頭に手を付き、ひらりと飛び上がりムム選手の背後へ。
切りつける対象を失った剣は浅くムムさんを切りつける。
その隙にムムさんはヤトに倒されてしまった。
「何ということでしょう!ムム選手驚きながらのリタイヤだぁー!残念!」
そしてヤトは切りかかってきた相手を紙一重でかわし、1発。
向かってくる剣を手でさばいてバランス崩したところに3発。
最後はアーツを使っていたのかな?
そこで相手は倒れた。
「ヤト選手!乱入してきたホズミ選手を《爆裂拳》でノックアウトだー!強い!強い!強すぎるぅー!」
律儀にカメラに向かってピースを決めるヤト。
そして次なる標的を探して駈け出した。
「ヤト、この調子なら勝ち抜け大丈夫そうだね?」
「余裕」
「きゅきゅぅ~」
そしてメインの映像は他の選手へと移ったようだ。
今度は戦士風の男の人が映っている。
その後もヤトは特に苦戦もせず余裕の1位で舞台へと召還された。
「ここからは生で戦い見れるんだね。なんだかこっちが緊張してくる」
クオも舞台を見つめながら頷いている。
舞台にはここまで勝ち上がった20人が等間隔で円を描くように並んでいる。
「さぁ!ここに猛者共をけちらした勝者が20人集まった!明日の予選トーナメントに進めるのはいったい誰だ!?」
中心でマイクを持ち話していたユーリさんはダッシュで舞台を降りながら叫ぶ。
「この舞台のバトルロイヤルは場外もリタイヤに加わるから気を付けてねー!」
そして少し離れたところにある高い位置の司会席に座った。
「ではでは!お待たせしました!第2試合2R試合開始!」
カーン!
わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
どこからともなくゴングがなり、選手達は一斉に駈け出した。
「あっ!そこ!いけっ!うわぁ……あれは痛そう」
「ヤト!」
乱戦になり後ろから決まったパンチにヤトがよろける。
思わず、といった感じでクオも大きな声が出る。
しかしヤトは倒れたと見せかけ、地面に両手をついて勢いを付け相手を蹴り上げていた。
「さすがヤト」
「心配して損」
そしてクオは恥ずかしそうに顔を赤くする。
自分でもあんな大きな声を出すとは思っていなかったのだろう。
それを見てニヤケそうになる頬を引き締めヤトの応援をする。
そして程なくしてトーナメントに出場する4名が決定された。勿論ヤトはその1人。
「はーいではこの4人が明日のトーナメント進出でっす!皆さまお疲れさまでした!では第3試合は2時30分からでーっす!」
終わった。
凄かったなぁ。やっぱりモンスターと違って対人戦は迫力が違うな。
「ヤト入り口にいる」
どうやらクオにコールがきたらしい。
そして3人で入り口に向かうと、こっちに気づいたヤトが手をふっていた。
「お疲れさま!トーナメント進出おめでとうヤト!」
「おつ。おめ」
「きゅっきゅ~!」
それぞれヤトに声をかける。
「いやー、一瞬ひやっとした場面もあったけど無事勝ててよかったよ」
「ヤト余裕」
「さすがヤトって感じだったよ!」
「きゅっきゅ~!」
そんな感じで歩きながら屋台へと向かう。
そして新たに食べ物を買い込んで名前の知られているプレイヤーの出ているコロッセオを巡った。ジーンのも見たけど圧倒的だったよ。なんか一振りで何人も飛んで行ってたし、1人レベルが違う感じでした。