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視界が開けるとそこはこのダンジョンの主の扉の前だった。変わったところと言えば転移できる石碑がなくなっているということだろうか。


そして目の前には驚いた顔のヤトとクオ。

周りには知らない人達が。いや、知っている顔も見つけた。


「ハナじゃねーか!まさかこんなところで会うとわな!」


「ハナちゃーん!」


「ぐぅっ……」


ドスンと突っ込んできたリリーを受け止めると変な声が出てしまった。

そこにいたのは銀の翼、ジーン達のパーティーだった。


「ハナ達も1位通過か!しかも3人でとかすげえな!」


「ありがとう。まさか選ばれるなんて思ってなかったからかなり驚いてるよ」


そしていまだに引っ付いているリリーを何とか剥がして一息つく。


「皆!ちょっと集まってもらえるかな!」


後ろから聞こえた声に振りかえる。

知らない男の人が手をあげて注目を集めていた。


「どうやらここには各街の代表者が集まっているらしい。この5パーティーでチームを組んでこのボスに挑戦するのが一番効率がいいと思うのだがどうだろうか?」


「いーんじゃねーか?」


「こっちもそれでいいよ!」


「うちもいーよー」


ジーンに続きおそらくパーティーのリーダーであろう人達が次々と返事をしていく。


残りは私達のパーティーだけ。


こういうことに慣れていない私はどうしたらいいのかわからなくてヤトとクオに視線を送る。


2人とも頷いてくれたので大丈夫だということだろう。


「わ、私達も大丈夫です」


恐る恐る返事を返す。

一応リーダーだもんね、しっかりしなきゃね。……柄じゃないよー、ヤトに変わって欲しいよー。


チラリとヤトを見るとニヤニヤしているので、私の考えはお見通しなのだろう。


うぅ……いじわる。


「よし、じゃぁ今から作戦を立てる。といっても相手がわからないからお互いの戦力の確認と役割分担を決めるだけかな。リーダーは集まってくれ」


そして先ほど発言した人達が集まっていく。


え?私が行くの?無理じゃない?


「ジーンさんと知り合いなんだろ?何かあったら助けて貰えよ」


そう言ってヤトに背中を押される。


もう、なるようになれ!


そして私も話し合いの輪に参加する。まずは戦力の確認だ。次々にポジションの構成等があげられていく。


「え、えっと。うちは基本3人とも前衛ですが、そのうち2人は魔法も使えるので後衛も出来ます。一番の戦力は赤い髪の子です。それと使い魔が1匹いて魔法も使えます。あとはハイポーションも数揃えてきたので多少回復もいけます」


こんなんでいいのだろうか?


「君のとこの赤い髪の人って、ヤトさんだよね?」


「あ、はい、そうですが……」


ヤトのこと知ってるのかな?

取りまとめてる男の人が話しかけてきた。


「バトルジャンキーか……」


誰かがポツリと呟いた。


え?何その物騒な響き。

いや、ヤトにはぴったりな気もするけど。っていうかヤトって有名人?


「ならヤトさんにはメインの攻撃ポジションに来てもらってもいいかな?レイドだろうから取り巻きも現れるはず。君ともう1人、それに使い魔の3人にはそちらを担当してもらえるとありがたいのだが……」


「わかりました!それが終わったら後方支援ですか?」


「そうだね、それでお願いするよ」


その後はサクサク決まり、全員に作戦を伝えると同じポジションで戦う人達と挨拶をした。


各パーティーから1番強い人が基本はメインボスを担当。その他の前衛は2手に別れて取り巻きを担当。タンクは3つに別れて前衛を補佐。後衛は基本メインボスだが、そこは臨機応変に。


こんな感じだ。


私とクオは聖騎士団というクラン所属パーティーの人達と一緒だ。


挨拶をすると気さくに返してくれ、緊張が多少ほぐれる。しかしクオは人見知りだし、私も初めてのレイドで緊張していてガチガチだった。


でもいい人達みたいだから大丈夫だろう!


リラックスリラックスと笑顔で話しかけてくれる眼鏡のお姉さん、キーラさんに感謝だ。


「よし、準備は出来たな!行くぞ!」


始めに皆に声をかけてその後も取りまとめしてくれているフーさんの声にそれぞれ答える。


私もこっそりおー、と声をあげてみた。それはクオも同じだったらしく、目が合いちょっと恥ずかしげにお互い笑った。


既にまっちゃも私もタブレットで強化済みだ。ヤトとクオにも渡してるので大丈夫だろう。


フーさんが扉を開けそれに続き歩を進める。


全員が入りきるとバタンと扉がしまる。既に体の自由はきかないので、大人しく成り行きを見守る。


『誰だ……我の眠りを妨げる者は……』


お腹の底に響くような恐ろしい声が目の前の闇の中から聞こえる。


部屋に入ってからは黒い霧に阻まれ視界は不明瞭。しかし声と同時に赤い2つの光が禍々しく光った。そして耳がとれるのではないかと思うくらいの叫び声。それと共に私達を強風が襲う。


その風で霧が吹き飛ばされ、ついにその先にいるこのダンジョンの主を視界におさめた。


その先にいたのはドラゴン、だろうか?黒く光る鱗でおおわれている5メートルはあるかと思われる巨体に赤く光る瞳。しかし翼はなくなんというか……恐竜っぽい。えーと、なんだっけ?ティラノザウルス?そんな感じだ。


そしてその主を取り囲むように小ティラノがわらわら出てくる。


Gyaoooooooooooooo!


もう一度ボスが吠え戦闘開始です。


まずは取り巻きを担当する2つの集団が小ティラノに突っ込む。

勿論私達3人も突っ込む。


そして何とか取り巻きを2つに分断させ、私達は左側の担当だ。


その間にもヤトやジーンのいるメイン集団はボスへと迫る。


後衛からは魔法が飛んでくる。

こちらにも援護が飛んでくるのでありがたい。


それでも倒れる小ティラノはいないので結構強いのだろう。


ユキさんとお互いパーティーの人達で連携して倒した方がやり易いだろう、と話してたので取り巻きを2つに分断した後、更に2つに分けることになっていた。


私達の担当は4匹かぁ。


ちょっと厳しいな。でもどうにかしないと、ね。


「《桜咲》」


出来るだけ引き付けて一旦散らす。


「《爆裂棍》」


そしてタイミングを合わせてクオがアーツを繰り出す。


まっちゃは他の2匹の間を上手く飛び回って注意を引き付ける。しかし結構なダメージを受けているので急がなければ。


私はアーツが終わると同時に残りの1匹に向かっている。

クオもアーツが終わりそのまま攻撃を継続中だ。


「ライトトルネード!」


まっちゃの援護で2匹の小ティラノに向かって魔法陣を放つ。

ボスも小ティラノも黒いのでなんとなく闇属性っぽいなと思って。


結構効いてる気がする。気がするだけ?

まっちゃも自分に回復魔法をかけ回復してるのでもう少し頑張ってもらおう。


「おまたせ」


そこへ1匹を倒しきったクオが現れる。

そして小ティラノを挟むようにポジションを取る。


「ファイヤートルネード!」


特化の魔法陣だけど、効果はどうだ?……うーん、あまり相性はよくないみたい。普通のライトトルネードの方が効いてる気がする。


とにかく今は斬りまくる!


まっちゃ、待っててね!


やはり2人いるとその分早く倒せるな。早めに倒してまっちゃのもとへ。


ちょいちょい援護で魔法陣は撃っていたので、まっちゃもその隙に回復していたがHPはギリギリだった。


「おまたせ、まっちゃ!」


まっちゃにハイポーションを投げつけ回復させる。


そして1匹をクオと挟んで倒し、最後の1体は皆で囲んで倒した。


回復する暇がなく、全員HPが2割切っていた。


まっちゃのMPなんて0だよ。


ハイポーション、MPハイポーションでそれぞれ回復させ後衛に合流する。


ユキさん達も終わったみたいだ。しかし2人いなかった。やられてしまったのだろう。

ユキさん達もダメージを受けていたのでハイポーションを渡す。一瞬躊躇したものの、お礼と共に受け取ってくれた。今は時間がないからね。


右側の小ティラノもあと2匹くらいで終わりそうだ。多分私達のところが一番小ティラノが少なかったのだろう。応戦する人数が一番少ないってのもあったけど、なんだか申し訳ない気がする。


しかし今はそんなこと考えてる暇はない。ユキさん達はボスの戦闘に合流することになっている。


私達はここで魔法の援護だ。


「《守人の舞》」


まずは〈舞踏〉のアーツでステータスアップです。

邪魔にならないように一歩下がって舞を踊る。


後衛の方々の視線が痛かったが踊りきるまで止まれません。

皆さんもはっとしたように攻撃を開始しました。良かった……。


しかしここは意外と人数が多いな。


前線ではアーツの連続攻撃が行われていた。私もあっちの方が役に立てるかな?


しかしこういった多人数の戦闘は初めてで、どうやって動いたらいいかわからない。


ここは下手に動くよりここで援護している方が良いだろう。

下手に参加して失敗して迷惑かけられないしね。


「ヤバい、MPが……」


そんな声が聞こえたのでそちらを向くと、さっきまで強そうな魔法を放っていた人の手が止まっていた。悔しそうにボスを睨み付けている。


あ、魔法が打てないと攻撃出来ないもんね。


「あの、良かったら使ってください」


「え、でも……」


「他の皆さんもまだMPハイポーションの在庫はあるので、どんどん強力なの撃っちゃってください!」


その人は私とMPハイポーションを交互に見て一瞬考え込んだが、えいっと一気に飲み干した。


「お礼は後で必ずする!」


「早くボス倒してくれれば十分ですよ」


実際プレイヤーのトップの集団だと言うのにまだまだ先は長そうだった。


ということでどんどん魔法撃ってきましょー。


私もライトトルネードを打ちまくりです。まっちゃは回復をして前衛さんの周りを飛び回っています。


その後は撃って回復しての繰り返しだった。


そしてだいぶ弱ってきた頃、ボスティラノが前衛を無視して後衛に突っ込んできた時は慌てた。それまでもダークボールのようなものを吐き出してこちらにもダメージは受けていたので、回復が間に合わず後衛は全滅寸前。


もう一度後衛に向かって突進してくるボスティラノの前にいた人2人を突き飛ばして何とかかわす。


しかし結構ダメージを受けてしまった。


それにムカついて思わず《瞬斬》を使ってしまったが、ほとんど効いてなくて落ち込んだ。


しかし皆が体勢を立て直すくらいには時間が稼げたのでよしとしますか。


ボスティラノの後ろからアーツ発動させたから、終わった後目の前に大きな口が待ち構えていた。


もう、だめだと思った。


他の人もそう思ったんだろうね。

後ろからヤトとジーンに名前を叫ばれてるのが聞こえたよ。


そんなことお構いなしで迫ってくる、口。




そして私の視界は暗転した。







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