魔森編5 ~忌み子~
更新ペースが毎日から変わります
遅くとも1週間に一話はあげられるようにします
基本は2~3日で投稿しつつ書き溜めしていこうと思います
上手く書ければ毎日でも上げようとおもいますが
すこし心に余裕を持とうと思います。
申し訳ございません
目が覚めるとシルクが飛びついてきた
暁「おぉ、おはようシルク!腹減ったか?飯作るから待ってな」
シルクの頭を撫でながら言うと嬉しそうに尻尾を振った
朝食は昨日手に入れたアポの実を剥いて焼いた肉と一緒に出してあげた
最初は訝しげにアポの実の匂いを嗅いでいたが一舐めすると美味しかったのか食べ始めた
アポの実は味も林檎にそっくりでとても美味しかった
朝食を食べ終わった後シルクと一緒に辺りを探索する事にした
出発する前、念の為に石で刀もどきを作っておいた
硬化をかけた御蔭で全力で岩に叩きつけても折れなかった
やはり素手で戦うよりか何か武器があった方が安心する
試しに石刀を振り回してみるなかなか良い感じだ
そんな事を考えているとシルクが袖を引っ張ってきた
シルクの方を見ると森の方へ走っていき立ち止まって振り返ってくる
暁「何かあるのか?」
シルク「がう!がうがう!」
まるで着いてきてというように咆えている
シルクの後をついて森の中を進んでいくと少し開けた場所に出た
辺りを見回してみるとシルクが何かの近くで咆えている
暁「シルク!?」
急いで駆け寄ると角の生えた小さな女の子が倒れている
暁「大丈夫か」
抱き上げてみると微かだが反応があった
鑑定をかけてみると衰弱しているのが分ったので癒し球をかける
暁「コレで大丈夫だろう・・・
でもこんな場所に人が居るなんて思わなかったな
シルクここら辺に人が居る場所か・・・この子と同じ匂いがする人が居る場所は分るか?」
シルクに問いかけるとまた走り出した
女の子を背負い暫くついていくと洞窟がありシルクがその前で座ってしまった
どうやら此処に人が居るみたいだ
暁「シルクは此処で待っててくれ」
そう言い残し洞窟の奥に進む
暫く進むと光が見えてきた
???「どちらさまでしょうか?」
いきなり声を掛けられ驚いているとヨロヨロと人が出てきた
女の子と同じ角の生えた人だ
暁「この子のお知り合いでしょうか?」
そう言いつつ背負っていた女の子を見せる
???「スイ!!」
そう叫ぶとヨロヨロと近寄ってくるが途中で倒れそうになる
暁「大丈夫ですか?この子は眠っているだけです無理しないでください」
女性を支えながら言う
???「この子は私の娘です!でもどうして・・・森に果物を取りに行っていたはず」
暁「森で倒れていたところを私の連れが見つけたのです」
???「そうだったのですか・・・こんな所ではなんです奥へどうぞ」
またフラフラと歩き出したので引き止めて抱える
キチンと食べれていないのか女性は片手でも持ち上げられるほど軽かった
???「えっ?あっあの!」
暁「失礼だとは思いますが辛そうだったので・・・」
笑いながらそう言うと女性は顔を真っ赤にした後、俯いて大人しくなった
大人しくなった女性を抱えたまま女性が出てきた方へと歩いていく
???「先程はご迷惑をおかけしました」
洞窟の奥にあった寝床のような場所に女性を下ろすと女性が頭を下げてくる
暁「いえいえ此方こそ申し訳ありませんでした」
もう一つあった小さな寝床にスイと呼ばれた子を寝かせる
???「あの・・・貴方は私やこの子を見ても何も思わないのですか?」
そう恐る恐る怯えながら問いかけてくる
暁「普通の人間・・・ではなさそうですが別になんとも思いません
貴女が襲い掛かってくるなら別ですが・・・」
あらかじめ人間じゃない種族がいると聞いているから驚く事は無い
人じゃないからといって嫌悪感があるわけでもないので思った事を伝える
笑いながらそう伝えると女性が泣き始めてしまった
暁「どっどうされたんですか?何か失礼な事を言ってしまいましたか?」
突然泣き始めてしまった事に驚いたが女性を泣かせてしまったという罪悪感に襲われる
???「い、いえ嬉しかったのです・・・この子も私も人に忌み嫌われる存在
同族にすら嫌われこの『魔森』へ逃げてきたのです」
そう泣きながら話してくれた
暁「聞きづらい事なんですが・・・忌み嫌われる理由は何故なんですか?」
本来ならそんな辛い事話したくないだろう・・・
案の定女性は話すべきかどうか迷っているようだった
???「その・・・この子は『忌み子』なのです・・・
『忌み子』とは『人族』とその他の種族の子の事を言います
他種族と子を生せる(なせる)のは人族だけなのです
『人族』は他種族に嫌われ、『人族』も他種族を忌み嫌っています
基本的に『忌み子』は生まれてすぐに殺されるか捨てられるのです
この子は昔・・・私が人族の賊に襲われ・・・その時に身篭ってしまった子なのです
当時はどうすべきか両親に相談したのですが・・・この子を産んですぐに殺す事になったのです・・・
ですが・・・お腹の中でこの子が大きくなっていくにつれて・・・情が移ってしまった・・・
忌み子でも生まれてくる子に罪はないと思い・・・里を抜け出して人の寄り付かないこの森へ来たのです」
怯えるように・・・何かを恐れるように話してくれた
そういう事か・・・だからこんな所で暮らしているのか・・・
暁「そうだったのですか・・・なんて言っていいのか・・・
でも、大変だったのですね」
そう言って女性を抱きしめる
暁「僕は大丈夫です。ハーフだとかそんな事で相手を嫌ったりしませんから安心してください」
そう言いつつ女性に『癒し球』をかける
???「あっ・・・ああぁぁぁ・・・」
泣き崩れる女性を抱きしめたまま落ち着くまで背を摩り続ける
泣き疲れたのだろう、そのまま眠ってしまった女性を寝床に寝かせる
暁「『鑑定』」
念のために二人の状態を調べておく
【名前 セリ
種族 鬼人族
性別 女
年齢 20
状態 空腹 】
【名前 スイ
種族 鬼人族のハーフ
性別 女
年齢 6
状態 空腹 】
どうやら二人とも空腹以外の問題はなさそうだ
暁「こんな森で女性一人で子育て・・・誰にも頼る事が出来ずに大変だったんだろうな」
魔物だらけの森で生きていくのは過酷だろう
スイとセリの様子、そしてこの拠点の様子をみる限りでは最近は碌に食べ物を食べていないのだろう
暁「とりあえず起きたら何か食べれるように作っておくか」
辺りを見回すが食べ物らしきものは見当たらない
暁「弱っている体によさそうなのは・・・林檎の摩り下ろしとか・・・
アポの実を摩り下ろして・・・一応肉も焼いて食べられそうなら渡すか」
ボックスに仕舞っておいた石刀を作った残りの石で摺り鉦を作ると
アポの実を摩り下ろして器に移しておく
ボックスから石板を取り出すと下味をつけた肉を焼き始める
スイ「ん・・・いいにおい~」
どうやらスイと呼ばれていた子が目覚めたらしい
スイ「おにいちゃんだぁれ?」
こちらに気づいたスイが起き上がって近づいてくる
暁「御三月暁って言うんだ、お腹へってないかい?」
アポの実をすりおろしたモノを渡す
スイ「わーい食べて良いの?!!わたしはスイっていうの!」
嬉しそうにアポの摩り下ろしを食べているスイを見ながら肉を焼いていく
セリ「ん・・・あれ?」
どうやらスイの母親が目覚めたようだ
暁「お気づきになりましたか?お腹が空いてませんか」
そういってアポの摩り下ろしを差し出す
セリ「あ、どうもありがとうございます
そういえば自己紹介がまだでしたね私は『セリ』といいます『鬼人族』です
セリとお呼びください
この子は『スイ』先程お話した通り鬼人族と人族のハーフです」
暁「セリさんですね、私は御三月暁といいます。おそらく人族です」
そういうと不思議そうな顔をされた
どう説明したものか・・・というか言っても大丈夫なのだろうか?
暁「えっと・・・色々事情がありまして・・・
その・・・昨日こことは別の世界からやって来ました」
そう伝えると更に驚いた顔になったなんだか美人のセリさんの驚いた顔が可愛くて暫く見惚れてしまった
セリ「違う世界ですか・・・御伽話では聞いた事あります
本当にそんな事があるんですね!」
そう言うと花が咲いたように笑った
暁「あの・・・セリさんは信じてくれるんですか?こんな突拍子も無い話」
自分がいきなりこんな話をされたらまず頭の心配をするだろう
セリ「暁様が嘘をつくようには思えませんし・・・
先程あの様に優しくして頂きましたし
それよりも!セリと呼び捨てで呼んでください!」
と何故か頬を染めながら話してくれた
呼び捨てについては・・・本人の希望通りにしよう
二人がアポの摩り下ろしを食べ終わったところでお腹の調子を聞いてみる
暁「一応お肉も焼いておいたのですが、お腹の方は大丈夫ですか?」
焼き終わった肉を差し出しながら言う
セリ・スイ「「お肉があるんですか!?」」
顔を輝かせ肉を受け取ると勢いよく食べ始めた
その食べっぷりを見るとコレだけでは足らないだろう
追加で肉をどんどん焼いて二人の皿に追加していく
暫く続けていると二人のペースが落ち着き始めたので肉を焼くのをやめる
暁「すごい食べっぷりでしたね」
そういうと恥ずかしそうに顔を俯かせると
セリ「肉を食べるのは本当に久しぶりで・・・此処の魔物は強くて私では倒せないのです・・・なので木の実を食べて暮らしていましたが森で木の実を採るのも一苦労で・・・」
確かに女性一人でこの森の魔物を狩るのは一苦労だろう
暁「そうだったんですか・・・大丈夫ですよ!肉はまだ一杯あるのでゆっくり食べてください」
そういうと二人とも顔を輝かせ喜んでいる
暁「私の連れを呼んできてもいいでしょうか・・・入り口で待たせているのです
お腹も空かせているでしょうし・・・」
そう伝えると不安そうにしつつも了承がもらえたのでシルクを呼びにいく
入り口に行ってみるとシルクが退屈そうに横になっている
近づくと此方に気づいたのか嬉しそうに尻尾を振りはじめた
暁「シルク!ご苦労様お昼ご飯にしよう おいで」
そういって中に入るように言う
セリ「そっ、そちらがお連れ様ですか」
シルクを見ると顔を引きつらせている
暁「シルバーウルフのシルクです、森で襲われている所を助けて一緒にいる仲間です
シルクこっちはセリさんとスイちゃんだよ、僕の仲間だから襲っちゃ駄目だよ」
シルクの頭を撫でながらそう伝えると分ったのかこちらを見て尻尾を一振りした
暁「大丈夫ですよ!頭のいい子ですから」
シルクにも焼いた肉をあげる
こちらを見てきたので食べるように言うと嬉しそうに食べ始めた
スイ「おにーちゃん・・・シルクちゃんなでてもい~い?」
そう聞いてきたのでシルクを見ると嬉しそうに尻尾を振っている
暁「大丈夫だよ、でも痛いから毛は引っ張らないようにね?」
そう聞くやいなやシルクを撫で回し始める
シルクも嫌ではなさそうだ、その証拠に尻尾が暴れまわっている
そんなスイの様子を眺めながらこれからの事について考える
二人の過去を知り出会ったときの様子を見る限り一緒に居た方が二人の為にもいいだろう
しかしそれに同意してくれるだろうか・・・
どうすればいいのか悩んでいるとセリさんが近寄ってきた
セリ「あ、あの・・・暁様は此方の世界に来たばかりなのですよね?
雨風をしのぐ様な場所はございますでしょうか?
そ、そのよろしければ此処に居て下さいませんか?」
恥ずかしそうにもじもじしながらそんな事を言いだした
暁「いいんですか?こんな得体も知れない男なんか置いても」
ありがたい申し出だ・・・だがいいのだろうか?
一応年頃の男がこんな美女のそばで暮らすなんて間違いでも起こったら・・・
セリ「いいのです!!ぜひ私達をお傍においてください!!お願い致します!!」
そう言うと土下座までしてきた
暁「わっ、わかりました!一緒に居ますから頭を上げてください」
セリ「ありがとうございます!お役に立ちますので末永くよろしくお願い致します」
勢い良く顔を上げるとそのまま抱きついてきた
何か可笑しな事を言っていた気がするが気にしないでおこう
セリが落ち着くまで頭を撫でているとスイまで飛びついてきた
二人が落ち着くまでかなりの時間がかかったがなんとか離れてもらった
暁「シルク俺達は此処に住む事になったから寝床の準備をするよ!」
シルクを撫でながらそういうと出口に向かって走り出した
暁「二人はまだ安静にしていてください
僕とシルクは狩りのついでに色々と準備してきます」
それだけ伝えるとシルクを追いかける
二人の境遇は辛いものがあるが、これから先は自分が助けてあげられる様に頑張らなければ・・・
イレーナ様が言っていた理不尽な事に苦しめられている人を助けてあげて欲しいと
その為の力も貰ったのだからあの二人を救う事は間違っていないだろう
ならば覚悟を決めてキチンと背負おう
あの二人と一匹を幸せにしてあげられるよう手を尽くそう
両頬を叩くと覚悟を決めて今やるべき事を終わらせるために歩き出した