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波乱の予感

2人が暗い中を歩き、舞台そでまで来ると一人のスーツを着た男がそこに立っていた。

「おめーら、日向とかいう双子だったな。 ここで何してる?」

 男は二人に気付きそう尋ねる。

「ちょっと遅れちゃって。 テヘッみたいな」

 紫乃がふざけた顔でそう言う。

「何がテヘッだ。 入学早々迷惑掛けやがって。 お前らがさっさと来ねーからあの校長だってあんな長話してんだからな。」

 男が向けた目線の先には小太りのおじいさんが冷や汗をかきながらマイクに向かって話し続けていた。

「そりゃあ大変ですね。 あの歳で何十分も立ってるのは辛いでしょうから。」

「だからおめーのせいだって言ってんだろ。 なんでそんなに他人事なんだよ。」

「俺まだ若いですから。」

「そういうことじゃねぇよ。」

「そんなこといいから、あのおじいちゃん戻ってきたよ。 蓮の番じゃない?」

 舞台上では校長が長引いた挨拶を何とか完結させ冷や汗をハンカチで拭いながら小走りで舞台そでの3人のところまでやってくる。



『続きまして、新入生代表1年A組 日向 蓮』

司会者がマイクでそう告げる。


「今、俺の名前呼ばれちゃったよね。」

「そりゃ呼ばれるよね、新入生代表だから。 さっさと行ってきなよ。」

紫乃が蓮を舞台へ押し出す。

蓮は少し驚いたようだが諦めたように舞台の中央へと歩き出す。


「あいつ、大丈夫なんだろうな?」

スーツの男が紫乃にそう訊ねる。

「大丈夫ですよー、蓮ああ見えてさらっと上手くやれますし。 それより、あなたのほうがこんなとこいて大丈夫なんですか?」

「なんでだよ、別に問題ねーだろ」

「いや、校長先生こっち来るし、不審者がそんなに堂々としてていいんですか? 通報される前に逃げないと。」

「おい、誰が不審者だ! 俺はここの教師だ、きょ・う・し! ついでにお前らの担任だ。」

「え、ヤダ」

「お前に拒否られる筋合いねえよ! 兄弟そろってとんでもねえ奴らだな。」 


『おはようございます、新入生代表日向 蓮です。』

舞台の中央では蓮が挨拶を始めた。

『えーと、みなさんご入学おめでとうございます。受験勉強お疲れ様でした。 先ほどは校長が長話をしたということで大変申し訳ありませんでした。』

「お前のせいだろーが。 おい本当に大丈夫なのかよ?」

「メイビー、オフコース!」

「ぜってー大丈夫じゃねぇだろ、それ」

「まっでもこれからですよ!」

紫乃が明るい声でフォローする。

「これからがあるならな。」

スーツの男が遠い目で舞台上を見ながらそう呟く。

「げ……。 なんでもうここにいるの?」

舞台のほうを振り向いた紫乃の目の前には清々しい顔をした蓮の姿があった。

「あっそうか、礼忘れてた。」

そういって舞台上に戻って蓮は一礼だけして二人の元へ戻ってくる。


「もういいや、お疲れ。 てか、なんでそんな清々しい顔してんの?」

「かなりいい眺めだった。」

「眺め?」

「うん、全校生徒を見下せた。 紫乃も見たほうがいいよ。」

「見下すじゃなくて見下ろすね。」

「ついでに全校生徒がお前のこと見下しただろうな。 もうお前らいいから、退場の列に適当に混ざって教室行ってろ。」


「はーい。」

そういって、二人は来たほうから外へ出て同学年の退場の列に加わった。

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