表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
短編集  作者: るむるむる
5/19

再婚


 矢下祐樹やしたゆうき、彼は高校1年生だ。彼の通う高校は県内でも、そこそこのレベルであり、彼もそこそこのレベルだ。

 黒髪に黒目という、まったくごく普通の少年であり、特技などは雑学くらいなものである。

 雑学と言っても、その話題はほとんどネットで聞きかじった程度であり、彼の方向性は、いわゆるオタクの方向性に向いている。


 しかし話を聞くとなかなかバカにはできない。なぜなら、ジャン○黄金世代の漫画を読みつくし、また、アニメ黄金期と言われてる時代のアニメも全て見ているからだ。

 その方面に詳しい30~40歳代の人と話し込めば夜が明けるくらい詳しい。ただし広く浅くではある。

 そして彼の嗜好は萌えよりも、燃えに向いている。小○宙を燃やしたり、メドロー○が大好きであったり、ジャン○系だけではなく、手塚、藤子作品などや、ガンダ○なども、もちろん大好きだ。彼の好みを語ると切りが無いので、この辺にしておこう。


 そんな祐樹がある日、母親から呼び出された。彼は母子家庭で、母親は現在36歳。すなわち20歳の時に祐樹を生んだことになる。父親の顔は知らない。


 母親は祐樹が生まれる前に離婚したと言ってるが、真偽は定かではない。

 それでも母親は女手一つで不自由させず祐樹を育て、祐樹も父親がいないことを不満に思わず、普通に育っていった。

 親子喧嘩や一週間、口を聞かないなどのことはもちろんあったが、それはどこの家庭にもあることだろう。


 学校が終わって友人達と別れた祐樹の携帯に、母親からのメールがあった。

『仕事を早く切り上げたから、駅前で待っててね』

 絵文字がふんだんに使われてるのを見て、ため息を吐く。


(いい歳して、絵文字かよ)

 祐樹は友達とのやり取りにおいても、絵文字はほとんど……いや、全く使わない。めんどくさいからだ。

 しかし彼の母親は良く使うのである。


 駅前について母親を待つ祐樹。雑踏の中から、音楽が聞こえてくる。今、テレビ等で大人気のトップアイドルグループKARAHURUカラフルの歌だ。4人グループで平均年齢14歳。祐樹から比べると完全に年下だが、彼はアイドルにあまり興味が無い。


 アイドルを見てるくらいなら、ゲームで天才軍師になったり、アニメを見て適当に楽しんでたり、オンラインゲームで友達と狩りをしてたほうが、よっぽど楽しめるのだ。とはいえ好きな人はちゃんといる。しかも同じクラスだ。


 やがて母親が来る。祐樹を見つけたようで足早にかけてくる。


「ごめーん、まったぁ?」

 どこか甘えたような、それでいてわざとらしい声。

「別に、特に待ってないけど、なんで、いつもそう甘えたような声を出すんだよ」

 疲れたように言う祐樹。


「えーだって恋人のいない、祐ちゃんに恋人気分を味合わせてあげたい親心じゃない」

「大きなお世話だよ!大体いきなり呼び出して、なんの用さ?」

「んー、祐ちゃんと久しぶりに、お外で食事なんてどうかなーと思って」

「それだけで、仕事早退したのかよ……週末って忙しいんじゃないのか?」

「母さんの部署はそれほどでもないからね、さ、行きましょう。あ、今日はイタリアンな気分だから」

 そういって歩き出す母親。あとを追いかける祐樹。どうやら、祐樹に今日の食事コンセプトを決める権利はないようだ。


 そうして二人は高級そうなイタリアンレストランに席を取る。

 さすがに祐樹は驚く、別にそこまで高級と言うわけじゃないが、それなりの格式のレストランっぽい。あくまで、祐樹の主観ではあるが。


「母さん、今日はなんかの記念日だったけ?」

「んー祐ちゃんは何だと思う?」

「質問に質問で返すな。心当たりが無いから聞いているんだが?」

「祐ちゃん、もう少し遊び心がないと、女の子からつまんないって言われちゃうわよ」

 思春期の少年には耳の痛い言葉だ。

「うるさいなー、つまんなくて結構だよ。早く質問に答えろよ……」

 そして母親がニヤリと笑い、それを口にする。


「今日はねー、祐ちゃんに妹が出来ました記念でーす」

 瞬間、祐樹の思考が停止する。

「は? え?」

 出てくる言葉は、それしかない。

 母親は笑みを深めさらに言う。

「だーかーらー、祐ちゃんに妹が出来たのー」


 祐樹は言葉の意味をなんとか理解し、母親のおなかに、つい目線をやってしまう。

 母親はクスクスと笑う。

「違うわよー、そっちじゃないわよ。あ、でも近いうちに、そうなるかもね」

 祐樹は最初に思い立った可能性を否定され、次の可能性を思いつく。

(ちょっと待て、今、母さんはなんと言った? 妹が出来ました。と言ったよな……出来る、でも、出来ちゃうかも、でもなく、出来たと言い切ったよな? にもかかわらず妊娠は無し……)

 そして、そこから一つの答えを導き出す。最悪?の可能性を。


「母さん、一応聞くけど俺達の性は何?」

 まるで、いたずらっ子のように笑っている母親が、口にしたのは、当たってほしくない可能性だった。

「小和田よ」

「いつから……?」

「うふ、昨日から」

「つまり、あんたは息子に何の相談も無く、入籍したわけ?」

「驚かせようと思って、どう驚いた?」 


 しばらくの沈黙

「fhfづy氏巣k例wwkwwdきfdffjskっだdsj!!!!!!!gdじぃjれfdなfdえ!!ふ!lvkjfffgdfdkj!!!」

 もはや祐樹自身、何を言ってるか分からないほどの言葉と、怒声。それがレストラン内に鳴り響く。


「祐ちゃん、声が大きいわよ。他のお客さんに迷惑でしょ?もう子供なんだから」

 さんざん怒鳴り散らして疲れたのだろう。肩で息している祐樹に、母親が上から目線で注意する。

(お前に言われたくねええええええええええ!)

 全力で心の中で突っ込む。


 取り合えず、状況の確認は一通り終えた祐樹。

(つまり、すでに父親になってる相手との顔合わせってわけね、あああああもう、どう突っ込めばいいんだよ)


 そうして祐樹が頭を悩ませている頃に、相手の男が到着する。

 高そうなスーツに身を包み、顔立ちは整っている。ダンディなおじ様という感じだ。40を過ぎたあたりだろう。

「やあ、由香里さん、お待たせしたみたいだね。今日も綺麗だよ」

 と、歯が浮くようなセリフを、そつなくこなすのは、彼の性格によるものなのか、それとも年の功なのか。続けて彼は祐樹に目を向ける。


「君が、祐樹君?いやいや、由香里さんそっくりだよ、いや男の子に対して、母親に似てるというのは失礼かな?君の父親の小和田こわだ たかしだ。いやー息子とキャッチボールをするのが、ひそかな憧れだったんだ。祐樹君がこの話に大賛成と聞いて父さんは凄く嬉しいよ」


 満面の笑みで話しかけてくる小和田隆。すでに父親気取りだ。

(ちょっとまてえええええええ!大・賛・成だと??)

 母親に目をやるとそっぽを向いてる。

(あの女あああああ)

 もはや母親への敬意もなにもあったものじゃない。とはいえ、ここで波風を立てても仕方ないので、なんとか表情を取り繕い一言を搾り出す。


「あ、よ、よろしくお願いします」

「ん?どうした?緊張してるのか?ははは?そう緊張しなくてもいいぞ、なあ かえで

(ん? 楓? ああそうか、い・も・う・とね、はぁ)

「小和田楓です、よろしくお願いします」

 再び祐樹の思考は、凍結する。

 そこにいたのはトップアイドルグループKARAHURUカラフルの一人、小和田楓が目の前にいたからだ。


「?? え? あ? え? え? あ? KARAHURU? え?」

 これが何のとりえも無い、元、矢下祐樹と、トップアイドルとの共同生活の始まりであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ