異世界からの帰還
俺はかつてこの世界に召喚された。理由は世界を救ってくれとのことだ。
そうして、俺はこの世界に身を置いて戦い続けた。
なぜなら魔王を倒せないと、元の世界には戻れなかったからだ。
時には凶悪な盗賊団や、俺の力を利用とする国の騎士達。もちろん、それだけではなく見上げるような巨体を持ったモンスターやドラゴンみたいな最強ともいえる種族まで様々な生き物と戦い、撃退してきた。
あやうく死に掛けたこともあったが、一命を散りとめ歯を食いしばり、魔王を倒し、そして世界に平和をもたらした。
人々は俺のことを勇者、救世主と呼んでくれたし、俺もそれに答えた。
しかし、ついに別れの時がやってきたのだ。
この世界に召喚されて7年間、すでに俺の歳は26歳だ。
色々な事を胸に秘めて、俺はこの世界と別れるのだ。
そして故郷へと帰ろう。懐かしいあの平和だった世界へと。
「マモル様、どうかこの世界にとどまってはいただけないでしょうか?」
俺に声をかけてきた女性は、俺が最初に召喚された国のお姫様だ。最初に出会ったときは、まだ小さく9歳くらいだったのに、いつの間にか、男なら誰もが見惚れるような女性へと変貌していた。
俺と彼女が絆という関係を持ったのは、2年ほど前からだ。俺は彼女を愛し、そして彼女も俺を愛した。
しかし、やはり俺は元の世界に帰りたかったのだ。愛する女性を振り切って、俺は元の世界に戻るための門をくぐった。
一瞬、体が宙に浮く感覚を襲ったが、それはすぐに収まった。
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やがて、俺が元の世界で、最後にいたコンビニが視界に入った。
『ヘブンイレブン』
ああ、懐かしき文字、懐かしきこの世界の空気。俺は思わず涙を流したが感慨にはふけっていられない。
さあ、家族に会いに行こう。
そうして俺は、懐かしき道筋を楽しみながら家へと向かった。
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7年ぶりに着いた我が家。
なんて、懐かしいんだろう。全く変わっていない。あの青い屋根も、あのベランダも、全てが変わっていない。
本来は、俺が住んでいた家でもあるのだから、普通に入っても問題ないはずだが、やはり緊張する。ゆえに俺は、インターフォンを押した。
「はい?どなたでしょうか?」
インターフォンから母親の声が流れてきた。
やはり、これにも俺は感動した。
母さん、帰って来ましたよ。そう言いたかったが、中々声に出せない。
それでもなんとか搾り出した。
「母さん……」
インターフォンの向こう側から、息を呑む声が聞こえてきた。
「ま……守なの? そうなのね? 今行くからまってて!」
玄関から、なにやら慌しい音が聞こえる。
ガチャリと扉の開けられる音がして、懐かしい母親の顔が俺の前に現れた。
そこからは大騒ぎだった。俺も何がなにやら分からないうちに、いろいろな出来事が置きた。
印象的だったのは、俺がすでに死亡扱いされていたことだろう。
何年間か行方不明だと、どうやら日本では死亡扱いになるらしい。
そして、どこへ言ってたか当然聞かれる。
さらに当時、行方不明だったということもあり、警察の関係者なども事情を聞きに来たが、俺は全てを正直に話した。
異世界に召喚されたこと、そこでは勇者と呼ばれたこと、国のお姫様と結ばれた事など、全てをだ。
そして俺は精神病院に入れられた……。
どうしてこうなった……。