プロローグ~忘れられない日々の始まり~(8) 【挿絵付き】
「――はい、全員出席~。みんな元気そうで何よりだね。夏バテしてる人とかいない? 喉乾いてる時に食パンとか食べると危険だからやらないようにね」
誰もやらんわ、そんなこと……。
「じゃあ、今月の連絡をするから聞いててね。大きく二つあるんだけど、良い連絡と悪い連絡、どっちから聞きたい? ……じゃあ悪いほうから言うね?」
尋ねといて考えさせる時間与えんのかい。
「じゃあ悪い連絡から話します。今月末にはみんなの嫌いな期末テストがあります――」
――せっかくだから、この人も紹介しておこう。
この人は成木雪子先生、俺たち3学年の担任だ。間延びした口調、パッパラパーな性格、面倒くさがりなどなど、到底教師になれそうにない個性を併せ持った教師だ。
これほど馬鹿と天才は紙一重って言う名言がピッタリ当てはまる人物はそういないと思われる。このド田舎の学校だから教師になれたんじゃないかって思うんだが、それでも教師になるにはたくさんの関門を潜り抜けなければなれないから、少なくとも一般人よりも知識は豊富なんだろう。
でも、確実にこの学校で一番おバカなのはこの先生だと俺は思う。
みんなもそう思うだろ? 今ここまでで先生が発した言葉の内容がそれを物語っている。良いか悪いか、個性豊かな担任だよ。
「テストが面倒くさいのは先生も分かるけど、これを行わないとみんなの成績を付けることができないから、それぞれ努力して、個人的に納得のいく点数を出せるように頑張ってください~。あ、赤点とか出したらダメだよ? 補習なんてことになったら先生のプライベートタイムが削られちゃうから」
「あくまで自分優先なんだな」
「当然! 誰だって自分が一番かわいいんだもん」
「絶対、教師がしていい発言じゃないな」(亮)
「というわけで、頑張ってください。以上、悪い連絡でした~。じゃあ次に良い連絡なんだけど~、ふふ、多分みんなビックリすると思うよ~。ビックリしすぎて顎外すんじゃないかなって思うよ~」
「何だよ、勿体ぶらないで教えろよ」
亮が先生にそう尋ねる。先生がこんな感じだから、基本俺たちは先生に対して敬語ではなくため口でしゃべっている……時がある。
「亮くん、せっかちなのは良くないよ~? そうやって気持ちが急いちゃうと、大事なものを取り逃しちゃうんだよ? 亮くんで言えば、テストの点数とか」
「余計なお世話だ。というか、先生がテスト内容難しくするのがいけないんじゃねぇかよ」
「え? 別に難しくなんてないよ。亮くん以外のみんなはそこそこの点数とってるし」
「……そうなのか? みんな」
「まあ、勉強すればとれないこともないかね」
「ほらほら、私はちゃんと生徒のことを考えてちゃんと解ける問題を出してるんだよ~。つまり、解けないのは、亮くんが努力を怠るぐーたら野郎だからです~」
「う……」
この先生、間延びした口調ながら言うことはなかなか過激だ。
「亮くんにはもう一度言っておくね? 今月末のテストでは、赤点を取っちゃダメだよ? 先生のプライベートタイムが短くなるから」
「ただの名差しの注意じゃんかよ……」
「亮くんのせいで話が反れちゃってみんなごめんね~」
「しかも俺のせいかい……」
「話を元に戻して、良い連絡のほうをしたいと思います。……ふふ、みんなビックリして顎外すんじゃないかなって思うよ~」
「先生、その言い回しつい今しがた聞いたよ。言っておくけど面白くないよ」
「あら、ホント? じゃあ今日はもう使うの止めておくね。とりあえず、ビックニュースだってことだけ伝わってればいいや」
分かったから、早く本題を話してほしいものだ。