プロローグ~忘れられない日々の始まり~(7)
「おっと、席に着かないとな~」
亮は左端の一番後ろの席に腰を下ろした。9人しかいないから、三山という名字は一番後ろになるんだ。
「ふわ~あ……」
「おっきな欠伸……寝てないの?」
「いや、たっぷり寝たよ。でも、時間が時間だからまだ脳が起ききってないんじゃないかと考える」
「考えるて……レポートじゃないんだからさ」
「まあ、そのうちしゃきっとしてくるさ。……問題は俺よりも先生のほうだと思うがな」
「あはは、それは言えてるかも」
「今日も暴走すると思うか?」
「うーん、どうかしらね~。五分五分ってところじゃない? もし暴走するとすれば、暑さに耐え切れなくなった場合だと思うけど」
「むしろそれ以外にあるのか?」
「……ないわね、ない」
「どうなることやら。……お、来た」
――今話をしていた張本人の登場だ。
「はぁい、みんな~、おっはぁ~」
――先生の第一声は、先程の亮の挨拶と丸被りだった。
「あれ? みんな挨拶返してくれないの~? チョベリバなんだけど~」
「成木先生、さっきから言葉のチョイスがとっても古いんですけど」
「実は昨日、数年前にやってた問題児が集う学校のドキュメンタリー番組を見ててね、それに登場してた生徒が今みたいな単語を連発していたの~。それを見てたら、つい言いたくなってきちゃってさ~」
「にしたって、チョベリバはないでしょう……」
「そお? じゃあチョーベリーバットって言えばいいのかな?」
「そういう問題じゃないんだよ……」
「まあまあ、とにかくそんな感じで見てたわけ。いいみんな、学級崩壊とか起こしちゃダメだからね~? 後処理が面倒くさいから~」
「それ、完全に自分の都合じゃねぇかよ」
「今日もエンジン全開みたいね」
「じゃあまずは出席取るよ~。五十沢秀吾くん~」
「はぁ~い」
「……めんどいから以下略」
「え~」(8人)
「だってパッと見ただけで全員いるの分かるんだもん。みんなも返事するのめんどいでしょ~?」
「でも一応形式ですから、やっておきましょうよ。後で怒られるのは成木先生ですよ」
「そっか~。じゃあやっておこうかな、じゃあ続きいくよ~。木原さん~」
この先生は、適当をどこまで貫けるものなのかを研究しているのだろうか? ある種、その姿勢には感服するな。
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