勉強会日和とはこのことだ!(12)
「悪いな、絵玖」
「いえ、どういたしまして」
「秀吾、今子供みたいだったわよ~、良い歳してみっともな~い」
「俺は童心を忘れない性格なんだ」
「新しい切り替えしね、それ」
「瞬間的に思いついたから言ってみた」
「特に意味はないようね」
しゃく、しゃく……。
スイカを食べる四人。
そして聞こえてくる蝉の泣き声と、風鈴の音色。何とも穏やかな時間が流れている。
「こういうの、何かいいですね」
「お、絵玖にも分かったか? 今の居心地の良さが」
「はい。何というか……すごく落ち着けて、まったりとした感じがすごく良いです。生きててよかった~って、そう思います」
「嬉しいこと言ってくれるわね、絵玖ちゃん」
「俺たちも、こういう時間は大事にしてるんだよ。もうちょっとしたら、この一時も味わえなくなるからな」
「そうね~、今の内に味わっておかないと、もったいわね」
「こんな素敵な時間、味わわせてもらえてとっても幸せです。ありがとうございます」
「うん、順調に絵玖を田舎生活に毒していけてるな」
「ど、毒す? あたし、汚染されてるんですか?」
「ああ、気にしなくていいのよ絵玖ちゃん。秀吾はいっつも捻じ曲がった言い回しを使う男だから」
「捻じ曲がったとか失敬だな、佑香さん」
「誰がどう聞いても捻じ曲がってるわよ。毒が入ってる時点で終わってるわ」
「じゃあ浄化すればいい。……巫女の力で」
「残念、今日はもうお勤め終わったから巫女服は着ません」
「くっ……何てことだ……」
「本気で悔しがってるわね、この男……どんだけ巫女服好きなんだか……」
「あははは……」
「テスト、勝ったら見せてくれ。負けたら……我慢する」
「そこまでしてみたいの? あなたは」
「しばらく肉眼で見れてないからな。いいじゃないか、それを目標に頑張れば平均点も上がる。勉学の向上は佑香も掲げてることじゃないか」
「そうだけどさ……何もそこまでして見ようと思わなくても……」
「この気持ち、お前には分かるまいよ」
「いや、分かりたくもないから……」
「とにかく! 勝ったら見せてくれ。いいな?」
「はぁ……ごめんね絵玖ちゃん。見苦しい光景を見せてしまって」
「いえ、いいですよ。人間、誰だってそういう一面持ってるものでしょうから」
「……何か絵玖ちゃん、考え方が秀吾に似てきてないか?」
「そ、そうですか?」
「うん、今の台詞は秀吾が良く言ってる台詞だからよ」
「だとしたら……あれです。あたし、友達に影響を受けやすいんだと思いますよ」
「友達の影響ね、まあ分かる気はするけどね」
「分かってると思うけど、変態的思考までは似なくていいからね。こんな変態、二人もいたらあしらうのが大変だから」
「は、はい。分かりました……」
「よし、頑張るぞ。今回こそは勝って……」
「あーあー、変態やる気スイッチが入っちまったな、これは」
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