あの子って、実は意外と……(9)
「ありがとうございました」
「ん?」
「あの、ハンカチ、貸してくれてありがとうございました」
「あ、ああ、いいってことよ」
「明日までに、洗って返しますので」
「いやいや、いいって。そんなんしてくれなくても」
「でも、あたしの汗で汚れちゃってるし」
「ハンカチが汚れるのは当然じゃないか。洗って返してもらうつもりで貸したわけじゃないから、気にすんな」
「……いいんですか?」
「本人がいいって言ってるんだから、いい以外にないだろ?」
「何から何まで、ありがとうございます」
「……須貝も、汗とか掻くんだな」
「はい?」
「いや、見た感じ汗とかそういうのとは無縁そうなルックスしてるから。ちょっと意外だなって思って」
「えっと、あたしも人間ですから汗くらい掻きますよ? 完全に五十沢くんの偏見ではないかと」
「やっぱり、そうだよな」
「……五十沢くんは、好きな女性芸能人とかはトイレなんて行かない、みたいに考えるタイプなんですか?」
「いや、全く。どんなにかわいい子でもトイレには行かなきゃ生きていけないものだって思ってる」
「じゃあ、どうしてあたしは汗を掻かないって思ったんですか?」
「…………何でだろう?」
「分からないからあたしは聞いてるんですよ?」
「そうだよな、失敬した」
「ふふ」
――あ、今ひょっとして普通に会話できたか?
それに須貝のほうからも、俺に問いかけをしてくれたよな? 自分で自分にちょっと驚いたぞ。
何だろう、須貝のドジっぽい姿を見たおかげで、話しやすい空気が生まれた感じと言えばいいだろうか?
何にせよ、これは結構嬉しいぞ。今くらい、調子に乗ってもいいよな?




