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プロローグ~忘れられない日々の始まり~(2)

 ……というわけで、両親は俺より一足早く隣町に趣き、向こうで生活を送っているわけだ。


 もともと隣町で働いているから、わざわざこっちから通う必要はないからな。すっかり隣町の生活に慣れたようで、快適そのもののようだ。


 もちろん、俺も一緒に住もうという誘いはあった。


 あったけど、俺はもう少しこの村に住むよとそれを断った。生まれてからずっと育った村を失うのは、やっぱり寂しいものがある。


 だったらせめて、半年後の卒業まではこの村で住み、大人になる後押しをしてもらいたい。強制だったらそりゃ受け入れるけど、選べるのならばこっちに住まない手はない。


 両親と離れた生活は多少の不安はあったが、生まれてから一度も一人暮らしってものを体験してなかったのもあって、慣れてきたらなかなか楽しいものではないか。自分のペースで生活を作れるというのは興味深いものがある。今、結構この生活が楽しいです。


 ……全部自分でしなきゃいけないのは大変だけどな。今もこうやって、自分で朝食を作ってるわけだし。作ってもらったもののほうが美味しいってのは、確かに本当のようだ。ここ最近は、発見の連続だよ。


「――よし、できた。いただきます」


 完成したタマゴサンドに早速かぶりつく。


 もぐもぐ……うん、不味くはないけど、美味しくもないな。ちょっと調味料の分量を間違ったようだな。なかなか、自分の好みの味に近づけるのは難しいぜ。でもまあ、物体x的なものができないだけいいか。


 そんなことを考えながら朝食を済ませた。


 ……………………。


「――よし、じゃあそろそろ行きますかい」


 身支度を整えて、いざ学校へ。


 ……………………。


 外は雲一つない快晴だった。さっきシャワーを浴びたばかりだというのに既に額にじっとりと汗をかいてきた。かんかん照りとは、正にこのことだ。


 背中にクーラーしょって歩いたら、この暑さも少しは紛れるのかね? ……いや、しょって歩くから結局は暑いか。下らない思考を巡らせてしまった。それだけ、暑いってことだ。きっと30度は越えてるだろう。


「はあ……」


 ――家を出て数分経ったが、誰ともすれ違わないな。


 それだけ、ここの人口が減ったってことか。


 もともとそんなに多くなかったんだが、ここ最近はそれが顕著に分かるな。聞くところによれば、あるじいさんが道路の真ん中で昼寝をしてたらしいが、1時間近くそこで寝ていても問題なかったんだとか。


 よく炎天下のなか道路で寝れるなとも思ったが、それ以上に道路の真ん中で1時間寝れたってことのほうが驚きだ。


 普通なら5分もしないうちに車とかが通ってもおかしくないだろうに、1時間とか……全くすごいもんだ。


 確かに、今では車もあんまり見なくなったもんな。ここに残ってるのがほとんど老人だから、車も必要ないんだろう。……ド田舎ってことが、これだけで丸分かりだな。それがこの村の良さっていえば、そうかもしれないけど。


「……夜明けとかなら、涼しくて気持ちいいかもしれないな」


 もし、自分がそれを試すならそれくらいの時間帯がベストだな。さすがに日中は暑すぎて干からびかねない。


 ……いや、やらないけどね。


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