新たな日々(1)――秀吾視点
――こうして、俺たちの新しい生活が始まった。
それからの俺の日々を話そう。
夏休みが終わったということで、俺はいつも通りの学校生活を送り始めた。そして、新学期が始まったこともあり、大学進学に向けて本格的な勉強を始めることにした。絵玖が病気と闘ってるのに、俺だけ漠然と生活をしているだけ、というのは申し訳ないし、何より自分にプラスになるものを身に付けておけば、今後の俺たちのためになると思うからな。
学校での授業を前以上に真面目に聞き、夜は夜で予習と復習を行う。そして休憩を取っている時に絵玖に電話。
今の所、これが一日で一番楽しい時間となっている。
絵玖に普通に会うことができなくなった今、唯一絵玖とつながることのできる時間だからな。時間があれば、必ず絵玖に電話をかけた。絵玖が電話に出れない時は、メールを送った。絵玖の方も、それを決して拒むことはせず、毎日元気に電話に出てくれたし、メールも返してくれた。
離れた場所にいても、お互いを思う気持ちは変わってなかった証明になるだろう。
そして、月の終わりには、絵玖の住んでいる所へと足を運んだ。
親に事情を説明し、さらに絵玖のお母さんの援助もあって、俺はほぼ無償で絵玖の元へと行くことができた。本当ならば、自分が負担しなければいけないものを、全て負担してもらえて……すごく、すごく有り難かった。
だからこそ、会うことのできる時間は目一杯楽しんだ。お互いの親が提供してくれた時間を決して無駄にしないために。何より月で一番、俺にとって大切な時間だから。
――そして、そんな日々を送っている途中俺は決心した。
それは、自分の進学先だ。学生課などで調べたところ、絵玖の住むところにも、名門校は幾つか存在していた。三つあった内、その中で俺は、一番偏差値の高い大学に進学することにした。
正直、始めに自分が狙っていた大学のレベルよりも数段上のレベルの学校だ。だけど、絵玖の住んでいる場所や名の知れた大学ということもあり、自分にとってのメリットは初めに狙っていた大学よりも遥かに多い。
そして、その大学に進学することができたのなら、より良い会社に就職することもできるはず。未来まで見越すのだとしたら……そんな言葉を使っていいのか分からないが、決して悪い選択とは言えないはず。
それを先生、亮、佑香に話したら全員背中を押してくれたし、絵玖も、最初は考えていたみたいだったが、最後には笑って了解してくれた。
今その大学から頂いてる判定は、そこまで良いものではない。だが、努力次第では、十分に可能性はある。ここで怠ることなく取り組んでいけば、きっとできるはず。
自分自身のために、絵玖とのこれからのために、俺は合格のために心血を注いだ。
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