都会の街まで――ラブラブデート(4)
「俺は何てもったいないことをしてしまったんだろう……」
「いいじゃないですか。今はこうして絵玖ちゃんと恋人同士になれたのですし」
「――それも、そうですね。……あ、この写真可愛いですね。水辺で楽しそうにはしゃいでる」
「海水浴に行った時の写真ですね。滅多にお出かけができなかったので、それで喜んでいたんでしょう」
「いいな~……欲しくなってきますね」
「……よろしければ、焼き増ししましょうか?」
「え? マジですか? ……ああ、すいません」
思わず普通にしゃべってしまった。
「構いませんよ、そこまで手間がかかりませんので。今はプリンターという便利なものが世の中にありますので、いつでも焼き増し可能になってます」
「なるほど、いいな~……何枚かもらっておいても決して損はしないと思うし……じゃあ、もら――」
「だ、ダメです! 秀吾くん。そんなものもらっちゃいけません!」
「おおおっ!?」
ものすごい剣幕で絵玖がこちらに走り寄り、そしてものすごい勢いで写真を取り上げた。
「はあ、はあ…………」
「絵玖、いつの間に……」
「何か盛り上がってるな~って思って来てみたら、こんな恥ずかしいものを見ていたなんて……それは急いでも来ますよ」
「そんな焦るないじゃないか。ただ単に可愛いだけじゃないか。……というか、髪型ちょっと変えてきたんだな」
普段は結っている髪が、今は三つ編みになっていた。
「似合ってるよ」
「あ、ありがとうございます。……でも、焼き増しはダメです。認めません」
「え~? 何でだよ?」
「何でって、恥ずかしいからですよ。人様に見せられるようなものでは……とにかく、ダメです」
「…………これはどういう心境なんでしょうか? 崎田さん」
「本人も言っている通り、子供の頃を好きな人に知られるのが恥ずかしいんだと思いますよ。絵玖ちゃんは、あまり自分の美貌を認めない所がありますから」
「ああ、なるほど」
「崎田さん、冷静に分析しないでください」
「ふふ、ごめんなさいね、絵玖ちゃん」
「もう、見ちゃダメですからね?」
「何でだよ、ケチだな、絵玖は」
「ケチとか、そういう問題じゃないんです」
じゃあどういう問題なんだ……と聞いてみたいところだが、これ以上詮索すると楽しい雰囲気で買い物に行けなくなりそうだから聞かないでおこう。
とにかく、絵玖が来たってことは準備が終わったってことだ。
「気をつけて行ってきてくださいね、絵玖ちゃん、秀吾くん」
「はい。麦茶美味しかったです。ご馳走様」
「あ、崎田さん。さっきも言ったけど今日は――」
「はい、思う存分、秀吾くんと楽しんできてください。何も心配はいりませんよ」
「うん、ありがとう。じゃあ、行ってくるね」
「はい、行ってらっしゃい。――秀吾くん、絵玖ちゃんをよろしくお願いしますね」
「任せてください」
しっかり、守らさせていただきます。
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