須貝絵玖登場! 転校生は元アイドル!?(4)
「……美味である」
「ホント? よかった」
「日に日に料理の腕が上がってくな、お前」
「ふふ、それ程でも。やっぱり女は料理ができないとダメだからね」
「その考え方は俺も賛成だ。どんなにかわいくても料理がド下手な女の子だったら、超絶かわいくない女の子だけど料理がプロ級に上手い女の子と俺は付き合いたい」
「究極な選択ね、それ」
「もちろん願わくは、超絶かわいくて超絶料理の上手い子と付き合いたいよ。後、スタイルが良い子」
「ハードルとんでもなく高いわね」
「超えてこい、俺と付き合いたいのならな」
「そういう子は基本的に彼氏が既にいると思うけどね」
「……………………盲点だった」
「秀吾って、本当におバカさんよね」
「成績はそこまで悪くないぞ」
「成績が良いのとバカは違うんだって。いつも成木先生に向かってそう言ってるじゃない。自分に置き換えたくないんだろうけどさ」
「……やっぱり俺ってバカなの?」
「ギャップが激しいってのが正しいかな。良い時は良いけど、おバカな時はとことんおバカ。……バカにはしたけど、私はそういうの、そこまで嫌いじゃないけどね」
「何だ? 最後にちょっと褒めて自分の好感度を上げようっていう罠か?」
「そういう部分がおバカって言ってるのが分からないのですか? 秀吾さん」
「……煮物美味いな」
「逃げた……美味しい?」
「うん、良い感じで煮込まれてる」
「ならよかった。美味しいもの食べて、今日も頑張りましょう。今日は、今年一番とも言えるくらいのイベントがあるんだから」
「謎の転校生登場の巻」
「どう? 気持ちは固まったかしら?」
「うーん……」
「あんなに昨日言ったのに、まだ渋ってるの? 男らしくないわね」
「会ってみなくちゃ分からないものってあるだろう? 大丈夫、昨日のことはちゃんと守るつもりだからよ」
「そうそう。秀吾が望む超絶かわいくて超絶料理の上手い子って可能性もあるかもしれないじゃない」
「ふむ、だとするならちょっと対面が楽しみになってくるな。ひょっとしたら昨日の……」
「ん? 昨日に何かあったの?」
「帰り道にちょっとな。田舎では見られなくなったスタイリッシュな乗用車に乗った家族っぽい人たちに学校までの道のりを聞かれたから教えてあげた。後部座席に娘っぽい子が座っていたから、ひょっとしたらその子が転校生なのかなとかちょっと思ったのだよ」
「え? じゃあ既に転校生かもしれない子を見てるってこと? どうだった? 秀吾EYEから見てその子は?」
「一瞬しか見えなかったから何とも言えないが……結構かわい子ちゃんだったと思う。目鼻立ちも整っていて、都会のオーラっぽいものも感じたな。後、結構スタイルも良さそうだったな、あの顔はスタイルが良さそうな顔だった」
「一瞬しか見えないわりには随分と語れるじゃないの」
「女の子大好きだからな」
「そんな強い想いがどうして人見知りに負けてしまうのか、私はすごい気になるんだけどな~」
「だから言ってるだろ? 田舎で育ったから――」
「はいはい、そうだったわね。分かってます。とにかく、学校に行ったら転校生の子と一回は会話するようにね? これ、幼馴染命令だから」
「うわぁ、おっかねぇ……」
「神社の娘ですから、強い念がないとやっていけないの。……ごちそうさまでした~」
「あれ? いつの間に食い終わったんだ?」
「秀吾よりも食べる量が少なかったからね。まだ時間あるから、急がないで食べていいわよ」
「ああ。……煮物をお替わりして食べている時間はありますか?」
「いいわよ。はい、お皿貸して」
皿を渡すと、佑香は手際よく、そして綺麗に装ってくれた。さすがは神社の娘、教育がしっかり行き届いている。こいつと結ばれた男は、きっと幸せになることだろう。
俺は佑香の朝食に舌鼓を打ち、学校へと向かった。
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