山菜ハンター・絵玖(3)
「…………」
「…………」
始まってしまえば、結構地味な作業だ。腰を屈めて地面を見つめ、目当ての山菜があればそれを根元で折って籠に入れる。
それをひたすら繰り返していく。
「何だか、老夫婦になった気分ですね」
「何~? まだまだ若いもんには負けんぞ、わしゃあ」
「しゃべり方もすっかり老人になっちゃってますね」
「いつでもノリの良い秀吾でいなければいけないからな。今日も絶好調ということだよ」
「ふふ、そうですね。――いつも思うんですけど、秀吾くんの提案は普通の人とは違いますよね」
「ん? 普通と違う? …………常軌を逸してると言いたいのか?」
「いえ、そういう意味ではなくてですね。何て言うのかな……あたしには思いつかないようなことを思いついてくれるから新鮮って言いますか、そんな感じがするんです。今日はどんなことをするのかな~って考えながら秀吾くんの家に来ましたけど、まさか山菜採りをするなんて思いもしなかったですし」
「予想だにしなかったか?」
「それはもう、1ナノも考えていませんでした」
「ナノの単位か、それはすごいな」
「だからいつも、あたしはワクワクしながら秀吾くんの家まで行くことができるんです」
「まあ、正直俺も意識しているところはあるからな。メジャーな遊びをするのももちろん悪くないけど、ずっとそればかりじゃいつかマンネリしてしまうだろ? そういう時にどうすればいいかって言われたら、全然やったことのないことにチャレンジして気分転換することじゃないかと思ってさ。今日に関しては、それが山菜採りだったってことだ」
「何かきっかけがあったんですか? 山菜採りをしてみようかなって思うようなことが」
「さっきも言ったけど、特に大きな理由はないよ。でも、強いて言うなら……昨日母ちゃんと電話した時に、山菜そばを食べたんだっていうのを聞いたから、かね? 山菜そば、山菜……どんな味がするんだろう、日向村にある山で山菜採取……みたいな感じで?」
「なるほど。……耳の付け所が秀吾くんらしいですね」
「だろ? まさかそんなことから山菜を採ろうなんて誰も思わないだろうからな。やるだろ?」
「はい、思います」
「でも、悪いな。結構ハードな時間の過ごし方を選択しちまってよ」
「いえ、いいんですよ。たまにこうして運動しないと、体が鈍っちゃいますから」
「確かに、良い運動にはなるな。腰には最悪かもしれないが」
「そこは、若さでカバーです」
「若さでカバー、今しかできないことだな」
「今しかできないからこそ、有効活用していく意味があるんじゃないかと」
「なるほど。……今のは素敵な言葉だな。絵玖に20ポイント贈呈」
「ありがとうございます」
「――お、発見。これは、ワサビの葉っぱだな」
「あ、ホントだ。テレビで見たことあります」
確かこの葉っぱは天ぷらにして食べると美味いらしいな。鼻を近づけて匂いを嗅いでみる。……うん、少しツンとするワサビ独特の匂いだ。
早速採取だ。持参したスコップを使って、ワサビの地下茎を掘り出しにかかる。なるべく傷つけないように慎重に。