山菜ハンター・絵玖(2)
「…………」
「…………ぷっ」
「秀吾くん、何で笑うんですか~?」
「いや、別に面白いわけじゃないけど……絵玖が田舎の格好をすると、どうしても笑みが零れてしまうんだよ」
「今ぷって聞こえました。絶対馬鹿にしましたよね~?」
「俺が絵玖のことを馬鹿にするわけないだろう。気のせいだ、気のせい。よく似合ってるよ、その格好」
「む~……本当かな~」
「むくれんなよ。ほら、虫よけスプレーかけな」
「あ、はい」
――とりあえず、準備はOK。
というわけで、いざ出発だ。
「今晩の夕食のために、いざ!」
「気合い入ってますね、秀吾くん」
「俺は美味い山菜天ぷらが食いたいからな。そのためなら労力は厭わないぞ」
「ふふ、じゃあ、あたしも頑張ります。美味しい天ぷらのために」
「おう、やってやろうぞ!」
「はい」
……………………。
「――よし、この辺で山菜を狙うとしよう」
「…………ふぅ」
「大丈夫か? 絵玖」
「はい。ちょっと坂があったので、息が上がっちゃいました」
「小まめに水分補給はするんだぞ? 喉が渇いたと思ってから飲んでいては脱水症状になってしまうからな。休憩もその都度入れるようにしよう」
「は~い」
ターゲットの山菜は、ミズ、ユリネ、ワサビ、イワタバコなどなど。特にワサビやミズは今の時期がピークだから積極的に狙っていきたいところだ。どれも見ればすぐに分かるようなルックスをしているから、間違うといったことは少なくて済むはずだ。
一般的に、山菜のシーズンは春と思われているかもしれないが、意外と夏に採れる山菜もあったりするんだ。確かに春に比べれば採れる山菜にも限りはあるが、夏にしか採れない山菜も存在する。
……学生が山菜採取など、普通ではあまり考え付かない休日の過ごし方かもしれないが、他の人のことは関係ない。俺たちには俺たちの楽しみ方がある。故に、山菜を摘む、以上だ。
「必ずお互いが見える位置で採取をしよう。いなくなってしまったでは取り返しがつかないからな」
「そうですね」
「じゃあ、早速採取をするとしよう。目指せ、籠一杯の山菜」
「お~!」
……………………。