山菜ハンター・絵玖(1)
8月11日
「――あ、おーい、秀吾くーん」
「おお、絵玖。早かったな」
「秀吾くんにお誘いを受けたんですから。早く来るのは当然ですよ」
「それは、俺と早く遊びたいからか?」
「はい、それ以外に何もありません」
「そうか。彼氏、冥利に尽きるな、その言葉は」
大事を取って、昨日は休ませたからな。一日会えないだけでも、絵玖にとっては寂しかったのかもしれない。まあ、俺も同じ気持ちだけどな。
「――で、秀吾くん、今日は何をするんですか?」
「ん? この格好を見て分からないか?」
「はい、ちょっと分からないです。格好だけなら、何かを採取しに行こうとしてるように見えますけど」
「正しくそれだよ、絵玖」
「え?」
「今日は、山菜を採りに山に行くぞ」
「山菜採りですか?」
「ああ、そうだ。新しいアドベンチャーだ」
「どうして、山菜採りなんですか?」
「正直、そこまで大きな理由はないよ。ただ、同じ遊びばかりじゃ詰まらないと思って、ちょっと趣向を変えた体験を絵玖にさせたいなって思ったんだ。初めてだろう? 山菜採りなんてものは」
「はい、今までやったことはありません」
「俺も、小さい時にちょっとやったことがあるくらいだ。だが、心配するな。今この村の山で採れる山菜の情報はバッチリ手に入れてあるからな。間違って変な食材を手に入れてしまうってことはないはずだ。食用の物だけを狙って採取し、今日の夕飯のおかずをゲットしようってわけだ」
「なるほど。だから今日は厚着をしているんですね?」
「うむ、正直メチャクチャ暑い。だが、こうしないと体を木の枝とかで傷つけてしまうかもしれないからな。これくらいしておかなければ。……絵玖にも同じような格好になってもらうぞ」
「あ、貸してくれるんですか?」
「また俺のお下がりだけどな。大丈夫だ、ちゃんと洗濯して綺麗にしてあるから」
「別に心配してないですよ。……ここから山までは遠いんですか?」
「いや、そこまで遠くないよ。歩いて20分くらいで着くところにある。ただ、普通の人は迷いやすい道だから、はぐれないように注意する必要がある。OK?」
「分かりました」
「よし、それじゃあ作業バージョンにシフトするとしよう」
…………。