愛するための決意(1)
8月10日
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「…………」
――家の外で待つこと10分程。会いたかった人物がやってきた。
「ごめんね、待たせちゃって」
「いえ、大丈夫です。お仕事が忙しいはずなのにありがとうございます」
「いいのよ、全然。――まさか、秀吾くんから呼び出しがあるなんて、ちょっとドキっとしちゃったわよ、私」
「あはは……残念ながらそういう意味で呼び出したわけでは……」
「分かってるわよ、単なるおばさんの妄想だから」
「そ、そこまで自分を卑下しなくても。まだまだお美しいですよ」
「またまた、思ってもないことを言っちゃってさ~」
「いえ、絵玖を生んだだけのことはあるって思ってますよ」
「ふふ、ありがと。相変わらず良い子のままみたいね」
「あ、ありがとうございます」
――何故絵玖のお母さんに来てもらったのか。それは、俺が成木先生に電話をし、絵玖のお母さんの電話番号を手に入れ、そして電話し、今日都合が良ければ来てくれないかと連絡したからだ。何故呼び出したのか、それはもちろん、絵玖のお母さんに聞きたいことがあったからだ。
「せっかくですので、家へ上がってください」
「あら、いいの? 上がっても」
「もちろんです。立ち話も何ですから」
「そう。じゃあ――お邪魔しますね」
…………。
――茶の間に案内し、飲み物を用意する。
「お茶とコーヒー、どちらがいいですか?」
「うーん、じゃあお茶を頂こうかしら。コーヒーはいつも職場で飲んでいるから」
「了解です。今すぐに煎れますので」
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