クラスメイトたちとの戯れ(10)
「あなたたち、普段どんな話を日中にしてるのよ……」
「大したことじゃないんだけどよ。……彼女ができると、気持ちに変化って起きるものなのか? やっぱり」
「気持ちの変化? 例えばどんな感じのことだ?」
「例えば……上手く言い表せないんだが、何となく心のほうにゆとりが持てたような感じがするな。何だろう、変に焦らなくなるというかさ……悪いな、抽象的で」
「いや、抽象的だけどお前の言いたいことは伝わるよ。そうだよな、そういう関係を持つと心に余裕みたいのが生まれるよな」
「ああ。前からそうなんだけど、すごく近くにいるから、一人じゃないってことをより深く実感できるんだよ」
「うんうん。なるほど……参考になるぜ」
「本当に分かってるの? ミャンマー」
「分かってなかったらなるほどなんて言わねぇだろ。逆にお前は分からないのか?」
「はっきりではないけど、何となくは分かる気がするわ。やっぱり少しではあるけど、付
き合う前と付き合ってる今では秀吾の感じが違う気がするからね」
「そうなのか?」
「ええ、何と言ったらいいか分からないけど……少し大人っぽくなったというか……」
「前からこいつは少しばかり老けっぽい性格だったじゃないか」
「おい、さらっと失礼なことを言うなよ……」
「それとは違うのよ。物腰とかそっちのほうがさ」
「それもこいつは俺たちよりも老けっぽいじゃないか」
「だから連呼しないでくれって……」
「――まあとにかく、前よりも今のほうが良い感じじゃん? って私は思う」
「……最終的に喜んで大丈夫なのか? それは」
「いいんじゃない? 貶したわけではないから」
「じゃあ喜ぼう。――サンキュー、そう言ってくれて」
「いいね~、青春してるんだね~」
「あれ? 先生。貪り食ってたんじゃないんですか?」
「貪り食ってるよ? 今もその真っ最中。でも、面白そうな会話をしてるから、つい入りたくなっちゃった」
両手にはバーベキュー用の串を二本ずつ持っている。予想通りの豪快な食べっぷりを見せてるようだ。
「美味しいね~これ。お店に出してもおかしくないくらいの味だよ~」
「そりゃどうも。やっぱりみんなで協力して作ったからそれに見合った味が出るんでしょうね」
「ホント、これなら何本でも食べれちゃうよ~。……もぐもぐ……にしても、いいね、秀吾くん。最終学年にして最高の思い出を作るチャンスが訪れてるね~」
「はい。実際そうできるように、絵玖とは頻繁に会う機会を設けてますよ」
「うんうん、そうしたほうがいいよ。この学校では最後の夏休みだからね。思う存分思い出を作ったほうがいいよ。……懐かしいな、私にもそんな日が会ったんだよな~昔」
「あったんですか? 先生にも」
「どういう意味だよ~亮くん」
「いや、何となく先生は最初からそんな感じだった印象が強いので」
「失敬だな~、私だってみんなと同じくらいの時期はありました~。最初からこんなに大人っぽくはなかったんだよ~」
誰も言っていない……言いたかったけれど、ここは寛容な心でスルーしてあげるとしよう。多分二人もそう思っているから何も言わないんだ。
「こう見えて、私はその頃は結構人気高かったんだよ~? それこそ、校内で1,2を争うくらいの人気でね~」
「あれ? 先生ってこの学校の卒業生でしたよね」
「うん、そうだよ~」
「その頃の全校生徒って結構多かったんですか?」
「ううん、全員合わせて40人くらい。女子はそのうち半分くらいかな~」
「……何だろう、あっという間にすごいって気持ちが薄れていってしまった……」
「え~? 何でだよ~、1、2位なんだからすごいことに変わりはないでしょう?」
「だって、人数が少ないじゃないですか。2、300人いるんならすごいなって思えますけど、20人程じゃあ正直それ程驚きは覚えないっすよ」
「そうやって、先生の人気を頑なに認めようとしない……良くない傾向だよ、亮くん。評価下げちゃうぞ~? そんなこと言うと」
「何でっすか? そんなことで評価下げるとか横暴もいいところですよ!」
「私の得意技は横暴だから」
「サラっととんでもないことを……悪魔がいるぞ……」
「それが嫌なら認めなさいよ~」
「分かりましたよ、認めますよ、認めればいいんでしょう」
「そうそう。それでね、下の学年とか上の学年から結構アプローチを受けたりね――」
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