クラスメイトたちとの戯れ(9)
「――お一人ですか? 秀吾さん」
「お一人ですけど、何かしましたか? 佑香さん」
「おお、普通に返してきたわね。……いいの? せっかく絵玖ちゃんとしゃべれるっぽかったのに」
「いいんだ。あいつにはクラスメイトと仲良くなってほしいからよ。俺とはいつだってしゃべれるわけだし」
「なるほど、秀吾なりに気を利かせたわけね」
「俺はいつだってあいつのためを思って行動してるぞ」
「あはは、心配しなくてもそれは分かってるわよ。絵玖ちゃんの秀吾への懐きっぷりを見てればね」
「そんなに懐いてるように見えるか?」
「見える、見える。そりゃあもう半端じゃなくね」
「ふむ、そうか?」
「何て言うか、絶対的信頼を置いてるように見えるわね。秀吾の言うことならきっと正し
いんだ、みたいな」
「……行き過ぎてるように聞こえるのは気のせいか?」
「そう思えるくらい好きなんだろうって話よ。だって、端から見てても、秀吾と話してる時が一番幸せそうだもの、絵玖ちゃんは」
「それは、彼氏としては嬉しい限りだな」
「秀吾だってそうでしょ? 絵玖ちゃんとしゃべってる時が一番楽しいでしょう?」
「……お前らには悪いが、今はそうだな」
「別に悪くないわよ、当然のことだと思うわよ。私に彼氏ができたら、多分そうなるでしょうし」
「作る気はないのか?」
「今のところはね~。前にも言ったけど、まず相手がいないでしょ、この村には」
「まあそうだな。できるとしたら、都会に移った時か」
「可能性があるとしたらね。まあ、私みたいな堅物を好きになる物好きがいるか分からないけど」
「多分できるんじゃないか? 俺でもできたんだから」
「うーん、そういうものかしらね。正直に言えば、そういう気持ちになったこともほとんどないからさ」
「俺だってそうだったさ。これって、そうなのかな? みたいなボンヤリした感じだったんだ。それが徐々に鮮明になっていって……好きなんだって気付いていくんだ」
「なるほどね。やっぱり誰しも最初はそうなのね」
「当たり前だ。それが分かっちゃってたら恋愛の楽しさなんて皆無だろうよ」
「――おお、まさか秀吾からその言葉を聞けるとは、人はやっぱり成長するもんだな」
「確かに、お前が一番知ってそうな言葉だからな。悪い、出番を奪い取ってしまって」
「別に謝ることはねぇだろ。俺は結構嬉しいけどな、これからはお前とそういう話をできるって考えたら」
「何それ? 男同士の話?」
「お前らで言うところの女子トークみたいなもんだよ。まあ、女子トークよりドロドロしたものではないけどな」
「ドロドロって……失礼ね。いつもそんな話をしてるわけじゃないわよ」
「でも、そういうイメージを持たれてしまうってことは、そういう話をしてるってことじゃないのか?」
「……少なくとも、私たちはそんな話をあまりしないわ。人を批判したりするのは、神社の娘としてタブーだからね」
「そりゃそうだ。……まあ今後もそれを貫いてくれや。そうすれば、俺たち男がビクビクしてることも減るからよ」
「女子にどんなイメージを持ってるのよ、あんたは……」
「おっかないイメージさ、決まってるだろ?」
「決めつけるのはよくないと思いますけどね~」
「――そういえば、せっかくだし秀吾に聞いておきたいことがあるんだが、いいか?」
「何だ? できれば人がいる中でもまともに答えられるような質問が望ましいが」
「心配ない、ちゃんと答えられる質問だから」
「ならいいぞ。答えてやる」