クラスメイトたちとの戯れ(7)
「一先ずは、おめでとう。せっかく付き合うことになったんだから、ずーっと仲良くしていくんだよ?」
「はい、そのつもりです」
「んで、聞きたいのはここからなんだ。……あんまり大きい声じゃ言えないから少し声のボリュームを落とすね」
「あ、分かりました」
「……絵玖ちゃんと付き合ってるってことは、秀吾くんは絵玖ちゃんの体のことは知っているんだよね」
「もちろん、知ってますよ。本人と、絵玖のお母さんから聞かせてもらいました」
「え? お母さんと?」
「はい。偶然か分からないですけど、帰り道の途中で出会って、事情を教えてもらいまして」
「そうなんだ。じゃあ……転校してきた理由も知ってるんだね?」
「はい。……やっぱり、先生は知ってて伏せていたんですね」
「それはそうだよ~。担任だよ? クラスで一番偉い人だよ? そういうパーソナルな情報だって持ち合わせてるよ」
「それはそうだ」
「うん、それを聞いて少し安心した。……もしそれを知らないで付き合ってるのだとしたら、辛いかもだけど教えなくちゃいけないって思ってたから」
「……先生にしては先生らしい考え方ですね」
「どういう意味だよ~、それは」
「言葉通りの意味ですよ。ありがとうございます、気を遣ってくれて」
「……まあ、いいけどさ。何か絵玖ちゃんのことであれば、言っていいからね? 教えられることは教えてあげるよ、秀吾くん限定でね」
「やっぱり他のクラスメイトには伏せたままにしておくんですか?」
「そうだね、というかそうしないといけないよ~。本人も知られたくないことだろうし……言い方が悪いけど、後少ししたらみんな卒業して違う道に進むわけだしね」
「確かに、秘密のままにしておいても、罰は当たらないですね」
「そういうわけで、無理に教えることはしないから。秀吾くんも心の中に止めておいてね」
「分かりました」
「現時点で、何か聞きたいことはあったりする?」
「あ、じゃあ一つだけいいですか?」
「うん、何かな?」
「絵玖のお母さんと先生は、何日置きくらいで会っているんですか? 先生伝に絵玖の情報を得ているとお母さんから聞いたんですけど」
「うーんとね……学校が会った時は、二週間に一回くらいのペースで会ってたかな。今は夏休みで学校もないから、しばらくは会ってないよ。多分、お母さんも忙しいんじゃないかな~」
「そうですか。……先生って、絵玖のお母さんの連絡先を知ってたりしますか?」
「え? まあ、一応大事なお子さんを預かってるわけだからね。知ってるよ」
「……もしよかったらなんですけど、その番号を教えてもらったりってできないでしょうか?」
「え? どうして? お母さんに連絡でもかけるの?」
「まあ、そんなところです。大事なお子さんと付き合うことになったって報告ができたらなって前々から思ってたんです。絵玖のことを詳しく教えてもらったわけですし。ただ、絵玖本人にお母さんの番号を聞くのは酷だと思うわけですよ。あまりお母さんのことを良く思ってないようですしね……」
「その辺のことも知ってるんだね」
「はい、現状況に関しても詳しく教えてもらえたので」
「……秀吾くんだったら、番号を教えても悪用はしないよね。いいよ、教えてあげる。夜にでも秀吾くんの携帯かお家に電話かけるから」
「ありがとうございます、助かります」
「いいえ~……絵玖ちゃんのこと、よろしく頼んだよ?」
「俺にやれることは全てやりますよ」
「お、頼もしい。それでこそ――」
「そこから先の呼び名はNGです。言ったら……釣竿の先端の針がそのまま先生の口辺りに……」
「痛い痛い、想像するだけで痛いよ~」
「さっき言わないでって言ったこと、忘れたわけじゃないですよね?」
「忘れてないけど……言いたいんだもん」
「だもんって、大人だったら抑えてくださいよ」
「私は自分の気持ちに正直なんだよ~」
「正直すぎるのもいけないんですよ、この世の中は……」
「随分深い言葉だね。まさかそれを生徒から聞くとは」
「そこはしみじみするところじゃないと思うんだけどね」
「あはは、人それぞれってことだよ」
「際ですか」
――結局その後も少し粘ったが、釣果は一匹だけで釣りは終わることとなった。ちなみに亮は二匹、他の二人は三匹釣り上げたから合計で六匹の収穫。
短時間であればまずまずの結果と言っていいだろう。人数分は釣れなかったが、それでも彩り的には十分な数のはず。
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