クラスメイトたちとの戯れ(5)
「お魚を釣ってるの?」
「ええ、バーベキューの具材にできると思って」
「して、成果は?」
「今始めたばっかりなので、まだゼロです」
「え~? そうなの? もっと頑張らないと~」
「そうは言っても、気の持ち様で魚は釣れるわけじゃないんで……」
「うおーって叫びながら釣竿引き上げたら釣れたりしないの?」
「……やってみたらいいんじゃないですか? 絶望しか見えないと思いますけど」
「あ、やっぱりダメ?」
「単純に考えれば簡単に分かるでしょう?」
「そうだよね、釣りは我慢のスポーツだもんね~」
「そういうことです。しばらくはじっと待機ですね」
「そっか。……暇だから話し相手なってもらってもいい?」
「あれ? 先生にも仕事の分担があったんじゃないんですか?」
「私料理も苦手だから生徒の無事を見守る係なの。だからやることなくて手持ちブタさんなんだ~」
「手持ちブタさん……随分可愛らしそうですね」
「きっと可愛いと思うよ」
「そうですか、確かにそれは暇ですね」
「そんな時、目線に秀吾くんの姿を見つけた。これは話しかけない手はないと思って」
「向こうにもいましたよね? 釣りをしてる連中が」
「いたけど、今は秀吾くんと話したい気分だったから。いいでしょう? 別に」
「まあ、構いませんよ」
一人でじっと待機していなければ釣れないわけでもないしな。
「よかったら、これ使ってください」
亮に貸してもらった簡易椅子を横に出してやる。
「お、ありがと~」
先生はそれにチョコンと腰を下ろした。
「先生は、今までずっと学校で仕事してたんですか?」
「うーん、まあそんな感じかな~? 出勤する日もあれば休みの日もあるし~」
「やっぱり、俺たちみたいに夏休みではないんですね」
「そうなんだよね~、そうもいかない事情が教育委員会にはあるんだよ~。私も一か月くらいの夏休みが欲しいよ」
「悪いですね、思いっきりその夏休みを満喫させてもらっちゃって」
「ホントに、秀吾くんたちを見てると、学生に戻りたいって想いが出てきちゃうね」
「先生は制服着ればそれ相応に……」
「ぶー、秀吾くん。それは失礼だよ~? 私はこれでもレッキとしたオトナなんだからね? 頑張れば子供だって産めちゃうんだから~。それにお酒だって普通に買えるんだよ」
「でも飲めないんですよね~?」
「何であんなものが美味しいのか理解できないよ~。コーラとかオレンジジュースのほうがよっぽど美味しいよ」
「……子供だな~」
「子供言わないでよ~? 留年させちゃうぞ?」
「それはさすがに体罰が重すぎるでしょう? 職権乱用もいいところです」
「冗談だよ、秀吾くんは成績優秀だから留年させるための材料がないから~」
「……材料があれば留年させることできるんですか?」
「まあ、亮くんとかは頑張ればできなくはないかもね」
「サラっととんでもないことを……それをさせないように頑張るのが先生の役目じゃないんですか?」
「もちろん、卒業させるよ~。ただ、やろうと思えばできなくはないってだけ」
見た目に似合わず、相変わらずブラックな発言が多い先生だ。腹黒さは年相応なのかもしれないな。