クラスメイトたちとの戯れ(3)
「――ただいま」
「おう。……残念ながらまだ一匹だ」
「そうか。……よし、俺もやろう。釣竿はあるか?」
「ああ。予備の持ってきてるから、それ使え。エサもあるから」
「おう、サンキュー」
釣竿を借りて、エサをセットし、亮から少し離れたところで釣り糸を垂らす。別段川は氾濫していることもなく、いつもと同じ穏やかな流れだ。多分魚がいないってことはないだろう、偶々ヒットしていないだけで。
「俺が救世主になれるだろうか」
「どうだろうな。今日はこのポイントにいないのかもしれないし……」
「残りの二人はどうなんだ?」
「少し離れたポイントで狙ってるから、コンタクトとってないんだ。帰ってきたらその結果も分かるだろう」
「そうか。……過度な期待はしないほうがいいか」
「だな」
…………。
「……ああ、しまった。エサだけ持っていかれた」
「はっは、秀吾にしては珍しいな。普段なら食いついたらそのまま釣り上げるのによ」
「そういう日もあるってことさ、人間だもの」
「……お前の好きな詩人家の台詞か?」
「よく分かったな」
「そりゃ何十回と聞いてれば嫌でも覚えるって。10年以上の付き合いだぜ? 俺たち」
「まあな、家族みたいなもんだよな、もう」
「感覚的にはな。……これも、もう少ししたら別れることになるんだなって考えると、少し切なくなるな」
「亮にしては随分しんみりした話題を出してきたな」
「俺だってたまにはそういうこと考えることもあるさ。でも、実際そうだろう? 俺たちの狙ってる道は、それぞれ違うんだからさ」
「まあ、そうだな」
進学という選択肢は同じだが、狙っている学校はそれぞれバラバラ。それはつまり、同じ道ではない道に向かうということだ。